太陽光発電を設置するのに適したエリアを考えるには、その地域での日射量を比較することが重要です。なぜなら太陽光発電の発電量は、日射量によって左右されるからです。

1 kWあたりの年間予想発電量の求め方

バイオマス発電投資
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

1 kWあたりの年間予想発電量( kWh/kW/年)は以下の式から求められます。

  • 日射量(kWh/平方メートル/日)×365 日×総合設計係数(88%)÷標準日射強度(kW/平方メートル)

総合設計係数とは、温度による影響やインバータの効率、配線など機器による損失を考慮した係数です(損失係数とも呼ばれます)。日射強度は、日本産業規格(JIS)で定められている太陽から入射するエネルギーの強度を表しています。標準試験状態の標準日射強度は1.0kW/平方メートルです。

47都道府県別日射量データ

国立研究開発法人・新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)が提供する日射量データベースを用いて環境省が算出した47都道府県別の年平均日射量は以下のようになります。

地点年平均日射量
(kWh/平方メートル)
1 kWあたりの
年間予想発電量
(kWh/年/ kW)
都道府県県庁所在地
北海道札幌市3.581,150
青森県青森市3.441,105
岩手県盛岡市3.541,137
宮城県仙台市3.611,160
秋田県秋田市3.411,095
山形県山形市3.561,143
福島県福島市3.581,150
茨城県水戸市3.711,192
栃木県宇都宮市3.701,188
群馬県前橋市3.861,240
埼玉県さいたま市3.731,198
千葉県千葉市3.701,188
東京都新宿区3.531,134
神奈川県横浜市3.761,208
新潟県新潟市3.481,118
富山県富山市3.481,118
石川県金沢市3.481,118
福井県福井市3.551,140
山梨県甲府市4.171,339
長野県長野市3.801,221
岐阜県岐阜市4.001,285
静岡県静岡市4.051,301
愛知県名古屋市3.981,278
三重県津市3.961,272
滋賀県大津市3.591,153
京都府京都市3.611,160
大阪府大阪市3.761,208
兵庫県神戸市3.881,246
奈良県奈良市3.711,192
和歌山県和歌山市4.001,285
鳥取県鳥取市3.511,127
島根県松江市3.501,124
岡山県岡山市3.921,259
広島県広島市3.991,282
山口県山口市3.791,217
徳島県徳島市4.001,285
香川県高松市3.971,275
愛媛県松山市4.031,294
高知県高知市4.171,339
福岡県福岡市3.841,233
佐賀県佐賀市3.841,233
長崎県長崎市3.901,253
熊本県熊本市3.971,275
大分県大分市3.801,221
宮崎県宮崎市4.171,339
鹿児島県鹿児島市4.071,307
沖縄県那覇市4.061,304

※パネル設置条件 方角:南向き 角度:10度

この結果から見た日射量ベスト10の都道府県は、以下の通りです。これらの県は日照量から考えた場合に、太陽光発電を設置するのにより適したエリアといえるでしょう。

地点年平均日射量
(kWh/平方メートル)
1 kWあたりの
年間予想発電量
(kWh/年/ kW)
都道府県県庁所在地
山梨県甲府市4.171,339
高知県高知市4.171,339
宮崎県宮崎市4.171,339
鹿児島県鹿児島市4.071,307
沖縄県那覇市4.061,304
静岡県静岡市4.051,301
愛媛県松山市4.031,294
岐阜県岐阜市4.001,285
和歌山県和歌山市4.001,285
徳島県徳島市4.001,285

太陽光発電システム全体の年間予想発電量

このように算出した1 kWあたりの年間予想発電量に太陽光発電システム全体で使用する太陽電池容量を掛けると、全体の年間予想発電量が分かります。太陽電池容量とは、太陽電池モジュール1枚あたりの公称最大出力にシステムで使用する枚数を掛けたものです。例えば公称最大出力200Wのモジュールを20枚使うシステムであれば、200W×20枚で4.0kWとなります。

東京都の1kWあたりの年間予想発電量は1,134 kWh/年/ kWのため、以下のように算出することが可能です。

  • 4.0kW×1,134 kWh/年/ kW =4,536 kWh/年/ kW

これがシステム全体の年間予想発電量となります。

NEDOのデータベースでより詳細に確認

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が提供する日射量データベース閲覧システムでは、国内837地点において月別では過去29年分(1981~2009年)、時間別では20年分(1990~2009年)の日射量を参照することができます。各地点で月別や日別、時間別にデータを絞り込め、さらにパネルの方位や角度を指定して日射量をシミュレーションすることも可能です。

測定地点も多いため、実際の設置場所に近い日射量を割り出すことができるでしょう。より詳細な日射量を知りたい人は、ぜひ一度活用してみてください。

パネルの方位や傾斜角度も影響する

日射量だけでなく設置の条件によっても発電量は変わり、例えばパネルの方位と傾斜角度は大きな影響を与えます。太陽光発電システムを製造する京セラ株式会社の太陽光発電サポートページによると、パネルの方位では真南の発電電量を100%とした場合、真東と真西は85.3%に低下。また傾斜角度は30度前後が最も理想的としており、20度では30度と比べ約99.1%まで低下するとしています。

傾斜角度は約1%ですが方位は約15%と非常に大きな違いが現れるため、設置の際はしっかりプランを確かめる必要があるでしょう。

パネルの清掃も有効

太陽光発電システムのパネルの表面には、年月とともに汚れが付着します。落ち葉のような風や雨で自然に取れてしまうものならまだ良いのですが、チリや砂ぼこり、鳥のフンなど付着したままになりがちなものは発電効率に影響を与えかねません。ウォータージェットによる配管や建物の洗浄を請け負うフジクス株式会社の検証によると、パネルの洗浄を行ったことで最大7.59%発電効率が回復したそうです。

同社では17%回復した事例もあるとしており、程度の差はあるものの一定の回復効果は期待できるでしょう。ただし同社の検証では約半年でほぼ元の汚れに戻ってしまったとのことで、発電効率を維持するには1回限りではなく定期的に清掃をする必要があります。

経年劣化は年0.25~0.5%

太陽光発電システムは年々劣化を起こし発電量は低下していきます。劣化は使用するモジュールなどの性能や設置場所の環境によるため一括りにはできません。しかし一般的には年0.25~0.5%の劣化が多い傾向です。単純に計算をすると年0.25%なら10年で2.5%、年0.5%なら10年で5%の劣化になります。

そのため例えば東京の1kWあたりの年間予想発電量1,134 kWh/年/ kW の場合、以下のような発電量に低下する可能性があります。

  • 年0.25%:10年後に約1,106 kWh/年/ kW
  • 年0.5%:10年後に約1,077 kWh/年/ kW

日射量だけでなく他の要因も考慮

都道府県ごとの日射量の違いは太陽光発電の年間発電量に大きく影響しますが、その他のパネルの傾斜角度や向き、表面の汚れ、経年劣化も発電量に関わってきます。より確実に収益を上げるには、設置のプランニングだけでなく運用開始後も点検やメンテナンスをしっかりと行い、発電量を減らすリスクを排除していくことが大切です。

できるだけ日射量が多く太陽光発電に適したエリアを選び、システム全体をケアしながらより高い収益を得られるようにしましょう。(提供:Renergy Online