楽天FXは、ネット証券大手の楽天証券が提供するFXサービスだ。ポイントプログラムや豊富な投資情報など、楽天グループの強みを活かしたさまざまな特徴がある。ここでは、楽天FXのメリットや注意点などわかりやすく解説していこう。

1,楽天FXの特徴は?

楽天fx,メリット,デメリット,スプレッド,スワップ
(画像=楽天FX公式ホームページ)

楽天FXは、大手ネット証券会社である楽天証券が運営するFXサービスだ。まずは、主な特徴と基本情報を見てみよう。

5種類のレバレッジコースから選択可能でロスカット水準も決められる

楽天FXは、レバレッジ倍率によって以下の5種類のコースに分かれている。各コースでは、指定範囲内であれば利用者がロスカット水準を5%刻みで設定できる。

コース名 ロスカット水準 追加証拠金の有無
スタンダード25倍 50~95% あり
レバレッジ10倍 40~95% なし
レバレッジ5倍 20~95% なし
レバレッジ2倍 20~95% なし
レバレッジ1倍 20~95% なし
法人口座 50%(5%刻み設定なし) あり
※公式サイトを基に筆者作成

口座開設時は「スタンダード25倍・ロスカット水準50%」に設定されている。このコースは、選べるコースの中では最もレバレッジが高い。初心者でまだFX取引に慣れていない人は、「レバレッジ1倍」または「レバッジ2倍」のコースで試してみるとよいだろう。レバレッジ1倍であれば外貨預金と同じなので、ロスカットのリスクを最小限に抑えられる。

レバレッジコースは、取引ツールの設定画面で変更できる。ただしポジションを保有していたり、注文を入れてたりするとレバレッジ倍率を下げることができないため、すべて決済・取消をする必要がある。またレバレッジ倍率を上げる際は、強制ロスカットが発動するおそれのある変更はできないことも覚えておきたい。

楽天FXの基本情報

楽天FX(楽天証券)の会社情報とFXサービスの取引ルールは、以下のとおりである。

楽天FXのサービス基本情報一覧(2020年11月16日現在)

会社情報 会社名 楽天証券株式会社
設立 1999年3月24日
資本金 74億9,500万円
自己資本規制比率 317.0% (2020年9月末)
口座開設数(楽天証券) 376万口座(2019年12月末)
信託保全 100%信託財産保全
口座 口座開設手数料 無料
口座管理手数料 無料
入出金・振替 入金方法 日本円
リアルタイム入金手数料
(即時入金)
無料(会社負担)
出金日数 0:05~15:30は翌営業日、
15:30以降は翌々営業日以降に出金処理
出金手数料 無料
リアルタイム入金
提携金融機関数
13行の金融機関
ツール・サービス PC版取引ツール マーケットスピードFX、楽天FX-WEB
スマートフォン版
取引ツール
iSPEED FX
取引 通貨ペアの種類 26通貨ペア
最低取引単位 1,000通貨単位
取引上限 30億円相当額
(建玉及び注文の最大合計額、
リアルタイムで円換算された金額)
※1回あたりの注文数量は
200万通貨単位まで
レバレッジ倍率 最大25倍
取引手数料 無料
注文方法の種類 ・ASストリーミング注文
(2ウェイプライス)
・ストリーミング注文
(2ウェイプライス)
・指値、逆指値注文
(シングルリーブオーダー注文)
・IF-DONE注文
・OCO注文
・IF-OCO注文 など
スリッページ
ロスカット
アラーム機能
証拠金維持率が120%を
下回った場合にプレアラーム、
100%を下回った場合に
アラームをメール送信
追加証拠金
解消期限
受渡日(翌々営業日)の15:00まで
ロスカット
発動水準
証拠金維持率50%以下
利益と課税 申告分離課税(20.315%)
サポート体制 ・AIチャット
・有人チャット
・電話(平日8:30~17:00)
※楽天FXのホームページを基に筆者作成

2,楽天FXのスプレットやスワップポイントは?

