米株の上昇ピッチは「行き過ぎ」、さらに過熱なら大幅反動安も
GCIアセット・マネジメント シニアポートフォリオマネージャー / 池田 隆政
週刊金融財政事情 2020年9月28日号
今年2月から3月にかけて、世界中でコロナショックが吹き荒れ、世界の株式市場は大きく下落した。しかし、3月下旬以降は世界の中央銀行が前例のない流動性を供給したため、リバウンド基調が続き、米国の株式指数などは大きく戻した。このトレンドだけを見れば、米国の株式市場は、来年の経済回復を織り込んでいるかのようである。ファンダメンタルズの回復は道半ばであるが、問題は前例のないこの戻りのトレンドがどこまで継続するのか、という点にある。
6月1日号の本欄で、筆者は過去の急落時の事例から「最終的には、一定期間(暴落から半年以上)後に200日移動平均線を超えてくる局面では、相場は大きな転換を迎え、上昇基調になるものと思われる」と述べた。この観点からすれば、すでに、米国の株式主要指数であるS&P500指数やナスダック総合指数は、予想よりも早く200日移動平均線を大きく上回り、すでに底打ちした動きとなっている。
ただし、この上昇ピッチの速さについては、今後注意が必要だろう。図表で示すとおり、ナスダック総合指数の200日移動平均線との乖離は、8月に20%を超えている。これは過去の水準から見れば、明らかに行き過ぎている。
本来、「移動平均線乖離」とは、売られ過ぎや買われ過ぎなど過熱感を表す指標であり、短期的な価格の方向性を直接示すものではない。つまり、上方乖離の大きさだけで、即急落することを意味するものではない。ただ、潜在的なリスクは内包されており、この後も同じスピードで上昇し続ける場合には注意が必要である。
それでは、今後のシナリオをどのように考えるべきか。過去20年で見ると、上方乖離が20%を超えたピークは、ITバブルの2000年3月、ニューヨーク同時多発テロ事件後のリバウンド局面の03年9月、リーマンショック後のリバウンド局面の09年9月の3回である。
過去の例でいえば、03年と09年のケースは、それなりの調整をしたものの、ボックス相場を経て緩やかな上昇トレンドを取り戻している。一方、00年のケースでは、上方乖離はさらなる広がりを見せ、プラス50%を超え、その後、大幅な反動安となっている。
このことから、現在の上昇ピッチが年末にかけてペースダウンもしくは一服するのであれば、さほど相場が大荒れする可能性は低いかもしれない。しかし、現在の乖離水準を大きく超えてさらに上昇する場合は、大幅な反動安も視野に入れておく必要があろう。
(提供:きんざいOnlineより)