前回のコラム『トップ・プライベートバンカーが「投信は富裕層に勧められない」という訳』で、筆者はあえて辛辣な意見を述べさせて頂いた。詳細は前回のコラムを読んで欲しい。今回は心機一転、いや念のため、自己発言の正しさを確認する意味も含めて「再確認の作業」をしてみた。定性的なイメージ論では無いことを追認する為である。

まず、筆者のキャリアから、最も土地勘が正しく働くのは株式関連でもあることから投資対象は日本株投信とした。それも日本人の誰もが知っている企業が多い大型株が投資対象の投資信託である。果たして、責任をもってプライベート・バンカー達に「安心して富裕層にセールスしてください」と言える投資信託は見つかるのだろうか? 実際にインターネットで検索したところ、結果はミステリーさながらの驚愕すべきものとなった。

まずは現状の分析対象ファンドの絞り込み

投資信託,選び方
(画像=metamorworks / pixta, ZUU online)

いまやインターネットを活用すれば個人投資家だって、最低限のデータ収集や分析は可能な時代である。今回はそれも意識してモーニングスター社のWebページを使った。利用したのは「投資信託」⇒「ファンドを探す」⇒「詳細条件からファンドを選ぶ」で辿り着くページだ。これはあくまでも一例なので、好みやニーズに合わせて試行錯誤してみるのが良いと思う。

スクリーニングとしてはまず日本の大型株を投資対象とした「3年以内に設定された投資信託」とした。「トラックレコードを見るために3年以上の運用期間があることが重要」などともっともらしい説が一般的なことは重々承知の上で敢えて3年以内という設定条件を入れた。なぜなら、金融庁が『顧客本位の業務運営に関する原則』を定めたのが丁度いまから3年前となる2017年3月30日だからだ。これを受けて、すべからく殆どの金融機関が「フィデューシャリー・デューティー宣言(以下:FD宣言)」を行い「顧客本位の業務運営を行います!」と高らかに宣言していることをご存知だろうか。ネットで検索すれば、各金融機関のそれが1頁には収まりきらない量でズラッと並ぶので、是非、取引金融機関のそれを探してみて頂きたい。

つまり、それ以降ならば(実際には金融庁の最終決定までに多くの専門家を含めたワーキンググループやパブコメの募集などがあり、それより随分前からこの話は進んでいたのは金融機関の関係者には周知の事実)、きっと運用会社も販売会社も襟を正して「投資を信じて託してください」と言える商品を世に出しているだろうと期待したからだ。

だが、残念なことに、最初のスクリーニング結果から、筆者は椅子から転がり落ちそうになった。

ちょっと想像して見て頂きたいが、下記の検索条件で調べた場合、何本ぐらいの投資信託が検索されると思われるだろうか? 検索条件は「この3年以内に設定された普通の全公募投信」であることを意味している。

検索条件:([DC(確定拠出年金)区分][SMA(ラップ口座)区分][ETF区分]除く[運用年数]3年以下)

その数は何と「887本」にもなった。FD宣言を行った後、僅か3年の間で運用会社はETFやSMA専用など特殊な形態を除いて、887本もの投資信託を新規開発し、設定し、運用を始めていた。1年365日、土日や祝日を含めて3年間で1095日の間、約1.2日に1本の割合で新しい「投資を信じて託してください」という新商品が世に送り出されたことになる。勿論カウントの中には「為替ヘッジ有り・無し」「年1回決算・年2回決算」「ターゲットイヤー20年・30年」「奇数月定率分配・予想分配金提示」など、運用の中身は一緒で投資信託の「箱組み」が違うだけのものも含まれているのは承知している。だがそれでも投資家側から見ればすべて「選択判断」を迫られる違いであることは確かなので1本は1本だ。

「え? これしかないの?」という驚愕の事実

だがもっと驚いたのは、この検索条件に追加して

[カテゴリー]国内大型バリュー 国内大型ブレンド 国内大型グロース [インデックスファンド区分]除外

という検索条件を加えてからだ。追加した検索条件の意味は、投資対象が日本の大型株、運用スタイルはグロース株狙いでも、バリュー株狙いでも、そのミックスでもどれでも良いが、株価指数と連動することだけを目的としたパッシブ運用は除き、運用会社の投資ポリシーや哲学、当然在籍するファンドマネージャーやリサーチ・アナリストのスキルやレベルがはっきりと表れるアクティブ運用を抽出するというものだ。

前回お伝えした通り「商品ラインナップにこそ運用会社の経営哲学が見える」と考えているので、内心ではかなり期待すること大だったが、なんと「20本」しか無かった。「887-20=867」とか「20÷887=2.25%」などと計算するまでもなく、これしかない。しかもまだ「投信残高」は条件に入れていない。