FX会社選びでは、スプレッドやスワップポイントも重要な要素だ。楽天FXではどのように設定されているのか見ていこう。

楽天FXのスプレッド-業界最狭水準の狭さ

まず楽天FXのスプレッドについて、DMM FXとGMOクリック証券FXネオのスプレッドと比較した。

主要通貨ペア別スプレッド一覧表

  楽天FX DMM FX GMOクリック証券FXネオ
通常時 キャンペーン 通常時 キャンペーン
米ドル/円 0.2銭 0.2銭 0.1銭 0.2銭 0.1銭
ユーロ/円 0.5銭 0.5銭 0.3銭 0.5銭 0.3銭
ポンド/円 1.0銭 1.0銭 0.6銭 1.0銭 0.6銭
豪ドル/円 0.7銭 0.7銭 0.4銭 0.7銭 0.4銭
NZドル/円 3.9銭 1.2銭 0.9銭 1.2銭 0.9銭
スイスフラン/円 5.9銭 1.8銭 1.6銭 1.8銭 1.6銭
カナダドル/円 3.9銭 1.7銭 1.5銭 1.7銭 1.5銭
南アフリカドル/円 1.0銭 1.0銭 0.8銭 1.0銭 0.8銭
香港ドル/円 2.9銭
シンガポールドル/円 4.9銭    
ノルウェークローネ/円 3.9銭
トルコリラ/円 6.8銭 1.7銭 1.7銭
人民元/円 1.8銭
メキシコペソ/円 0.5銭 0.3銭 0.3銭
ユーロ/米ドル 0.4pips 0.4pips 0.3pips 0.4pips 0.3pips
ポンド/米ドル 1.0pips 1.0pips 0.6pips 1.0pips 0.6pips
豪ドル/米ドル 1.9pips 0.9pips 0.4pips 0.9pips 0.4pips
NZドル/米ドル 4.0pips 1.6pips 1.4pips 1.6pips 1.4pips
米ドル/スイスフラン 5.0pips 1.6pips 1.5pips 1.6pips 1.5pips
ポンド/スイスフラン 5.0pips 2.8 pips 2.6pips 2.8 pips 2.6pips
ユーロ/ポンド 4.0pips 1.0pips 0.8pips 1.0pips 0.8pips
ユーロ/スイフラン 5.0pips 1.8 pips 1.6pips 1.8 pips 1.6pips
豪ドル/スイスフラン 7.0pips
NZドル/スイスフラン 8.0pips
豪ドル/NZドル 12.0pips
米ドル/カナダドル 1.6pips
※2020年11月16日現在、各社のホームページを基に筆者作成
※DMM FXのキャンペーン適用は2020年12月19日まで
※GMOクリック証券FXネオのキャンペーン適用期間は2020年12月22日3:00まで

米ドル/円、ユーロ/円といったメジャーな通貨ペアでは、楽天FXはDMM FXやGMOクリック証券FXネオの通常時と同じ、業界最狭スプレッドとなっている。ただしスイスフランなど、ややマイナーな通貨のスプレッドは、DMM FX・GMOクリック証券FXネオのほうが狭い。

主要取扱通貨ペア別のスワップポイント

次に、スワップポイントを比較してみよう。スワップポイントは、長期保有をするトレーダーにとって重要な数値だ。

主要通貨ペア別スワップポイント一覧表

  楽天FX DMM FX GMOクリック証券
FXネオ
 
米ドル/円 6 -26 8 -11 8 -11
ユーロ/円 -28 8 -11 8 -13 10
ポンド/円 4 -26 6 -9 4 -7
豪ドル/円 2 -16 3 -6 3 -6
NZドル/円 0 -26 4 -7 1 -4
スイスフラン/円 -33 -14 -15 12 -15 12
カナダドル/円 0 -23 2 -5 3 -6
※2020年10月20日の発生実績
※各社のホームページを基に筆者作成

スワップポイントについてはどの通貨ペアも、DMM FXやGMOクリック証券FXネオのほうが有利だ。スワップポイントが重要になる長期トレードなら、DMM FXやGMOクリック証券FXネオのほうが利益を出しやすいといえるだろう。

3,楽天FXの5つのメリット

ここまで楽天FXの基本情報を見てきたが、ここからは実際に取引をする際にどのようなメリットがあるのか見ていこう。

メリット1,コストを抑えた取引が可能

楽天FXではさまざまな手数料が0円であり、コストが気になる人でも安心して取引ができる。無料なのは、以下の手数料だ。

・口座開設手数料
・口座管理手数料
・取引手数料
・ロスカット手数料
・出金手数料
・クイック入金手数料

他のFX会社も口座開設・維持手数料は無料のところが多いが、入出金手数料が発生することがある。例えばマネーパートナーズでは月5回までの出金は無料だが、月6回目以降は1回あたり400円(税別)が必要だ。

楽天FXでは出金手数料も無料なので、こまめに出金したい人は助かるはずだ。

メリット2,最小取引単位が1,000通貨

楽天FXの最低取引単位は、1,000通貨単位。最低取引単位が1万通貨の口座の場合、FXを始めるには最低4万円(レバレッジ25倍)が必要だ。それに対して1,000通貨単位の場合は4,000円(レバレッジ25倍)あれば始められる。

初心者がいきなりレバレッジ25倍で取引をするのはおすすめできないが、最低取引単位が小さいほど少額で始められ、損失も限定できることは覚えておきたい。

メリット3,取引するごとに楽天ポイントが貯まる

楽天FXでは、取引ごとにポイントが貯まるポイントプログラムがある。基本情報は以下のとおり。

ポイントプログラム一覧

対象商品/サービス 獲得ポイント
楽天FX 10枚(10万通貨)ごとに1ポイント
※MT4は対象外
国内株式(現物・信用) 手数料100円ごとに1ポイント
米国株式
中国株式
投資信託 残高10万円ごとに4ポイント
個人向け国債 買付金額3万円ごとに1ポイント
日経225先物取引(ラージ・ミニ) 手数料100円ごとに1ポイント
日経225オプション
※楽天FXの公式サイトを基に筆者作成

