つみたてNISAで1ヶ月1万円、「サブスクリプション感覚」で積立投資をするとどうなるだろうか?何もしなかったときと比べると、20年後には資産が倍増しているかもしれない。しかも非課税メリットもある。つみたてNISAを活用した積立投資の効果とリスクについて説明しよう。
1.つみたてNISA(積立NISA)とは?
初心者が始めやすい投資法のひとつに「積立投信」がある。積立投信とは、毎月一定額の投資信託を購入していく投資法のことだ。少額から始められるので、初心者や仕事で多忙な人でも始めやすい。
投資信託はプロに投資先選びや運用を委託する。限られた資金でさまざまな投資先への分散投資が可能になる。分散投資はリスクを抑える基本的な手法だ。
「つみたてNISA」(積立型の少額投資非課税制度)は金融庁お墨付きの商品のみという条件で、非課税で積立投信の運用が行える。つみたてNISAの非課税期間は買付をした年から20年後の12月末までだ。非課税期間中は売却や分配金で得た利益に税金がかからない。年40万円を上限に、日本在住の20歳以上なら誰でもつみたてNISAを利用できる。
年に40万円ということは、最大で1ヶ月3万円程度をつみたてNISAに投資できる。しかしiDeCoや他の投資を行ってたり、生活資金に必要な額が大きかったりする場合は、月1万円程度しかつみたてNISAで投資できないケースもある。
2 .つみたてNISA(積立NISA)を月1万円、20年間積立運用した場合のリターンをシミュレーション
つみたてNISAで月1万円の投資をするだけで資産形成に効果があるのかと疑問に思う人もいるかもしれない。長期間運用すればどのくらいの資産を築くことができるのか。つみたてNISAの最長非課税期間である「20年間運用」を前提に、いくつかの想定利回りでリターンをシミュレーションしてみよう。積立投資の成果は各証券会社のホームページなどで試算が可能だ。
月1万円を利回り1%で20年間運用した場合……運用益25万円程度
運用利回りを1%、月1万円を20年間運用した場合をシミュレーションしてみた。つみたてNISAで購入できる株式型の投資信託で、利回り1%はかなり控えめな数字である。
運用結果:265万6,571円
元本の合計:240万円
運用益(非課税):25万6,571円
シミュレーションの結果、運用益は25万円を超えた。見逃せないのが節税額が5万円にも上っている点だ。それでこれだけのリターンが得られるのだから、複利の効果の高さがうかがえる。銀行預金や国債に比べれば十分な利回りだろう。
月1万円を利回り3%で20年間運用した場合……運用益87万円程度
次に利回り3%で運用した場合のリターンと節税額を見てみよう。
運用結果:327万6,605円
元本の合計:240万円
運用益(非課税):87万6,605円
積み立てた元本は240万円であるのに対し、87万円の運用益が得られた。節税額は17万8,000円にもなる。リターンと節税効果はかなり高い結果といえる。
月1万円を利回り5%で20年間運用した場合……運用益167万円程度
今度はつみたてNISAの運用利回り5%を想定する。やや強気の数字ではあるが、株式型投資信託では十分に見込める利回りである。
運用結果:407万4,577円
元本の合計:240万円
運用益(非課税):167万4,577円
ここまでくると運用益は160万円を超えてくる。節税額も34万円と高額だ。利回り5%は大口の機関投資家である企業年金連合会が、国内株式を対象とした資産に対して設定した期待リターン値であり、荒唐無稽な想定利回りではない。
月1万円を利回り7%で20年間運用した場合……運用益280万円程度
最後につみたてNISAでの想定利回りを7%にしてシミュレーションをしてみる。利回り7%は、上述の企業年金連合会が海外株式を対象とした資産に対して設定した期待リターン値だ。
運用結果:520万9,267円
元本の合計:240万円
運用益(非課税):280万9,267円
とうとう運用後の資産が元本の倍以上に達した。非課税額は56万円だ。20年間という長期とはいえ、資産が倍増するならぜひとも挑戦してみたいと思うだろう。しかし年平均7%のリターンというのは本当に現実的なのだろうか。
3.つみたてNISA(積立NISA)で年平均5%~7%のリターンは現実的か
つみたてNISAは2018年にスタートした制度だ。そのためつみたてNISAの20年の実績を見ることはできないが、実際の運用ではどのくらいの利回りが期待できるのかは、インデックスの過去実績リターンが参考になる。
つみたてNISA(積立NISA)の指定インデックスの種類
つみたてNISA対象商品となる投資信託が連動するインデックスの種類は大きく分けて国内型、海外型、バランス型に分けられる(※2020年11月9日『金融庁のつみたてNISA対象商品届出一覧』による)。
