Manegy
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2020年6月30日配信記事より

「訪問看護」「訪問マッサージ」の2つの事業を展開している、Recovery International 株式会社。

病気や障害を持った方が住み慣れた地域やご家庭で療養生活を送れるよう、臨床経験豊富な訪問看護師、理学療法士、作業療法士などが訪問し、適切な看護ケアを提供されています。今回は同社の取締役CFO柴田旬也氏にお話を伺いました。

学生時代に起業を経験。それから会計士を目指すまで。

― 会計士を目指したのは学生時代からですよね?どのタイミングで会計士になろうと思ったのですか?

実は学生時代、友達と一緒に起業していたんですよ。事業は観光ビジネスで、卒業と同時に閉じてしまったのですけど黒字経営でしたし、それなりに楽しかったです。

― 黒字経営だったのですね。すごいですね。でもどうして卒業時に辞めてしまったのですか?そのまま続けて行く選択肢も十分あったと思いますが。

友達と始めた会社だったので、変な話、僕らだけだったら給料0円とかでも取引先の役に立って、自分達も楽しかったらそれで良かったんですよね。でも、この先大きくしていくとなったら関わる人も増えますしそれだけではやっていけないなと。

そこまでの覚悟みたいなものが、当時の僕たちにはまだなかったんですよね。それで、卒業と同時に閉じることを決めて、取引先の迷惑にならない形で終わろうということになりました。

― そうだったのですね。では、その決断をしてから会計士を目指されたのですか?

そうですね。自分達の会社をやっていくなかで経営についての知識も経験も全然足りないなと感じましたし、経営学科だったので周りの友達も経営者を目指す人が多かったけれど数字の理解とか、経営者になるために何をしなければならないかとかのHOWを考えて実行しようとする人があまりいなかったんです。
それなら、そういう人のサポートをする人になれたらいいかなと思ったのが、会計士を志したきっかけですね。

有限責任あずさ監査法人へ入所。約10年の在籍期間で得たもの

― そこから猛勉強して、無事公認会計士試験に合格されたのですね。

1日10時間くらい勉強していましたね。今思えばどうして出来たんだろうと思うんですけど。多分、僕は元々お金やお金の動きに興味があるので勉強すること自体は楽しかったんだと思うんです。

― 会計士試験に合格したら、監査法人に入所するというのは柴田さんの中で自然な流れだったのですか?ご自分で起業されてたら、なんとなくその限りではなさそうな気もするのですが。

僕のときはかなり売り手市場だったのもあって、周りもみんな監査法人に進路を決めていたので僕もその流れに乗った感じでしたね。 もちろん何も考えずというわけではないんですけど、やっぱり会計士のキャリアをスタートするのなら、法定監査業務の経験が一番積めるのは監査法人なのではないかなと思っていました。

― 在籍期間は約10年とのことですが、実際入所してみていかがでしたか?

社会人としても、会計士としても、基礎をしっかり学ばせていただいたなと思っています。所内もすごくアットホームな雰囲気で、上司や同僚、お客様にも恵まれていたなと。10年いると部署も異動して色々な経験をすることも出来ました。

例えば、僕が辞める前の3年ぐらいはIPOを目指す企業を専門に支援する部署に異動したんです。元々はIPO業務をやりたかったわけではなくて、営業をやりたかったから異動したんですけども。

IPOをやりたかったわけではなかったですけど、その部署は通常の、企業が作り上げたものをチェックする監査業務だけではなくて、今からIPOを目指しますっていう成長企業と一緒に会社を創っていくみたいな部分が大きくて。監査法人にいながら事業会社に入ってるみたいな感覚がありましたね。これはとても貴重な経験でした。

― 確かに、監査法人にいながら事業会社に入る感覚を得られるというのはその後の転職や、もしかしたらご自身での起業に繋がる経験になりそうですね。学生時代のように、ご自分でまた起業しようというお気持ちはなかったのですか?

