投資で大損をしないためには、メンタルコントロールが重要とよくいわれます。コロナ禍で先が読みにくい状況では、メンタルの重要性がさらに高まっているといえるでしょう。本稿では、次の株価暴落に備えてメンタルコントロールを行い、大損を招きやすい「狼狽(ろうばい)売り」を防ぐ方法を解説します。

成功した個人投資家たちは100%メンタル対策をしている

株式投資
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

2020年に日経マネーが株式投資で資産1億円以上を築いた凄腕個人投資家を対象に行ったアンケート(※)によると「株式投資で動揺しないため、何らかのメンタル対策に取り組んだことがありますか」の問いに対して100%が「取り組んだことがある」と回答しています。内訳は「今も取り組んでいる」が約79%、「過去に取り組んだことがある」が約21%でした。

メンタル対策の取り組み凄腕個人投資家一般投資家
今も取り組んでいる約79%約26%
過去に取り組んだことがある約21%約6%

同アンケートでは一般の投資家に対してもTwitter投票機能で同じ質問をしています。一般の人がメンタル対策をしたことがある人は約32%でした。内訳は「今も取り組んでいる」が約26%、「過去に取り組んだことがある」は約6%と凄腕投資家と明らかな差があります。投資の世界では、メンタルの重要性がよく取り上げられますがこれを裏付ける内容といえるでしょう。

※日経マネー2020年7月号、資産1億円を超えるスゴ腕投資家19人を対象にしたアンケート

トップクラスの投資家でさえも狼狽売りをしてしまう

それではなぜ投資家にメンタル対策が必要なのでしょうか。前出の日経マネーの凄腕個人投資家アンケートによると、メンタル対策に取り組んだきっかけとして以下のような項目が上位に挙げられています。

順位理由
第1位投資で心が折れそうになったことがあるから
第2位調整局面で動揺したから
第3位短期の値動きに振り回されたから

この回答から凄腕個人投資家でさえも「狼狽(ろうばい)売り」に近い行動をとっていることが分かります。狼狽売りとは、株価の急落を見て慌てて売却してしまうことです。資産1億円以上を築いてきたトップクラスの彼らでさえ、株価急落時のメンタルコントロールは難しいことが理解できるのではないでしょうか。一般投資家であれば、さらにハードルが上がることは言うまでもありません。

狼狽売りをセーブできれば株式投資のリターンは大きくなる

メンタルコントロールをして狼狽売りをセーブできれば、リターンを上げられることを証明するデータがあります。 J.P.モルガン・アセット・マネジメントでは、過去15年間の日経平均株価を分析。その年で最も株価が下がった年初来最大下落率と年間リターンを比べてみると年間リターンのほうが大きく上回る年が大半を占めました。

つまり株価が大きく値下がりしたときは狼狽売りをするのではなく、キープし続けたほうがリターンを生み出せる可能性が高いのです。この分析は、コロナショックにもあてはまります。2020年2月21日時点の終値で2万3,386円74銭だった日経平均株価は、同年3月19日終値で1万6,552円83銭まで急落。1ヵ月足らずで約7,000円近い下落で慌てふためき、保有株式を手放した人も多いのではないでしょうか。

しかし日経平均株価は約8ヵ月後の11月11日終値には2万5,349円60銭とバブル崩壊後29年ぶりの高値更新まで上昇しています(ただし、値戻りしない銘柄も一部あります)。つまり2020年3月の急落を耐え忍んだ人は大きな損失を被らずに済んだというわけです。

株価暴落時には、まず立ち止まって考える

コロナ禍といった特殊な環境下では、いつ再び株価の暴落局面がやってくるかは誰にも分かりません。またコロナを乗り越えたとしても株式投資している以上は、人生のうちにはいくども暴落に襲われる可能性はあります。そのため「次の暴落に備えてどのようにメンタルコントロールを行って狼狽売りを防げばよいか」をしっかりと対策しておきましょう。

投資の格言で「もうはまだなり、まだはもうなり」というものがあります。この格言は、江戸時代の八木虎之巻に記載されている言葉で意味は以下の通りです。

  • もう底と思えるときはまだ下がる可能性がある
  • まだ下がると思えるときはもう底に来ている可能性がある

人間の心理における本質が垣間見える格言といえるでしょう。つまりどんな状況であってもメンタルコントロールを行うには、一度立ち止まって考えることが重要です。投資にあてはめれば、株価暴落のときにはすぐに売却をクリックするのではなく、状況を俯瞰(ふかん)することが先決といえます。そのうえで暴落の原因を探り、「暴落が一時的なものなのか」「長期的なものなのか」を判断する必要があるでしょう。

