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コロナ下での預金増加は一般法人と個人の要求払いが牽引

(日本銀行「預金・現金・貸出金」)

トリグラフ・リサーチ 代表 / 大久保 清和
週刊金融財政事情 2020年11月9日号

 日本銀行の「預金・現金・貸出金」統計によって、預金動向は、預入主体別と種類別という2分類で分析できる。同統計から、足元の高水準の預金増加は、要求払預金のうち「一般法人」と「個人」の両輪によって牽引されている構図が浮かび上がる。

 図表1は、2007年8月以降の国内銀行の預金合計と要求払預金(一般法人および個人)の前年同月比増減率推移を示している。最新統計である今年8月の増加率は、預金合計9.5%、要求払預金の一般法人が20.3%、個人が10.8%だ。グラフが示すように、一般法人が個人に先行するかたちで預金増加率は高まってきた。リーマンショック後にも一般法人の要求払預金は増勢に転じたが、リーマンショック後5カ月間の増加率ピークは09年2月のわずか4.4%だった。また、個人要求払預金に関しては、リーマンショック後に変化はほとんどなかった。個人預金動向の違いから、足元の預金増加はリーマンショック後とは「異質」といえる。

 図表2には、預入主体別・種類別に、今年3月末から8月末まで5カ月間の預金増減額と預金合計増加額(46.8兆円)に占める割合(貢献度)を示した。要求払預金の一般法人増加額は20.1兆円、個人は22.64兆円に達し、合計で預金増加額の約9割を占めている。リーマンショック後5カ月間(08年9月末~09年2月末)では預金全体でも10兆円の増加にとどまっており、足元の預金増加スケールがいかに大きいかが確認できる。

 一般法人については、手元流動性を厚くするための銀行借入れや各種企業金融支援策で調達した資金が、現状では預金として「両建て」で積み上がっているものと推定される。個人については、コロナ禍で消費活動にブレーキが掛かるなか、特別定額給付金等の支給が加わり、預金増加に拍車が掛かったと考えられる。

 問題は、これら要求払預金の「粘着性」がコロナ禍という予測困難な事象に依存している点にあり、主にALMの観点から銀行経営をより「視界不良」としている。

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(提供:きんざいOnlineより)