NISA口座はメリットが高いため投資をするなら活用したいが、複数開設することはできない。もし複数の口座を開設してしまった場合は、どうすればよいのだろうか。

1.NISA口座を複数持つことはできる?

nisa口座,複数
(画像=taka/stock.adobe.com)

NISAには一般NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAがあるが、複数の口座を申し込みたい場合はどうすればよいのだろうか。

NISAは複数申し込んでも1口座しか開設できない

残念ながら、NISA口座は複数開設できない。1人1口座までと決められており、例えば一般NISAを複数の金融機関で口座開設したり、一般NISAとつみたてNISAを併用したりすることはできない。

NISA口座は複数開設不可だが例外もある

NISA口座は複数開設できないが、ジュニアNISAは例外だ。

ジュニアNISA口座は、19歳(2023年以降は17歳)までの未成年者が開設できる。口座の名義は子どもだが、教育資金などを目的として親などが代理で運用することが想定されており、実質的には両親や祖父母が利用する口座だ。子どもの名義であるため、一般NISAやつみたてNISAとも併用できるが、投資可能期間は2023年末までであることに注意したい。

NISA口座を複数持つことはできないが変更はできる

NISA口座は複数開設できないが、金融機関や口座の種類は変更できる。例えばA銀行で一般NISAを開設して、その後B銀行に変更したり、一般NISAからつみたてNISAに変更したりできる。

ただし、変更できるのは年1回までだ。NISA口座変更の手続きは、変更したい年の前年10月1日から翌年の9月30日までに行う必要がある。変更を検討している人は、金融機関で手順を確認しておこう。

2.複数持てないNISA口座はどんな金融機関で開設すべきか 比較したい3つのポイント

NISAは金融機関の変更はできるが、手間がかかるため変更しないに越したことはない。したがって、最初の金融機関選びは慎重に行いたい。金融機関でNISA口座を開設する際に比較したいポイントは、以下の3点だ。

取引手数料が安い

NISA口座自体に手数料はかからないが、商品には手数料がかかることもある。株式では売買手数料、投資信託は買付手数料と信託報酬に注意したい。

特に手数料を比較したいのは、一般NISAやジュニアNISAを開設する場合だ。同じ商品でも金融機関によって手数料が異なる。できるだけ手数料が安い金融機関を選び、コストで利益が目減りするのを避けたい。

つみたてNISAでは投資信託の買付手数料は無料で、信託報酬は同じだ。そのため、買いたい商品があるかどうかで金融機関を選ぶとよいだろう。

取扱商品が多い

NISA口座の金融機関選びでは、取扱商品数も重要だ。株式ならIPO(新規公開株)や外国株式にも投資できるか、投資信託なら取扱数が豊富かどうかをチェックしたい。商品数が多ければ選択肢が広がり、比較しながらよりよい商品を選べる。途中で商品を切り替えたいと思った場合でも、投資したい商品を買える可能性が高くなる。

投資のサポートやサービスが自分に合っている

投資に関するサポートやサービスも比較したい。例えば一般NISAで株式投資を行う場合、取引アプリの使い勝手や分析ツールの機能は大きく異なる。実際に試してみて、自分に合うサービスを提供している金融機関を選ぶとよいだろう。

投資信託では、銘柄選びや購入後のサポートをするロボアドサービスを提供しているところがあり、こちらも各社で内容が異なる。また電話サポートの質が高い金融機関もあるため、自分にどのようなサポートやサービスが必要かを考えて金融機関を選ぼう。

3.NISA口座を開設するのにおすすめの金融機関4選

上記の3つのポイントを踏まえて、NISA口座でおすすめの金融機関を紹介したい。比較表で違いを確認してほしい(2020年11月20日時点)。

  SBI証券 楽天証券 松井証券 マネックス証券
国内
株式
買付
手数料
無料 無料 無料 無料
売却
手数料
無料 無料 無料 無料
IPOの取引可否
米国
株式
買付
手数料
0ドル〜 0ドル〜 無料
売却
手数料
0ドル〜 0ドル〜 0ドル〜
投資
信託
一般NISAと
ジュニアNISA
対象の本数
2,637本 2,680本 1,264本 1,156本
買付
手数料
無料 無料 無料 無料
つみたてNISA対象
の投資信託本数
169本 170本 155本 151本
ロボ
アドサービス
購入時
保有中
電話
取引
有無
外部評価
(※各社ホームページより筆者作成)

SBI証券……NISAで取引できる商品数は業界最多水準、NISAでIPO投資をしたい人におすすめ

SBI証券は投資信託の取扱数が業界最多水準である上に、国内株式の売買代金シェアも主要ネット証券で最大。IPOの引受社数も多く、関与率は大手証券会社も含めて最も高い。一般NISAで積極的にIPOに申し込むなら、SBI証券をおすすめしたい。一般NISAで株式投資を行う場合の取引手数料は、海外株式を除いて無料であるため、コストを気にせず好きな商品に投資できるのもメリットだ。

SBI証券は、株式の売買手数料や投資家が負担する費用の無料化を図っている。NISAに限らず今後も手数料引き下げが期待でき、個人投資家からの支持も高い。投資信託については「SBI-ファンドロボ」で自分の投資スタイルからおすすめファンドを探すこともでき、初心者であってもファンド選びで困ることがないようサポートしている。

楽天証券……投資信託の取扱数が最も多く自社サイトで投資を後押し、NISAで投資信託を運用したい人におすすめ

楽天証券は商品数や手数料に関していえば、SBI証券とほとんど違いはない。投資信託の取扱数は業界最多水準であり、株式などを含めNISAでの取引手数料も原則無料だ。ただし、IPOをNISAで取引できない点に注意したい。投資信託の取扱数は楽天証券のほうがSBI証券よりもわずかに多いため、投資信託をメインで取引したい人は口座開設を検討するとよいだろう。

投資信託ではロボアドを利用できないが、「トウシル」という自社サイトで投資情報を積極的に配信している。株式や投資信託に関する情報が頻繁に更新されており、初心者から経験者まで役立つ情報が豊富だ。初心者カテゴリーもあるため、これから投資を始める人は知識を増やしながら投資を実践できるだろう。

松井証券……サポートサービスの評価が高いネット証券、NISAでもサポートを重視する人におすすめ

松井証券はサポートサービスが外部から高く評価されており、顧客満足度も高い。取引ツールが充実しており、パソコン・スマホともに高機能ツールを無料で利用できる。株式投資の高機能ツールは他社では有料になることもあり、無料で利用できるのはメリットが大きい。投資信託専用アプリもあり、購入アドバイスから資産管理までスマホで完結できるため、初心者でも気軽に始められるだろう。

コールセンターも評価が高く、10年連続で最高評価を獲得している。電話でも質の高いサポートを提供しているのは、松井証券ならでは。他社と大きく違うのは、マネープランサポートを行っている点だ。これから資産形成を始める人のための電話相談窓口で、専門知識を持ったマネープランナーのアドバイスを受けられる。充実したサポートのもとで投資をしたいなら、松井証券でNISA口座開設を検討するとよいだろう。

マネックス証券……米国株投資で優れたサービスを提供、NISAで米国株投資をする人におすすめ

マネックス証券もNISAでIPO投資ができ、1,000本以上の投資信託を取り扱っている。手数料は原則無料だが、米国株の買付手数料が全額キャッシュバックされるのが特徴だ。他の主要ネット証券も最低0ドルからとなってはいるものの、通常は約定代金に対し0.495%(税込)の手数料が発生する。特に米国株は外国株式の中でも人気が高く、関心がある人も多いのではないだろうか。

マネックス証券は、米国株のサービスに優れている。取扱銘柄は3,800を超え、米国株取引で日本円から米ドルに交換する際の為替手数料もかからない。米国株の銘柄分析ツールである「銘柄スカウター米国株」では、過去の企業業績をグラフで表示できるなど優れた機能を提供している。NISAで米国株取引をするなら、マネックス証券を検討したい。

4.NISA口座を複数開設してしまったらどうなる?

各証券会社はそれぞれ特徴があるため、NISA口座を複数申し込んで利用したくなるかもしれない。もしNISA口座を複数開設してしまったら、どうすればよいのだろうか。

NISA口座を複数申し込んだ場合はどの口座が有効になるのか

NISA口座は1人1口座までと決められているため、複数の金融機関に申し込んでもどれか1つしか開設できない。金融機関がNISA口座を開設する際は、税務署に対し「非課税適用確認書」の交付申請手続きが行われ、これをもとに税務署は非課税の適用可否を判断する。

「非課税適用確認書」の交付申請手続きは通常は1つの金融機関でしかされないが、仮に複数の金融機関から申請があった場合は、申請時刻が最も早い金融機関でNISA口座が開設される。その他の金融機関に対しては「非課税適用確認書の交付を行わない旨の通知書」が送付され、NISA口座は開設されない。

つまり最も早く手続きをした金融機関でNISA口座が開設され、それ以外の金融機関での申し込みは無効になるのだ。

NISA口座を複数開設してしまったときの注意点

NISA口座の開設には税務署の審査があるため複数開設できないが、「非課税口座簡易開設届出書」を使用して申し込みをした場合は、一時的に複数の口座が開設されてしまうことがある。

「非課税口座簡易開設届出書」とは税務署の審査をNISA口座の開設後に行えるようにするもので、この届出書で手続きをするとNISA口座を即日開設できる。金融機関が税務署の審査結果を確認する前からNISA口座で取引ができるようになるため、利用者にとっては便利な仕組みといえる。

しかし、他の金融機関ですでにNISA口座を開設している場合は税務署で開設不可と判断され、後から申し込んだNISA口座は利益に対して課税される一般口座として取り扱われる。税務署から開設不可と判断されるまでに行った取引も課税対象になり、譲渡益について確定申告をしなければならない。

一時的にNISA口座を複数開設できたとしても後で無効になってしまうため、安易に複数口座を申し込まないようにしよう。

NISA口座を複数開設してしまったときの対処法

NISA口座は結局1人1口座しか利用できないため、複数の金融機関に申し込んでしまった場合は、取引を希望しない金融機関に対して、すぐに申し込みを取り消したい旨を伝えよう。NISA口座の開設は手続きの先着順となるため、タイミングによっては希望する金融機関でNISA口座を開設できなくなる可能性もあるからだ。

NISAを利用する金融機関を変更することはできるが、余計な手間がかかることを考えれば、よく検討してからNISA口座を開設する金融機関を選ぶべきだ。

5.NISA口座を変更する場合、変更前の口座はどうなる?