それは実は迷っていましたね。監査法人を10年で退所しようと思ったときに、自分で起業しようか転職しようかで悩みました。 監査法人にいてたくさんの経営者の方とお話していると経営者目線も身に付きますし、IPO専門の部署にいて支援したりコンサルみたいなことをしていると自分でもやってみたいという感覚も育っていきやすいと思うんですよね。

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悩んだ末、ご縁のあったリカバリーインターナショナル株式会社へ転職

― 悩まれた結果、あずさ監査法人退所後は現在のリカバリーインターナショナルさんに入社されていますね。転職を選ばれたんですね。

そうですね。ご縁があって今ここにいるという感じなんですが。元々監査法人時代にIPO支援の新規クライアントを獲得する営業活動みたいなことを少しやっていて、その中で営業仲間がいたんですけど、その営業仲間とは一緒にご飯を食べたりする時に、いずれは自分も監査法人を出たいんだって話をしたりしていたんですよね。

それで、私の妻が医師だったり義理の姉が看護師だったりという自分の家族の話もしたりしていたら、その仲間が「医療業界でIPOを目指す珍しい会社があってCFOを探しているから会ってみないか?」と話を持ってきてくれたんです。それが、リカバリーインターナショナルとの出会いでした。

― 元々医療関係のバックグラウンドが柴田さんにもあったんですね。

そうなんですよ。リカバリーは社長が看護師なんですけど初めて会ったときに、僕は何気ない話をしているつもりでも社長からすると医療業界のことがよく分かってるという印象を持ったみたいで。

妻が医師なので毎日医療業界の話を自然と聞いて話しているので何かこう、考え方とかがしみついていたんですかね。会計士でこんな人がいるんだみたいに思ったそうなんですね。それもあって、強めに誘っていただいたんです。

監査法人を退所するタイミングは決めてなかったのですが、こういうご縁があったのなら、ここがタイミングかなと思いまして。独立するか転職かで悩んでいたけど、独立はいつでもできるから、今必要とされるところで頑張りたいなと思ったんですよね。

― なるほど。確かに独立はいつでも出来ますよね。じゃあ例えば、この先御社で目指しているIPOを実現したあと等の区切りのタイミングがあったときには、ご自分でやる選択肢が復活することもなくはないんですかね?

そうですね、ありますね。

― どんなことをやりたいとかイメージありますか?

今は正直、具体的にはないんです。でも思っていることはあって。これは事業会社に来てすごく考え方が変わったなと思うところなんですが。

例えば、財務諸表の読み方とかって会計士だけの世界だと当たり前に分かることじゃないですか?でも、事業会社に来てみると、それが当たり前に分かる世界ではないんだなと思って。逆に僕が知らないこともたくさんあって。

そういう時に、もしかして自分の持っているものや知っていることで自分に関わった人の人生を明るくするようなことが出来るのなら、そういうことやっていきたいなという風に最近は思ってます。

その形が独立起業なのかもしれないし、他の何かかもしれないのですけど、そのイメージが根幹にある上で選択肢として起業というものに行きつけばしたいなという感じですね。

― 起業だけにこだわっているわけではないのですね。

そうですね。人が知らないことを自分が届けて良い影響を与えることが出来るなら、SNS上のインフルエンサーみたいなのを目指してもいいなとか思ったりしますよ。Twitter勉強したりとかもしています。

ただ、何が一番いいのかなっていうのはそんなに正直焦ってもいないです。頭のどこかに常にありますけど、なんとか早く具体化しなきゃっていうほどではないですね。

まだ今の会社で成し遂げたいこともたくさんあって、まずは今一緒に働いている社内のメンバー1人1人に対して、何か人生を変えるきっかけを自分が与えられるのではないかと考えています。

転職を決める際のポイントは3つあった。

― 訪問看護とか訪問医療の業界にはそこまで沢山の競合がいない分野かと思うのですが、柴田さんが入社を決めたきっかけってご縁を感じた他にも何かあるのですか?

