モルガンでも教育効果抜群だった「フジマキイングリッシュ」

私の英語は確かにひどいものですが、外資系企業には英語を母国語としない人もたくさん働いており、私と似たり寄ったりのひどい英語を話していたりするものです。

ただし、ここで大事なことがあります。それは「相手にとって価値のあることを、自信を持って話す」ということです。

モルガン銀行の支店長だった時の話です。部下であるチャイニーズアメリカンの総務部長とステントフォン(まわりの人にも声が聞こえる電話)で話していると、しばらくして彼女が「ボス、私の部屋に来てください」と言うのです。「ボスを呼びつけるなよ」などと思いながら行ってみると、彼女の後ろに新人がずらりと並んでいました。そして、新人に対して彼女は「ボスの英語を聞いた? あんなにへたくそな発音とあんなにひどい文法なのに、自信を持って大きい声でしゃべっている。それが重要なんです」と。要するに、私は新人教育の教材にされたわけです。

パックンのエピソードといい、私の英語には大きな教育効果があるようです(苦笑)。

また、モルガンでは、全世界を電話でつないだ電話会議を週2回行っていました。私の尊敬する元上司のマーカスが、東京の資金為替部長から本店の資金為替本部長になったことで始められた会議で、彼がニューヨークで司会を行い、私は東京から日本のマーケットの分析を話す、というものでした。

その第1回の会議の際、私が一生懸命苦手な英語をしゃべっていると、なぜか電話機の向こうから英語で何かをしゃべっている声が聞こえるのです。最初は「人が一生懸命しゃべっているのに雑談するとはなんだ。静かに聞け!」と思ったのですが、途中で「あれはマーカスの声だ」と気づきました。

実は、東京在籍中に「フジマキイングリッシュ」に慣れたマーカスが、電話の向こうでフジマキイングリッシュを「本当のイングリッシュ」に通訳してくれていたのです。

ただ、このマーカスの通訳も2週で終わりました。謙事録を見る限り、皆、私の英語を100%理解してくれているようでした。

これは何も、私の英語力が急上昇したからではありません。世界中の支店の人たちが私の言っていることを必死に聞き取ろうとしてくれたからなのです。

自慢になって恐縮ですが、私は当時、日本国内より海外の投資家の間で名前が知れていました。モルガンのセールスマンは、外国人顧客に私の意見を伝えることが営業成績向上につながったそうで、だからこそ、私の言っていることをひと言ももらさずに聞き取ろうとしてくれたのです。

つまり、「相手にとって本当に価値のあることを、自信を持って話す」ことで、下手な英語でも十分に通用するということ。逆に言えば、相手にとって価値がない話なら、いくら英語がうまくても聞いてもらえないのです。

まず鍛えるべきは「ヒアリング」

「自己流でもなんとかなる」とはいえ、もちろん、最低限の勉強は必要です。では、何をどう学べばいいかというと、私はまず「ヒアリング」を学ぶべきだと考えています。相手の話を聞き取れなければ、こちらも何も反応できないからです。

逆に言えば、聞き取ることさえできれば、下手な英語だろうが身振り手振りを交えながらだろうが、なんとか相手に伝えることはできるものです。

私は耳がよくないのか、音痴だからなのか、以前からヒアリングがからきしダメでした。そんな私がアメリカでヒアリング能力を鍛えるのに使ったのは、テレビのニュース番組です。ニュースは発音や言い回しもわかりやすく、映像を見ていればなんとなく内容もわかります。当時は、日本で英語のニュース番組など見られなかったので、食い入るように見ていました。それを繰り返すうちに、少しずつ聞き取る力が上がっていったようです。

当時と違って今では日本でもアメリカやイギリスの英語ニュースがいくらでも見られますから、トレーニングを積む機会はたくさんあるはずです。

藤巻健史(経済評論家)
(『THE21オンライン』2020年08月31日 公開)

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