10万通貨を取引するたびに、1ポイントの楽天ポイントが貯まる。これを利用するにはマネーブリッジの申込みと、ハッピープログラムのエントリーが必要だ。楽天スーパーポイントは楽天市場・楽天トラベル・楽天モバイルなど、楽天関連のサービスで広く使える。

投資分野では

・投資信託の購入金額の一部、もしくは全額
・国内現物株式の購入代金&手数料の一部、もしくは全額
・バイナリーオプションの代金の一部、もしくは全額

に使える。

楽天グループのサービスをよく利用する人なら、メリットが大きいだろう。

メリット4,MT4など高性能な取引ツールを無料で利用可能

PC用のツールとして、マーケットスピードFXと楽天FX-WEB、モバイル用にiSPEEDを用意している。マーケットスピードFXは、グッドデザイン賞(2012年)を受賞。操作性・高速性・デザイン性を誇る、楽天FX自慢の取引ツールだ。

楽天FXでは、MT4(メタトレーダー4)も使える。 MT4は高性能なチャート機能や利便性の高さから、FXをはじめさまざまな投資で活用されていることで知られている。MT4は上級者向けのツールで、システムトレード(自動売買)もできる。売買のストラテジーも、他のトレーダーが使用しているものを取り込むことが可能だ。

ただし楽天FXでMT4を使うには、楽天FXの口座を開設した後、MT4の口座を開設する必要がある。また、以下の点には十分注意してほしい。

・スプレッドなどの取引条件が通常の口座とは違う
・ポイント付与の対象外

メリット5,初心者から経験者まで役に立つセミナーなどを開催

楽天FXは投資情報の提供にも注力している。

以前は、全国の主要都市で「FX全国セミナー」を無料で開催していた。2020年11月現在、コロナの影響で対面セミナーはすべて中止になっているが、ためになるので再開されたらぜひ参加してほしい。

また、公式YouTubeチャンネルでマーケット情報や動画セミナーを提供するなど、オンラインでの情報発信にも力を入れている。「マーケットスピードの使い方」「MT4〜世界で愛されているFX取引ツールの始め方」や、プロが注目するポイントを紹介するレポート「毎ヨミ!為替Walker」など、初心者から経験者まで役に立つラインアップになっているので、一度のぞいてみるとよいだろう。

4,楽天FXの3つのデメリット

どのFX会社も、利用する上で注意すべき点がある。楽天FXでは以下3点だ。

デメリット1, 主要通貨ペア以外はスプレッドが広い

楽天FXのスプレッドは、米ドル・ユーロなど主要通貨ペア以外は広い。具体的には、NZドル/円、スイスフラン/円、カナダドル/円などだ。スプレッドが広いと余計なコストがかかり、それがトレードの利益を圧迫する。主要通貨ペア以外の取引を考えているなら、楽天FX以外も検討したほうがよいだろう。

デメリット2,システム障害を起こしたことがある

楽天FXでは、過去に何度かシステム障害が発生している。直近では、2020年3月9日にすべての商品取引ができない不具合が発生した。取引ができなかったのは10:50~11:00までの10分間だけだったが、安定性の面でやや不安があることは否めない。

FX取引でシステムの安定性が気になる人は、自分のトレードスタイルをよく考慮するべきだ。特に1日に何度も取引を繰り返すデイトレードでは、わずかな時間でもシステム障害が発生すると困るだろう。

デメリット3,電話のサポート体制が手薄

カスタマーサポートダイヤルの受付時間は平日の8:30~17:00に限定されており、土日や夜間は対象外だ。しかも、8:30~9:00以外の時間帯はすべて混雑しているという。

電話でオペレーターに相談したい人にとって、サポート体制が充実しているとはいいがたい。

5,楽天FXはどんな人におすすめ?

ここまで解説してきた内容から、楽天FXに向いているのは以下に当てはまる人だ。

・楽天市場・楽天銀行など楽天関連のサービスをよく利用している人
・楽天ポイントを貯めたい人
・米ドル/円やユーロ/円といった主要通貨を中心に取引する人
・スワップポイントを重視しない人

楽天グループだけあって、楽天ユーザーにメリットが多いFX会社といえる。FXに慣れて投資金額が増えてきたら、10万通貨取引からは楽天ポイントを貯めることもできる。

ただし、FX業界の2強であるDMM FXやGMOクリック証券に比べると、カナダドル/円や米ドル/スイスフランなどの通貨ペアのスプレッドが広い。米ドル/円やユーロ/円といったメジャー通貨ペアを中心に取引する人に向いているといえるだろう。

監修者・近藤真理
証券会社の引受業務やビジネス系翻訳携わったのち、個人投資家として活動。現在は総合証券、ネット証券の両方を使いこなし、経済、金融、HR領域で多数の媒体で執筆中。2019年にフィナンシャルプランナーの資格取得。

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