再生エネルギーの中で認知度が高いのは太陽光発電です。しかし風力発電も国の買取制度があるため投資価値は十分にあるでしょう。本記事では、まだ十分に理解をされていない風力発電の基礎知識やメリット・デメリット、設置にかかる費用などを解説します。
風力発電の仕組み
風力発電は、まずブレードと呼ばれる大きな羽に風があたり回転することで中心にある軸を回転させます。軸の回転は、ナセルと呼ばれる本体の中の増速機を通ることで回転数を上げる仕組みです。その後ろにある発電機を回して電気を起こします。またその電気は風力発電機本体の下などにある変圧器を通って送電線に送られる流れです。
発電出力による分類
風力発電は、国際電気標準会議(IEC)によって出力ごとに以下のように分類されています。
出力 | 分類 |
---|---|
1 kW未満 | マイクロ |
1~50 kW未満 | 小型 |
50 kW~500 kW未満 | 中型Ⅰ |
50 kW~1,000 kW未満 | 中型Ⅱ |
1,000 kW以上 | 大型 |
ただし過去に国の電力買取価格が20 kW以上と未満で分けられていたため、20 kW未満の出力の風力発電機を小型と呼ぶ業者もあります。しかし現在は20 kWを境とした買取価格の違いはなく、2020年度はすべての規模の陸上風力発電が1 kWあたり18円+消費税の買取価格です。
風力発電に適した立地
風力発電を設置するのに適しているのは、年間を通じて風が安定して吹いている風況の良い場所です。具体的には、北海道や東北、九州に風況の良い場所は多く、中でも海岸沿いや山の上など風の通りに影響が少ない環境が適しています。また海の上は風況が非常に安定しており、しかも地上よりさらに大型の風力発電機が設置可能です。そのため最近では洋上風力発電施設も増えてきています。
風力発電のメリット
風力発電のメリットは太陽光発電と違い、夜でも発電できることです。さらに原子力や火力のように燃料が必要ないため、コストがかからず燃料価格の変動に影響を受けることもありません。また風は、太陽光と同じく半永久的に得られるエネルギー源のため、将来枯渇する可能性が低いことは大きなメリットです。
他にも発電時にCO2を排出しないことや排出物や廃棄物を出さないことも魅力の一つです。地球温暖化抑制のためにCO2を排出しない低炭素社会へ向けて、風力発電の貢献度は非常に大きいと言えます。
風力発電のデメリット
風力発電のデメリットは、風力が弱ければ発電量が落ち、さらに風が吹かなければ発電しないことです。また風が強すぎても機器に負荷がかかり危険なため、ブレードの角度を変えて風を受け流したり回転を止めたりすることもあり発電量が落ちることもあります。こうした事態を極力減らすため、年間を通じて安定した風が吹く場所に設置することが重要です。
さらにブレードの回転音や本体の機械音が発生するため、近隣住民から苦情が出る可能性があります。風力発電機は、高さが数十メートルに達し遠方からもはっきりと見えるため、特に複数台を設置した場合には周辺の景観に影響を与えかねません。そのため新規設置には、場所の選定に細心の注意を払い近隣住民などに丁寧な説明を行うことが必要です。
設置にかかる費用
風力発電機の設置費用の相場は、本体が1 kWあたり20万~30万円程度で仮に中型の500 kWであれば約1億~1億5,000万円かかります。この他にも敷地を購入するのであればその土地代や設置場所の造成も必要です。さらに人里離れた場所に設置することが多いため、搬入路の整備などにも費用がかかります。他にも資材の運搬は、大型の特殊車両で行うなど本体以外にも設置までに多額の費用がかかりがちです。
一方で既存の太陽光発電機も売買されており設置が済んだ状態のため、造成などの付帯工事費がかからず購入すればすぐに売電を始めることができます。
設置後の諸費用
風力発電機を設置し稼働してからは、主に以下の5つの諸費用がかかります。
定期点検費用
定期点検は、保安規定により義務化されており年に2回程度行うことが必要です。費用は年間で20万~30万円程度が多いのですが、依頼する管理会社によって金額や内容に違いがあります。費用に含まれるのはあくまで法定の点検のみで、修理などは別途費用が発生するところもあれば故障した際の対応費用が含まれているなどさまざまです。依頼先を決める際は年間の金額だけでなく、その内容をしっかりと確認することが大切になります。
土地管理費
敷地内の草刈りや清掃、道路整備などの土地管理費として年間約10万円程度が必要です。これも費用や内容が依頼先によって異なり近隣からの苦情対応などを含むところもあります。
遠隔監視費
風力発電施設に人は常駐しないため、遠隔で異常がないかを監視するシステムの設置が必要です。この費用は、初期費用で数十万円、毎月数千円が必要になります。
固定資産税には優遇税制がある
土地を所有すると固定資産税がかかりますが、再生可能エネルギー施設用の土地を取得した場合は「再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置」が利用可能です。これは課税対象となった年から3年間にわたって20 kW以上の風力発電の土地なら3分の2に、20 kW未満の敷地の場合は4分の3に課税標準が軽減されます。
損害保険の保険料
風力発電の設備は非常に高額なため、購入の際はあわせて損害保険会社が用意する火災保険に加入しましょう。主に火災や落雷、風災、雪災を補償するものが一般的です。また、これらの被害や機械の故障で発電が停止した際の利益損失を補償する保険もあります。他にも周囲へ与えてしまった被害を補償するものなど風力発電の広まりとともに保険商品の種類はさまざまです。
所有する際は、権利が移った日から確実に保険対象となるように必ず加入するようにしましょう。
新規設置は多くの資金が必要
投資の面で考えると中型や大型の風力発電の新規設置は、費用が非常に高額なため個人で行うことは現実的ではありません。小型の風力発電の新規設置は一見個人でも可能に思えますが、本体以外に土地代や整地、進入路整備の費用なども加わるため、投資はかなりの資金が準備できる人に限られます。
しかも現在は1 kWhあたりの買取価格が18円+消費税ということも考慮すると、買取価格が1 kWhあたり55円+消費税と高額な2017年度までの既存風力発電機の購入を検討したほうが現実的かもしれません。
既存物件なら価格も手ごろになる
1 kWhあたり55円+消費税の既存物件は、当時の買取価格の分岐点となる20 kW未満に抑えられています。そのため風力発電機の売価も低めになっており、台数によって異なりますが土地も含み約2,500万~4,000万円が相場です。これらの物件の利回りは10%を超えており、他の投資と比べても有利な条件となっています。
もちろん不動産投資など種類によってはより高い利回りを実現できる資産運用もあるでしょう。しかし風力発電が太陽光発電と並び投資面で有利なところは、20年という非常に長い期間で買取価格が国に保証されている点です。これは現在いくら高い利回りとなっていても、経済状況などで変動してしまう他の資産運用と風力発電の大きな違いと言えます。
風力発電の既存物件の人気が高い理由は、特にこの投資面のリスクの少なさにあるといって良いでしょう。(提供:Renergy Online)