そうですね。元々ベンチャー企業に転職するならこれかなっていう判断基準が3つぐらいあったんです。

1つは、経営者の誠実性。もう1つはストック性ですね。ストック性っていうのは、たとえば月額課金とか保守契約とか、1つの取引で断続的に売上が上がる収入形態のことですね。あと3つめはマーケットの大きさ。この3つを軸にしようと思っていました。

それで、今の訪問看護って、1回介入開始になったら平均して大体400日ぐらい続くんですよ。ストック性の長さはここで分かりましたし、これから超高齢化社会になっていくと考えたときに、マーケットが大きくなってくることもイメージ出来ました。

あとは、経営者の誠実性のところでは、入社前から社長とは意気投合して飲みに行って色々お話したりしていましたし、年齢も近くて、彼の成し遂げたいことの力になりたいなと思えたのが大きいですね。

― 確かに、超高齢化社会に突入していくことは社会問題になっていますしここに良い影響、サービスを展開していくのは、先ほどおっしゃっていた柴田さんのやりたいことともマッチしますね。自分の持っているもので関わる人に良い影響を及ぼしたいという。

そうですね。訪問看護の中には終末期の対応も多くて、社会課題としては家に帰りたいけど帰れなくて病院で亡くなってしまうっていうのがあるんですよね。

そこに訪問看護というものがあれば、長年住んだ家で亡くなることも出来るのですけど、そこの認知度が今まだ少ないんです。そのためにIPOをしたいという想いもあります。もっと、なんというか自分の終わり方とか、家族側からしても望みを叶えてあげたいと思ったときに、より希望に沿える選択肢がたくさんあった方が良いなと思うんですよね。

弊社の看護師さんたちは、みんな他の現場でそれぞれ経験を積んで来たプロばかりなので、安心してお任せいただけますし、もっとこの選択肢を広めていけたら良いなと思っているんです。

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ベンチャー企業での管理部門立ち上げ。自分の考え方を変え、組織が変わる瞬間を見た。

― IPOに向けて、管理部門から始まって組織全体を創り上げていく必要があると思うのですが、最初からスムーズに進みましたか?

やっぱり最初はちょっと苦労しましたね。自分の考え方をまずは変えないといけないなと思って。なんというか、最初はドライな考え方だったというか。会社の目的のためには、多少の犠牲は出てもしょうがないよねみたいな。

動きが悪い部下がいると変えてくれって言たり。あとは自分のやり方を押し付けちゃうとか、やってしまってました。これが正解だからこうやってくれって言っちゃうということも。

― そっちの方が早いですもんね。

はい。早いという意味では自分がやっちゃうとかもありましたね。

監査法人ではそれって当たり前に通じたんです。出来ないことは、その出来ない人が悪いみたいな感じで。下の人は下の人でそう思われないために頑張るみたいな感じだったんですけど、それは事業会社では通用しないなと思いました。

今は、いかに人を育てていくか。出来れば1人も犠牲を出したくないっていう考え方にシフトして来ています。もちろん経営上、例外があるときもあるとは思いますが、基本は最後まで諦めずに育てるんだという意識に変わりました。かなり大きな転換だった気がします。

― ドライにやるのと、諦めないのと。どちらがご自分に合っていると思いますか?

どっちが合ってるかっていうのはあまり感覚的にはなくて。やっぱり関わった人の人生にどれだけ自分がプラスになれるかを大事にしてますね。

― 先ほどの信念ですね。

はい。例えば遠くの支店で問題が起こったとしたら、昔の自分だったらそれ業務部の方でなんとかしてよって言ってたんですけど、今だったら自分でメールも電話も出来るし、ビデオ通話を繋いだりも出来るので、何か自分に出来ることはないかなって考えますね。

仮にですが、いまちょっと僕、管理部抜けてその問題の起きている支店に行って話聞いて来るわって言い出したりするじゃないですか。そうなったときに僕の部下がなんて言ってくるかっていうと、じゃあ自分、管理部見ときますよとか言ってくれるんですよね。 その人は経理のことなんにも知らないのに柴田さんいないなら自分が面倒見ときますねって言ってくれるんです。

それって経営者マインドに非常に近いと思うんですよ。 自分の会社で起こっている全ての困りごとについて自分が何か出来ないか考えることってとても大切なことだし、誰でも考えられることですよね。そして、そう考えて行動していると、そのマインドが周りにも波及して助けてもらえるようになると思ってます。

そういう人が増えると、企業の成長が加速度的に速まると思うんですよね。社長も、自分が会社の仕事全部出来るわけじゃないけど会社の全体を見るじゃないですか。 自分がこの考え方にシフトしていけたことで、社長とも今まで以上に深く信頼し合って同じ目標に向けて頑張っていけている気がします。

