インフォマート(2492)は、企業間(BtoB)電子商取引の運営会社だ。企業間で交わされる受発注や請求書、契約書などで約50万社が活用しており、2019年の年間流通金額は11兆2690億円と国内最大級を誇る。2019年12月期は、利用者の拡大が寄与して業績過去最高を更新。デジタル化促進の波を受け、中期的には売上高100億円、営業利益率30%超を狙う。
企業間のやりとりを電子化
年間流通金額は11兆円超
商談・見積り・受発注・請求・支払/入金といった企業間取引の工程は、これまで対面や電話、FAX、郵便などで行われてきた。しかし、「対面だと都合がつきにくい」、「電話だと証拠が残らない」、「FAXだと送信エラーやミスが起こりがち」、「郵便では時間がかかる」などデメリットも多く、非効率になりがち。同社ではこれらを解消する手段として企業間取引を電子上で行う「BtoBプラットフォーム(以下PF)」を提供している。
前期業績は、売上高が前期比11.8%増の85億円、営業利益が同4.9%増の24億円。セグメント別の売上高は、「B toB─PF FOOD」事業(以下FOOD事業)が8割を占めた。
同事業のターゲットは飲食業界。外食チェーンやホテルといった「買い手」と、食品卸業者や食品生産者などの「売り手」を繋ぐビジネスモデルで、主に2つのサービスを展開する。
1つ目は、PF上で買い手が売り手に食品発注できる「BtoBプラットフォーム 受発注」。PCやスマホなどから使用できるため、買い手は場所や時間を選ばず発注可能なのが特徴だ。履歴の保存やレシピ情報の一括管理、原価率の算出など、様々な活用方法がある。
「利用企業数は約4万社。年間流通金額は1・8兆円に上ります。外食産業の市場規模は約24兆円といわれますが、その3割が食材だとすると、単純計算で7兆円。つまり、日本の外食産業で使われている食材の2~3割が当社のPF上で売買されていることになります」(長尾收社長)
2つ目が、「BtoBプラットフォーム 規格書」。同PFでは、農林水産省が決めた標準商品規格書に沿って130万食品以上の成分やアレルギー、原産地などを管理。買い手と売り手は食品検索や規格書共有、取引先マッチングなどができ、1万社弱が利用している。
飲食業界以外にも商圏拡大
請求書サービス利用は47万社
一方で、売上高に占める割合は2割程度なものの、前期比26%と急成長しているのが「BtoB─PF ES」事業(以下ES事業)。同事業の特徴は、飲食業界以外でも利用が可能なこと。同社の祖業は飲食業界向けのPFだが、2010年代から他業種向けPFも複数展開。特に成長著しいのが、企業間の請求書を電子化する「BtoBプラットフォーム 請求書」だ。
同PFの特徴は、大量の請求書を自動で作成・発行できる点にある。社内承認や発行、振込状況の確認、未入金の催促なども一元管理するため、業務時間が最大9割削減できるという。また、請求書は電子保管が可能。このため、検索の簡略化や紛失リスク回避も期待できる。
実はこの電子請求書分野、Sansanやマネーフォワード、freeeなど様々な企業が参入するレッドオーシャン状態。だが、インフォマートの請求書PFは利用企業が47万社以上、年間流通金額は国内最大級を誇る。シェアトップを獲った理由のひとつが、きめ細かい営業活動だ。
「請求書の発行元が当社PFを導入しても、受取先が同PFのIDを持っていないと受け取ることはできません。そこで、当社はユーザーから取引先リストをいただき、当社PFの説明会を開くなどの営業活動を行っています。地道な営業活動のおかげか、最近はリストをいただいてもその7~8割が既にIDを持っている、ということも多いですね」(同氏)
BtoBプラットフォーム 契約書
問い合わせ数が6倍に急増
今期業績は、売上高は前期比1.5%増の86億円を予想。だが、営業利益は同5割減の11億円を見込んでいる。「7月末に今期業績の下方修正を発表しました。当社売上高の95%はストック型収益ですが、FOOD事業では一部食材流通量に比例する。このため、飲食店の発注数が減れば、必然的に当社の売上高にも影響します」(同氏)
利益幅減少の主因は、ES事業の販促強化。今期は、同事業で「思い切った攻め」(同氏)をすべく、前々から広告掲載やイベント出展、代理店による地方開拓などを計画していた。だが、コロナ禍ではイベント活動が停滞。また、代理店も一時活動停止となった。
だが、中期的には追い風も。テレワークや脱ハンコの浸透を受け、電子書類の需要が急増。特に、契約書の締結・管理が電子上で行える「BtoBプラットフォーム 契約書」は、問い合わせ数が去年の6倍に跳ね上がったという。「書類にハンコを押す必要がなくなれば、テレワークで稟議にかけることができます。今も当社PFの需要は明らかに増えていますが、コロナ禍が落ち着けばさらに上向くのでは」(同氏)
同社の中期目標は、売上高100億円、営業利益率30%超。同目標達成には、ES事業の成長が不可欠と長尾社長は話す。
「請求書の利用企業47万社のうち、40数万社は無料会員です。しかし、利用者が増えれば有償ユーザーも自然と増えるビジネスモデルであるため、今はとにかく利用者を増やす時期だと考えています。将来的には、ESの売上比率がFOODを超えることも視野に入れています」(同氏)(提供=青潮出版株式会社)