セルフメディケーション税制
(画像=Manegy)

2020年7月24日配信記事より

何かにつけ忙しいのがビジネスパーソン。そんなビジネスパーソンの大敵が体調不良。

しかし少々の体調不良なら時間がかかる医療機関の診察を避け、薬局やドラッグストアに飛び込んで症状を訴え、そこで勧められた市販薬で体調を整える方も多いでしょう。その場合、医師が処方した処方箋医薬品ではないので健康保険は適用されず全額自己負担となります。

そんなビジネスパーソンが知っておきたいのが「セルフメディケーション税制」。どんな税制なのでしょうか。

そもそもセルフメディケーションとは

セルフメディケーションとは、WHOにおいて「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されている保健対策のこと。

例えばくしゃみ、鼻水、鼻づまりなど風邪の初期症状が現れた時、薬局やドラッグストアでOTC医薬品(大衆医薬品)を購入して服用し、症状の悪化防止と体調管理を行い、自分の健康を保持するのがセルフメディケーションと言えます。

セルフメディケーションの目的は「自分の健康は自分で守る」にあります。

このため適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠・休息を心がけるなど日頃の健康管理を習慣化すると同時に、風邪、腹痛など軽い病気や怪我の場合は初期段階でOTC医薬品を用いて重症化を予防する必要があります。

こうしたセルフメディケーションにより、身体が資本のビジネスパーソンは健康を維持しつつ日々の業務に全力投球することが可能になるでしょう。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)とは、セルフメディケーションに努めているビジネスパーソンを税制面から支援する制度と言えます。

同税制は医療費控除の特例として創設されました。セルフメディケーションに努めているビジネスパーソンやその家族が2017年1月1日以降、「スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)」を購入した際、その購入費用について所得控除を受けられる制度です。

毎年の確定申告で、従来の医療費控除は年間10万円以上の支払いがなければ所得控除を申告できませんでした。しかし同税制ではスイッチOTC医薬品の購入額が年間1万2000円以上あれば、所得控除を申告ができるのが特徴です。

セルフメディケーション税制の対象者

同税制対象者は、「所得税・住民税を納税」していて、次のいずれかの定期健康診査を受けている人です。

  • 特定健康診査(メタボ健診)または特定保健指導を受けている人
  • 予防接種(定期接種、インフルエンザの予防接種)を受けている人
  • 勤務先で実施する定期健康診断(事業主検診)を受けている人
  • 保険者(健康保険組合や市区町村国民健康保険管掌部署)が実施する定期健康診査(人間ドック含む)を受けている人
  • 市区町村が実施するがん検診を受けている人

同税制対象者は上記要件を満たしたビジネスパーソンとその家族になります。したがって、同税制所得控除額はビジネスパーソンとその家族のスイッチOCT医薬品購入合計額になります。

ただし、同税制による所得控除と従来の医療費控除の併用はできません。確定申告でどちらの控除を申告するかは申告者が選択することになります。

セルフメディケーション税制の適用医薬品

どんなOTC医薬品でもよいわけではありません。薬局やドラッグストアで販売されているスイッチOTC医薬品のみがセルフメディケーション税制の適用医薬品です。

スイッチOTC医薬品は、医薬品成分が87成分(2020年5月8日現在)、医薬品が風邪薬、胃腸薬、鼻炎用内服薬、肩凝り・腰痛・関節痛の貼付薬など約1800品目(2020年3月31日現在)が厚生労働省により指定されています。

同税制適用のスイッチOTC医薬品はパッケージに「セルフメディケーション税制控除対象」のマークが印刷されているので、適用外医薬品と容易に判別できるでしょう。

また、スイッチOTC医薬品を購入したレシートにも「セルフメディケーション税制対象」のマークが印字されています。

確定申告時に必要なセルフメディケーション税制適用申告書類

同税制の所得控除を受けるためには、確定申告時にスイッチOTC医薬品購入を証明する領収書・レシートに加え、「健康の保持増進及び疾病の予防」に取り組んでいることを証明する下記の書類を提出する必要があります。

(1)特定健康診査(メタボ健診)または特定保健指導の場合

医療保険各法(健康保険法、船員保険法、国民健康保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法及び私立学校教職員共済法)や、健康増進法の規定に基づき健康の保持増進のための事業として行われる特定健康診査受けた場合は、その領収書か結果通知書を提出します。

(2)予防接種を受けた場合

予防接種法に基づくインフルエンザ等の予防接種を受けた場合は、その領収書か予防接種済証を提出します。

(3)勤務先で実施する定期健康診断を受けた場合

従業員を雇用する事業所は労働安全衛生法により、事業主の費用負担による年1回の定期健康診断が義務付けられています。この診断を受けた場合は、その結果通知表を提出します。

(4)保険者(健康保険組合や市区町村国民健康保険管掌部署)が実施する定期健康診査を受けた場合

健康保険法に基づく保険事業(健康保険組合)や健康増進法に基づく健康増進事業(市区町村)として年1回行われている健康診査を受けた場合も、その結果通知表を提出します。

(5)市区町村が実施するがん検診を受けた場合

健康増進法に基づく健康増進事業として市区町村が実施しているがん検診を受けた場合は、その領収書か結果通知表を提出します。

上記提出書類には次の記載が必要です。

  • 受診者の氏名
  • 受診日
  • 健康診断等を行った保険者・事業者・市区町村等の名称または医療機関の名称、もしくは医師の氏名

なお、提出書類が領収書の場合は原本を提出しますが、結果通知表の場合はコピーでも構いません。

まとめ

来年の確定申告に備え、自分自身と家族がスイッチOTC医薬品購入時に薬局やドラッグストアで受け取った領収書・レシート、健康診断等の結果通知表などは漏れなく保管しておきましょう。

※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁にご確認ください。