「SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド」の純資産残高が、設定からわずか11ヵ月で700億円を突破した。米バンガード社と共同で創設された同ファンドは、米国株式インデックス投資信託の中で信託報酬が最も低い。人気の理由と特徴を紹介していこう。
SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドの特徴
SBIアセットマネジメント株式会社が世界最大級の投信運用会社であるバンガード社と提携し、創設したインデックス・ファンドが「SBI・バンガード・S&P500 インデックス・ファンド」だ。2019年9月26日の設定以来純資産残高を順調に伸ばし、2020年10月16日現在は800億円に迫る勢いである。販売会社であるSBI証券の投信ランキングでは「積立設定件数」「積立設定金額」ともに1位を継続している。愛称は「SBI・バンガード・S&P500」。
連動する指数はS&P500指数
「SBI・バンガード・S&P500」は、米国の代表的な株価指数であるS&P500指数(円換算ベース)に連動するファンドだ。S&P500はニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している500銘柄で構成されており、それらの値動きが好調であれば値上がりが期待できる。1つの企業ではなく、市場全体に分散投資をしたかのように運用できるのがインデックス投資のメリット。「SBI・バンガード・S&P500」に投資することは、米国株式市場に投資するのと同じ意味を持つ。
S&P500は堅調に推移しており、1年で13.6%、3年で10.1%、5年で11.4%の年率平均リターンを出している。ITバブル崩壊やリーマンショック、コロナショックによる一時的な下げはあったが、日本のTOPIX(東証株価指数)などと比べると長期的に順調な成長が期待できる。
投資対象はバンガード社のETF
SBI・バンガード・S&P500は、バンガード社が運用を行う「バンガード・S&P500 ETF」を主な投資対象としている。バンガード社は世界で初めて個人向けにインデックス・ファンドを設立した運用会社で、規模・コスト・安全性に定評がある。
特に、経費率を抑えることで低い手数料を実現しているのが特徴。同社はコストを下げて分散投資をすることで、長期投資に向く商品を開発するのを得意とする。SBI・バンガード・S&P500の信託報酬手数料は、同カテゴリの平均よりも1.5%安い、年率0.0938%だ。
日本円で少額から積立投資ができる
海外株式を購入するためには専用口座が必要だが、「SBI・バンガード・S&P500」なら通常の口座から日本円で投資できる。海外銘柄に分散投資をするのは手間とコストの面で初心者にはハードルが高いが、円ベースの投資信託なら国内ファンドと同じように取引ができる。
証券会社によっては、100円から積立投資ができる。まとまった資金がない場合や買うタイミングに悩む場合は、毎月など定期的に買い付けを行う積立投資が便利だ。SBI・バンガード・S&P500は、つみたてNISAの対象商品になっている。金融庁の求める「長期・分散・積立」という条件を満たしており、長期の資産形成を考えている人に向いている。
購入できるのは6金融機関
「SBI・バンガード・S&P500」を販売する金融機関は、以下の6つだ。
・SBI証券
・岡三オンライン証券
・auカブコム証券
・SMBC日興証券
・マネックス証券
・佐賀銀行
ネット証券NO.1のSBI証券や、大手のマネックスなどで購入できる。
SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドと類似商品の比較
ここからは、「SBI・バンガード・S&P500」と同類のETFや他社の類似商品の違いを見ていこう。
「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」に直接投資することとの3つの違い
・違い1,外国株式取引口座が不要
「SBI・バンガード・S&P500」が「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」に投資する投資信託なのであれば、ETFに直接投資すればよいのではないか、と思うかもしれない。バンガードのETFは手数料が低く、運用手数料は0.03%とSBIの投資信託を下回る。上場投資信託なので、株式のように時価で取引することができる。
しかしVOOのような海外ETFを取引するには、外国株式取引口座が必要だ。買付の際は、資金をドルで用意する必要もある。投資信託の場合は、外国株式口座も為替取引も不要なので、特に投資初心者にとっては手間が省けるというメリットがある。
・違い2,分配金が自動的に再投資される
また長期投資の観点では、分配金が自動的に再投資される投資信託である「SBI・バンガード・S&P500」のほうが有利だ。「バンガード・S&P500 ETF(VOO)」で分配金を再投資したい場合は、受け取った分配金から税金を差し引いて再度買い付けに回さなければならないので、非常に効率が悪い。
・違い3,つみたてNISAで買付ができる
さらに、非課税のつみたてNISAが利用できるのは「SBI・バンガード・S&P500」だけだ。コストではETFのほうが有利だが、国内の個人投資家がアクセスしやすく長期投資に向くという点では、「SBI・バンガード・S&P500」のほうが有利だ。