自分がどんな行動をとればベストなのかが見えてくるはずです。株価暴落においても冷静な思考を保っていれば「暴落を利用してリターンを得ることはできないか」といった戦略を描く余裕も生まれやすくなります。

ピンチの局面でリラックス状態を作る方法

「株価暴落時にいったん立ち止まって考えることが大切な理屈は分かるが、現実的に実行するのは難しい」と感じている人も多いのではないでしょうか。実際に将来が不安になるような大きな含み損を目の前にして「立ち止まって考えよう」などと冷静さを保てる人は少ないかもしれません。どんな状況にあっても冷静さを保つには、メンタルコントロールを行うためのテクニックが必要です。

例えば、国立スポーツ科学センターでは、呼吸法と筋弛緩法で意図的にリラックス状態を作る方法を2つ紹介しています。

  • 呼吸法でリラックス状態を作る
  • 筋弛緩法でリラックス状態を作る

呼吸法でリラックス状態を作る

自分の心と体の今の状態に意識を向けてみましょう。自分の心が「どのような感情か」「心拍数や緊張状態はどうか」などに着目してみましょう。そのうえでお腹が膨らむことを意識して鼻から息をゆっくりと吸い、お腹が膨らんだら逆にお腹がへこむように口から息をゆっくり吐きます。息を吐くスピードは、息を吸うスピードよりもゆっくりしたペースになるよう意識しましょう。これを2回繰り返します。

筋弛緩法でリラックス状態を作る

筋弛緩法というのは、体の一部にぐっと力を入れた後にふっと力をゆるめることでリラックス状態を作る方法です。力を入れる場所に決まりはありません。例えば顔のどこかに力を入れてゆるめたり力をこめてこぶしを握ってゆるめたりするなどの方法があります。

投資に限らずパフォーマンスを上げるためには、俯瞰的な視野を持ち冷静に判断できるメンタル状態が不可欠です。呼吸法や筋弛緩法だけでなく自分に合ったリラックス状態を作り出す方法を会得しておくことで投資判断をより正確にできるようになるでしょう。

投資では、すぐに結果を求めてはいけない

投資で成功するには以下の3つをしっかりと押さえて対策しておくことが重要です。

  • メンタルコントロール
  • リターンを得られない要因は狼狽売り
  • 株価暴落時に動揺しないためには「立ち止まって考える」

これらの内容は特に株価暴落への表面的な対応といえます。あわせてどんなに予想外のことが起きても動揺しない根本的なメンタルも手に入れることが理想です。例えば全米で1,000万人が読んだといわれているメンタルコントロールのメソッド『メンタルが強い人がやめた13の習慣』(講談社+α新書)がヒントになります。

著者のエイミー・モーリンさんは、13ある悪習慣のうちの一つとして「すぐに結果を求める習慣をやめるべき」と提唱。これは株式投資にとどまらず仕事や家庭でも大切なメソッドです。メンタルの強い人たち(=成功者に近い人)は、簡単に成功が手に入らないことを理解しています。そのため株式相場と向き合うとき「すぐに結果を求めてはいけない」と常に意識しておくことが大切です。

これにより予想外のことが起きても「成功のための通過点だ」「信念を貫こう」といった対応がとりやすくなります。世間では「短期間で億り人になった」「買った株が10倍になった」などまるで一獲千金したかのような話題があふれていますが、こういったケースは極々わずかです。単に一発当てて儲かったのであれば、投資ではなくイチかバチかの投機でお金を手に入れたことと変わりません。

通常の投資で目標を達成するには期間がかかるものです。メンタルコントロールを投資活動の中心に置いて着実に一歩一歩資産を増やしていきましょう。

激しい値動きの投資はストレスがかかる人は……

株式投資(または株式中心の投資信託)のような値動きの激しい投資はストレスがかかるから仕事に集中できない……というタイプの人は、不動産投資がおすすめです。不動産投資は、株価と連動することが少なく株価低調時でも安定した家賃収入を得ることができます。また株式投資や投資信託と組み合わせることでリスク分散となり、株価暴落の影響を和らげることも期待できるでしょう。

※本稿は、株価暴落時に株式を保持し続けることを推奨するものではありません。状況に応じて適切な判断をしてください。(提供:Incomepress


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