― なんでも自分事にするとか、経営者マインドがあれば、足りないところを自分だったらこうすると即座に考えて補えるので、ほんとにいい連鎖になりますよね。

そうですね。

― それは会社以外での人間関係でもそうですよね。

そうですそうです。それがプライベートでも活きてきますよね。先ほど僕の妻が医師だと言いましたが、コロナ禍のなかでやはりとてもハードに働いていたんですよね。その分、僕は僕で家族のために出来ることをしたいなと。

今は家族みんなの朝ご飯を作ってから仕事をしたり、妻が帰って来る前に掃除洗濯を終えたり、頼まれなくても自発的にやります。家庭でも自分が出来ることは何かないかと考えることで、良い関係が築けていると思います。

CFOは、専門知識は2割でいい。あとの8割は「どれだけ、どんな経験を積んだか」が大事

― 職場でも家庭でも、ご自分の役割を果たされてそれが周囲にも伝播しているのですね。最後にCFOという職についてお伺いしたいのですが、柴田さんにとってCFOってどういう仕事だと思いますか?

すべての経験が役に立つ仕事ですね。営業経験もめちゃくちゃ活きますし。もしCFOを目指すのであれば今をとにかく大事にしてほしいです。今やっていることは、何であれ自分の経験になって、絶対に未来に繋がると思います。

特にベンチャー企業のCFOは経理面だけやっていれば良いとはなりません。1人何役もこなしていかなければならないし、それでいて時間の制約もあるので周りの助けも借りていかないといけない。そう考えて行くと、CFOになるには専門的な知識が必要なのは2割ぐらいで、残りの8割はそれまでにどれだけ経験して来たかとか、CFOになってからも、どれだけ成長を続けることが出来るかだと思います。つまり、CFOになることがゴールではないと思いますね。

― 専門知識が2割でいいって勇気になりますね。会計士資格を持っていないといけないんじゃないかとか思いますし。

実際僕がCFOやってて会計士の資格が活きることってほとんどないですよ。普通の一般人ですもはや。ほんとに年度決算の2週間ぐらいしか会計士の知識使ってないんじゃないですかね・・(笑)

― 確かに、いまオウンドメディア立ち上げられて記事書かれたりもしていますもんね。

そうですね。大事なのは考え方のベースを常に数字に置くことですね。それがCFOだと思います。

オウンドメディアをやっていても、記事のPVがいくらで、これだけ見られると市場にどういう影響を定量的に及ぼすのかなとか、何をやってもいいけど、それをすることで売上いくらになってコストはいくらかかるのか、どんなメリット、どんなデメリットがあるのかというのをなるべく定量的に測るのがCFOとして必要なことなのかなと思うんです。

それが出来ていれば、会計や経理の知識はもちろんベースとして大事ですけど何より色んな経験をしていければ良いと思います。最初は家計簿を付けるくらいの気持ちで良いと思いますよ。そこから数字ベースで思考する癖をつけていったら良いと思います。

繰り返しになりますが、今やっていることは必ず何かしらで活きて来るし、それを活かせるようにするのも自分次第ですから、今を一生懸命取り組んでその先にCFOがあるのだとしたら、きっと経験の数だけ強いCFOになれると思います。

僕も会社としても個人としても目指しているところがたくさんあるので、引き続き成長していきたいですね。


監査法人から転職して2か所目のキャリアにして、濃い経験を積まれている柴田さん。社会問題の解決に取り組むリカバリーインターナショナル株式会社で柴田さんが影響を与えること、また柴田さん個人としての今後のキャリアもとても気になるインタビューとなりました。柴田さん、ありがとうございました。

柴田さんが立ち上げたオウンドメディア「ナーステート」。そして【訪問看護】に取り組む同社のホームページも是非ご覧ください。

ナーステート

Recovery International 株式会社

柴田旬也氏
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【プロフィール】
柴田 旬也
Recovery International 株式会社 取締役 公認会計士

2007年12月 あずさ監査法人(現有限責任あずさ監査法人)入所
2016年9月 Recovery International 株式会社 入社
2018年3月 Recovery International 株式会社 取締役就任(現任)