国内型はTOPIXや日経平均株価に連動し、海外型はそれぞれ全世界株式、先進国株式、新興国株式、米国株式の動きを表す指数をベンチマークにしている。バランス型は対象資産を複数組み合わせたものだ。
インデックスの動きを見れば、つみたてNISAの対象商品に20年でどのくらいのリターンが見込めるのか、ある程度は分かる。
つみたてNISA(積立NISA)指定インデックスの20年リターン
つみたてNISAの指定指標の過去の動きから、20年前から現在まで運用を続けた場合に得られたリターンは以下の通りだ。
参考指標 | 20年間の年平均リターン | |
国内型 | TOPIX | 2.3% |
日経平均株価 | 2.0% | |
海外型 | (全世界株式)MSCI オール・ カントリー・ワールド・インデックス |
5.5% |
(先進国株式)MSCI コクサイ・インデックス | 5.8% | |
(新興国株式)MSCI エマージング・ マーケット・インデックス |
8.1% | |
(米国株式)S&P 500 | 6.3% |
同じ先進国株式や新興国株式の中でもインデックスの種類はいくつかあるが、基本的に同じような動きをするため、代表的な1つを基準にした。
海外型のリターンに関しては、新興国株式以外は7%には届かないが5%は期待できそうだ。国内型のリターンはプラスではあるものの海外型に比べると、やや物足りなく感じる。米国株式の指標は先進国株式と新興国株式の中間くらいのリターンになっている。
あくまでも過去実績に基づくリターンなので将来の利回りを保証するものではない。対象指標によってどのくらいの期待が見込めるものなのか、いくらかは参考になるだろう。
つみたてNISA(積立NISA)対象のアクティブ型投資信託の長期リターン
インデックスファンドは対象インデックスの動きを見ればある程度パフォーマンスをはかれる。一方、個別銘柄に投資するアクティブファンドの場合はそれぞれのファンドの実績を見るしかない。つみたてNISAにおける主要な投資信託の過去の年平均リターンをチェックした。運用期間が10年に満たないものは5年実績を参照した。
ファンド名 | 年平均リターン | |
日本株式 | ひふみプラス | 11.4%(5年) |
海外株式 | セゾン資産形成の達人 | 13.2%(10年) |
海外株式、公社債及びREIT | のむラップ・ファンド(積極型) | 8.3%(10年) |
日本株式を組み入れ対象とする「ひふみプラス」は純資産5,000億にせまる大型ファンドだが、この5年で年平均8.1%のリターンだ。海外株式が対象の「セゾン資産形成の達人」は10年13%、複合資産の「のむラップ・ファンド(積極型)」は10年で8.3%である。
アクティブファンドでも、ここ5年から10年は高いリターンをあげている。ただしアクティブ型の投資信託は激しい値動きや高コストのリスクもあることを覚えておこう。
4.つみたてNISA(積立NISA)にかかるリスクとコストとは
つみたてNISAには選びやすい商品と非課税効果、長期的な積立投資とメリットが多いが、リスクとコストについてはしっかり理解しよう。必ず5%~10%のリターンが約束されているわけではないからだ。
元本割れのリスク
つみたてNISAは金融庁の基準を満たす商品のみが対象とはいえ、投資信託には元本割れのリスクがつきものだ。特に短期では上下にぶれやすく、1年や3年でやめてしまうとマイナスになることはよくある。つみたてNISAの場合は非課税期間が終了する20年後にプラスになっていれば良いのである。つみたてNISAでは許容できるリスクを見極め、長期投資に徹することが重要だ。
信託報酬のコスト
NISAは運用益に税金がかからないことが最大のメリットだが、投資信託にかかる手数料は他の制度下と同様に発生する。投資信託の保有期間中に必ず支払う信託報酬には注意しよう。数字的には小さく見えても、長期投資となると想像以上に負担が膨らむ。
たとえば投資金額100万円で信託報酬0.2%のファンドにかかる年間信託報酬は年2,185円だ。料率は純資産総額によって変わるので単純計算できないが、20年だと数万円に膨らむことりなる。つみたてNISAでの利回りが低い場合、収益を圧迫することにもなりかねないので気を付けよう。
5.つみたてNISA(積立NISA)は月1万円でも始める価値あり
投資信託を通常口座で運用しても運用益を得られるが、つみたてNISAなら非課税メリットを享受できる。口座開設や制度の理解など、最初はハードルが高いと感じるかもしれないが、一旦始めてしまえばあとは自動的に積立投資が可能だ。リスクを理解し、1万円からでも、つみたてNISAを活用してみよう。
執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
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