NISA口座を他の金融機関に変更した場合、非課税枠や保有資産はどうなるのだろうか。

NISA口座の金融機関変更で非課税枠や非課税期間はどうなる?

NISA口座の金融機関を変更できるのは年単位であり、変更したい年に一度でもNISA口座で買付があった場合、その年は金融機関変更ができない。つまりNISA口座の非課税枠を使用した年は、金融機関の変更はできないのだ。ある年の非課税枠は現在口座のある金融機関で使用しなければならず、途中で金融機関を変更しても非課税枠を分割できない仕組みになっている。

では最初にA証券で一般NISA口座を開設し、翌年にB証券に口座を変更したら非課税枠や非課税期間の取り扱いはどうなるのだろうか。

NISAは1人1口座までと書いたが、正確には「買付ができるのは1つの金融機関」であって、金融機関を変更すれば複数のNISA口座を持つことになる。

上記の例では、B証券に口座を変更してもA証券の一般NISA口座は非課税期間終了までの5年間はそのまま残り、保有資産は売却のみ非課税でできるが、買付はできない。変更後のB証券では通常どおり売買ができ、年間120万円の非課税枠や5年間の非課税期間ルールは同じだ。例えばA証券で3年間運用した後でB証券にNISA口座を変更した場合、B証券での非課税期間は残り2年になる。

一般NISAからつみたてNISAに変更する場合も同様である。変更前の金融機関では売却のみできる一般NISA口座が非課税期間終了まで残り、変更後の金融機関ではつみたてNISA口座として売買が可能になる。

NISA口座の保有資産は変更後の金融機関に移せる?

NISA口座を変更しても、それまでに購入した保有資産は引き続き非課税の対象になるが、保有資産を変更後の金融機関に移すことはできない。先ほどの例でA証券からB証券にNISA口座を変更したとしても、A証券で購入した商品はA証券でしか売却できないのだ。

NISA口座の非課税枠は年単位で金融機関ごとに設定されることを覚えておこう。

6.NISA口座変更の際の注意点

NISA口座を変更する際は、以下の点に注意してほしい。

NISA口座の変更手続きの注意点

NISA口座の変更手続きについて期限が決まっていることなどを説明したが、変更手続きの注意点をまとめると以下のようになる。

・NISA口座の変更は年単位
・変更前と変更先の金融機関それぞれに申し出て、必要書類を提出する
・変更手続きは、変更を希望する年の前年10月1日から翌年の9月30日まで
・変更を希望する年に変更前の金融機関のNISA口座で買付があると、その年は口座変更ができない

例えば2021年から金融機関を変更したい場合は、2020年10月1日から2021年9月30日までに手続きを行う必要がある。2021年1月に変更を反映させるには、2020年のうちに手続きを完了する必要があるため、金融機関にスケジュールを確認しよう。

なおジュニアNISAは、金融機関を変更することができない。

NISA口座を変更したらロールオーバーできない

NISA口座変更の最大のデメリットは、ロールオーバーができなくなることだ。

ロールオーバーとは、一般NISAの5年間の非課税期間が終了する翌年から、さらに非課税期間を5年間延長するための手続きだ。ロールオーバーをすることで、非課税期間が10年間になる。つみたてNISAではロールオーバーができないが、一般NISAにおいては非課税期間を延長して少しでも有利に投資をしていきたい。

ロールオーバーは同じ金融機関でしかできないため、NISA口座を開設した金融機関とロールオーバーする際の金融機関が異なる場合は手続きができない。例えば、2020年にA証券で一般NISA口座を開設し2025年にロールオーバーする場合、その時A証券に一般NISA口座がなければならないのだ。なお金融機関を変更した後でも、再度A証券に戻せばロールオーバーはできる。

一般NISAでロールオーバーができないのは大きなデメリットなので、NISA口座を開設する金融機関は慎重に選びたい。

7.NISA口座は1人1口座だが証券口座は複数持つことができる

NISA口座は複数持てず、変更に手間がかかったりデメリットが発生したりするため、口座を開設する金融機関はよく検討して選んでほしい。一方、通常の証券口座ならいくつでも開設できる。口座を開設しなければ使えないサービスがあったり、使い勝手を確認できなかったりするため、気になる金融機関があればまず証券口座開設して、そこでNISA口座も開設するかどうかを検討するとよいだろう。

執筆・國村功志(資産形成FP)
大手証券会社で株式・債券・投資信託などの金融商品販売に携わる。その後、ファイナンシャルプランナーの養成団体やFP事務所を経て、現在は資産形成FPとして活動。個人の資産運用経験も活かし、金融機関や一般の人向けに毎月セミナーも行っている。CFP®️、証券外務員一種

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