このたび、不動産流通システム(REDS)のイメージキャラクターにお笑いコンビ「パックンマックン」メンバーでパックンこの愛称で知られるパトリック・ハーランさんを起用させていただきました。これを記念し、パックンとREDS代表の深谷十三で行った記念対談の4回目をお届けします。
宅建士資格のない営業マンがレインズ情報で客を釣るな
深谷:不動産取引の仕事をするときには「宅地建物取引士(宅建士)」という資格が必要です。この資格、本来なら全員が持っているべき資格なのですが、不動産会社の営業担当者のうち5人に1人宅建士がいればよしとされています。
おかしいのは、この資格を持っていない4人の人たちもレインズを閲覧することができることですよ。彼らは不動産会社の営業の人間だからということで特別に、一般には公開されていないレインズを見ることができます。
レインズなんか、隠しておくほどのものではないんですよ、実際は。しかし、「お客様がたはレインズにアクセスできないでしょ。われわれがレインズを見て、いい情報を差しあげますから、不動産業者に任せておきなさいよ」という姿勢で対応できる。まさに「情報の非対称性」というべき状況ですが、そうやっている限り、自分たちの地位の保全ができると考えているのではないでしょうか。
しかし、レインズが一般開放された瞬間に、彼らの足場は崩れてしまいます。先ほど話した両手仲介というそもそもが利益相反している商慣習も、はっきり禁止と法律で決めたほうがいいですね。
仲介手数料が法律で上限設定されると、こんなにおかしい
深谷:あともうひとつあるんですよ。先ほどアメリカでだいたい6%ぐらいだという仲介手数料の問題です。報酬というのはそもそも、ある程度は自由な競争の中で成り立ったところにあるべきだと思うんですよね。
あんまり高い報酬を求めていても質が伴わなければこれは成立しませんし、逆に報酬がいくら安くても、中身が伴ってないとお話にならない。
ところが日本の不動産仲介手数料は、宅建業法で「3%+6万円+消費税」が上限と決まっています。そしてほとんどの業者が当たり前のように上限額を客に請求するわけです。そこにも問題はあるのですが、まず上限設定を撤廃してほしいのです。
10億円の物件でも、1億円の物件でも、1,000万円の物件であっても「3%+6万円」です。でも、やることはほとんど一緒なんですよ。10億円の物件だったら「3%+6万」(3,006万円)は取り過ぎのように思うし、1,000万円の物件だったら36万円ですから、われわれからすると報酬額の割に手間に感じる。
こういうふうに法律でガチガチに決めているもんだから、「1,000万円くらいの物件を扱っていたら手数料が少なくて採算が合わないから、何とか無理やり儲けてやろう」ということになって、両手仲介や囲い込みにつながっていくという背景もあるんですね。
まとめると、私はレインズの一般開放、両手仲介の禁止、仲介手数料の自由化を思い切ってやるべきだと思うんですよ。そうすると、消費者のみなさんにとって本当にわかりやすくて、サービスの行き届いた不動産の取り扱いの仕組みが達成できるような気がするんですよね。
日本に「不動産ビッグバン」はいまだ来たらず
パックン:「金融ビッグバン」は20世紀末にあったんですけど、不動産ビッグバンはまだ来てないんですね。
深谷:パックンの声で「ビックバーン」とやってください。
パックン:ビッグバーン!(笑) おっしゃるとおり、規制緩和が効率化を生んで最終的には消費者のためになるわけです。売り手のためにも買い手のためにもなる。仲介が儲かるのは、もちろん大事ですよ。でも、それが取引の妨害になっているのなら、もう元も子もないんですよね。
深谷:ただ難しいのが、アメリカと違って日本人は家を売ったり買ったりは一生に1回でしょう。そうすると、家を買う行為は身近なことじゃないんですよね。ですから、不動産取引の仕組みを変えようというエネルギーや勢いが増していかないんです。
でも、インターネットで情報が開かれたおかげで、だいぶいいところまできました。今日こういうふうにパックンと話させていただいたことも、いろんな人に情報提供することができれば、少しずつエネルギーに変わっていくと思うんですよね。
パックン:素晴らしい。せっかく菅義偉総理がいろんな改革を呼びかけているところですから、ここにも目をつけていただきたいですね。
日本の不動産サービスでアメリカに勝るところとは?
パックン:一方、日本の不動産取引でアメリカより優れているところはあるでしょうか。
深谷:アフターサービスのよさを挙げさせてください。これは不動産取引の仕組みではなくて、日本のビジネスにおける人と人の関係性になるのかもしれません。
アメリカでは売り手側のエージェントは売ってしまえばそれっきりになることがふつうのようですね。契約書をちゃんと読んで、どういう家であるかをちゃんと理解して買っているはずだから、あとになって不具合が見つかってもそれは自己責任ですというような。
これに対し日本の場合は、取引が終わった後でも常に「大丈夫ですか?」と聞いてくれる良心的な担当者が多いんですよ。もちろん、REDSではどのエージェントも、家を買っていただいたお客様と関係を続けていて、いろんな相談に乗っています。
売りっぱなしではなく、アフターサービスを無料で行う。ここがアメリカに勝る日本のいいところかなと思いますが、いかがですか。
パックン:ビジネスは人間関係だけに頼るのではなく、システムで進めるべきだというのがアメリカ人の感覚です。でも、人間同士の関係性を重視することにもよい面があるんですね。一度できた縁は大事にするという日本人の美徳はたしかに素晴らしい。
僕も家を買ったときに、仲介してくれた業者さんが困りごとに対処してくれました。その点、アメリカはドライすぎる面もあるかなと思いますね。
深谷:「このマニュアルやこの契約書に必要事項はぜんぶ書いていますので、確認して自己責任でお願いします」ではなくて、逆に担当営業マンに対して「あなたを信頼してあなたにお任せします。あなたがいいって言うんだったら買いますよ」っていう人は日本人にはまだまだ多いんですよ。今後も多いと思うし、高額物件を買う人にこそ、こういう考えの人は多いように思います。
営業マンに全幅の信頼を置いて、高額の取引をして取引をしてくれるわけです。そう考えると、不動産取引の営業マンが不動産についての基礎資格を持たない人が5人のうち4人いることはどうかと思うわけです。やはり、全員が宅建士の資格を持っている必要があると思うんです。