楽天・バンガード・ファンド(全米株式)との違い――大型株・中小株も含めるか
楽天投信投資顧問もバンガード社と提携してインデックス・ファンド・シリーズを展開しており、米国株式市場を対象とする銘柄も含まれる。「SBI・バンガード・S&P500」と同等の商品は「楽天・全米株式インデックス・ファンド」で、愛称は「楽天・バンガード・ファンド(全米株式)」。「SBI・バンガード・S&P500」との違いを見てみよう。
同ファンドは、バンガード社の「バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)」を投資対象とする。ベンチマークは「CRSP USトータル・マーケット・インデックス」だ。SBIと比較してみよう。
銘柄 | 投資対象 | ベンチマーク指数 |
SBI・バンガード・S&P500 | バンガード・S&P500 ETF(VOO) |
S&P500 |
楽天・バンガード・ファンド (全米株式) |
バンガード・トータル・ ストック・マーケッETF (VTI) |
CRSP USトータル ・マーケット・インデックス |
SBIと楽天の大きな違いは、前者が米国市場の大型株を対象としているのに対し、後者が中小株も含めている点だ。S&P500の構成銘柄は時価総額の高い500社で、アップルやアマゾンといった著名な優良企業が多い。一方 CRSP USトータル・マーケット・インデックスは投資銘柄数が3,579と、ほぼすべての米国株式をカバーしている。
現在のところS&P500はIT企業を中心に市場をけん引しているが、逆に言うとこれらの企業の業績が低迷した場合は、S&P500をベンチマークとする銘柄が値下がりする可能性がある。そのリスクを分散するために中小株にも投資したいと考えるなら、VTIが適しているだろう。
つみたてNISAでSBI・バンガード・S&P500を買うべき理由――信託報酬が最安
次は、つみたてNISAにおける類似商品と比較してみよう。
つみたてNISAでS&P500に連動する投資信託
ファンド名 | 信託報酬 (年率・税込) |
運用会社 |
SBI・バンガード・S&P500 インデックス・ファンド |
0.0938% | SBIアセットマネジメント |
米国株式インデックス・ファンド | 0.495% | ステート・ストリート・ グローバル・アドバイザーズ |
iFree S&P500インデックス | 0.2475% | 大和アセットマネジメント |
農林中金<パートナーズ> つみたてNISA米国株式 S&P500 |
0.495% | 農林中金全共連 アセットマネジメント |
NZAM・ベータ S&P500 | 0.264% | 農林中金全共連 アセットマネジメント |
eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500) |
0.0968% | 三菱UFJ国際投信 |
つみたて米国株式(S&P500) | 0.22% | 三菱UFJ国際投信 |
Smart-i S&P500インデックス | 0.242% | りそなアセットマネジメント |
つみたてNISAでS&P500をベンチマークとする投資信託は8本あり、いずれも米国株式に連動するインデックス・ファンドだ。「SBI・バンガード・S&P500」と他の銘柄は、信託報酬や純資産総額にどのような違いがあるだろうか。
2020年10月時点では、「SBI・バンガード・S&P500」がつみたてNISAにおけるS&P500連動銘柄の中で信託報酬が最も低い。三菱UFJ国際投信の低コストインデックス・ファンド・シリーズ「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を下回る水準だ。
純資産総額は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が174,759百万円で、「SBI・バンガード・S&P500」は78,437百万円と約1,000億円少ない。eMAXIS Slimは設定日が2018年7月3日とSBIより1年早いとはいえ、資金流入のスピードは相当速い。
シリーズ化していることによる相乗効果もあるのかもしれない。eMAXIS Slimは 、シリーズ全体で純資産総額5,000億円を超える大型インデックス・ファンド・シリーズだ。一方でSBIのバンガード銘柄はシリーズ化されておらず、現在のところ「SBI・バンガード・S&P500」のみだ。
SBI・バンガード・S&P500をつみたてNISAで買うメリット
「SBI・バンガード・S&P500」は課税口座でも購入できるが、せっかく非課税制度があるので一般NISAかつみたてNISAで運用したいところ。どちらでも構わないが、つみたてNISAの対象商品になっているファンドは基本的に長期積立に適した商品設計になっているため、一括購入で投資期間が5年の一般NISAより、積立購入で20年保有できるつみたてNISAのほうが長期投資の効果が高いだろう。
つみたてNISAを始めようとしている人や、ポートフォリオを見直そうと考えている人は、「SBI・バンガード・S&P500」を検討してみとよいだろう。
執筆・篠田わかな(ファイナンシャルプランナー)
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
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