税金の計算をする場合に、「損金経理」と「損金の額に算入する(損金算入)」という言葉の解釈に悩んだことはないでしょうか?両方とも同様の経理処理を指すような言葉ですが、この二つは明確に違います。また損金経理を行わないと損金計上できない費用もあるため、この違いを理解しておくことはとても大切です。今回は損金経理の概要と、その重要性について解説していきます。
損金とは?
そもそも損金とは、何を意味する言葉なのでしょうか?損金とは一般用語ではなく、「原価」、「費用」、「損失」を表す税務用語です。原価とは利益を乗せる前の商品の値段、費用とは企業活動において発生した費用を示し、損失とは固定資産価値の減少分や不良債権のように、会社の資産価値を減少させる費用を表します。これらを会社の経理に組み込んで計上することを、損金の額に算入する(損金算入)といいます。
「損金経理」と「損金の額に算入する」との違い
それでは「損金経理」と「損金の額に算入する」とは、どのように違うのでしょうか?まず損金経理とは、法人税法第2条第25号に「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう」と明確に定義されています。つまり、損金経理が計上の要件となっている費用等(後述)については、確定した決算書上で、費用又は損失として計上されていることが必要になります。会計上、費用や損金にしていないものを法人税の申告書上で勝手に損金に計上することはできないということです。
これに対して、「損金の額に算入する」には明確な定義がありません。損金経理をしていなくても、申告調整によって損金に算入できる方法がある費用を計上することを「損金の額に算入する」というのです。会計上の「費用」と法人税法上の「損金(費用)」は必ずしも一致しないため、申告調整が必要となります。
損金経理を正しく理解する重要性
損金経理が要件となっている費用に関しては、確定した決算において計上した金額が損金として認められます。損金経理をしておかないと、損金算入限度額に余裕があっても、申告調整により損金として計上することは認められません。費用又は損失の算入/不算入は、法人税に大きく影響することもあるので損金経理の要件を理解しておくことはとても重要です。
損金経理が必要な5つの費用
損金経理を行わないと損金計上が認めらない項目は、主に以下の5項目です。
・減価償却費
減価償却費とは、固定資産を耐用年数に応じて費用配分し計上していく経費です。あらかじめ損金経理を行っておかないと、損失としての損金計上は認められません。
・繰延資産の償却費
たとえば会社創立前に発生した創立費、権利金などの繰越欠損金も損金経理を行っておかなければ、損金計上することができません。
・未払い使用人賞与
従業員(使用人)の賞与未払い額を費用として損金計上するには、損金経理をすることが要件の一つとなっています。
・30万円未満の消耗品
30万円未満の消耗品は、青色申告でかつ支払い年度に一括で損金経理を行わなければ全額損金計上することは認められません。
・10万円未満の消耗品または使用可能期間が1年未満の消耗品
10万円未満の消耗品または使用可能期間が1年未満(その法人の平均的な使用状況、補充状況などからみて、その使用可能期間が1年未満であるもの)の消耗品についても、支払い年度に一括で損金経理を行わなければ全額損金計上することは認められません。
言葉のニュアンスだけで判断するのは危険
似たような言葉だからといって、同じ意味・内容だと早合点してしまうことはとても危険です。特に税務用語は、一般の言葉と同じ読みながら内容の異なる場合が往々にしてあります。経理や税務の用語を勘違いすることは、会社の損益を左右することにもつながりかねません。税務用語の解釈に迷ったら、面倒でも会社が契約する税理士さんなどにすぐ確認するようにしましょう。(提供:企業オーナーonline)
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