日本政府が行っている「エネルギー基本計画」は、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。しかし2018年に発表された「第5次エネルギー基本計画」は、私たちが今後の生活で使うエネルギーを見通すうえで大変参考になるものです。本記事では、日本のエネルギー基本計画の概要や現状と課題について解説します。将来の備えをするためにもぜひ理解しておきましょう。

エネルギー基本計画とは

第5次エネルギー基本計画とは 日本の現状と課題
(画像=guy/stock.adobe.com)

エネルギー基本計画は、国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示すために政府が定めたものです。2018年7月に公表された「第5次エネルギー基本計画」では、世界のエネルギー情勢も考慮しながら2030年、2050年と区切りのタイミングを設定し、将来の日本のエネルギーが進むべき方向を伝えています。現代の世界のエネルギー情勢は、地球温暖化対策のための脱炭素化が活発です。

また技術開発競争も激化しています。さらにエネルギー資源確保においても国や企業間の競争が熾烈を極めている状態です。こうした状況は、海外にエネルギー資源を依存する日本にとって影響が大きく、エネルギー基本計画に反映させることが急務であったと考えられます。

より高度な3E+Sへ

日本のエネルギー政策では、従来次の「3つのE」と「1つのS」を満たすことが求められてきました。

・安定供給(Energy Security)
・経済効率(Economic Efficiency)
・環境適合(Environment)
・安全性(Safety)

しかし、第5次エネルギー基本計画では日本や世界の現状を踏まえ、より高度な「3E+S」を目指すとしてそれぞれに新たな目標が設定されました。

・安定供給+技術自給率とエネルギー選択肢の多様性確保
・経済効率+日本の産業競争力強化へつなげる
・環境適合+脱炭素化への挑戦
・安全性+安全の革新を図る

これらの目標を一つのエネルギー源で満たすのは難しいため、さまざまなエネルギー源を組み合わせたいわゆるエネルギーミックスで新たな3E+Sを目指すことが必要です。そこで第5次エネルギー基本計画では、2030年と2050年を区切りとした目標達成への指針を示しています。

2030年へ向けた対応

まず2030年へ向けた大きな目標として、温室効果ガス26%削減とエネルギーミックスの確実な実現が掲げられています。そのうえで取り組むべき施策の中から5つを紹介します。

1. 再生可能エネルギー
2030年に目指すエネルギーミックスにおいて再生可能エネルギーの構成比率は22~24%です。また再生可能エネルギーを主力の電源としていくため、低コスト化や発生した電力を電力系統に流す際の系統制約克服、不安定な電力供給の調整力確保などに取り組むとしています。

2. 原子力
原子力発電への依存度を可能な限り低減し、2030年にはエネルギーミックスにおける原子力の構成比率を20~22%にするとしています。安全を最優先にした再稼働や使用済み燃料の対策などを着実に進めることも課題です。

3. 化石燃料
2030年に目指すエネルギーミックスにおいて、石油や石炭、天然ガスなど化石燃料由来の構成比率は56%です。日本企業による化石燃料の自主開発を促進し、さらに高効率火力発電の有効活用にも取り組んでいきます。また災害発生時のリスク対応強化も図るとしています。

4. 省エネルギー
2030年には、省エネルギー対策によって現在のエネルギー効率を35%減にするのが目標です。2018年に成立した改正省エネ法やその他の支援策をさらに推進し、徹底した省エネ施策を継続していきます。

2050年に向けた対応

2050年の主な目標は、温室効果ガス80%削減へ向けてエネルギー転換を測り、脱炭素化への挑戦を推し進めることです。そのための主な方針を以下の4つの分野で示しています。

1. 再生可能エネルギー
再生可能エネルギーそれぞれが経済的に自立し、脱炭素化した時代の主力電源になることが目標です。

2. 原子力
原子力は、2021年現在の日本で実用段階にある脱炭素化に向けた選択肢の一つです。しかしまずは社会的信頼の回復が不可欠としています。人材や技術産業基盤の強化をしながら、安全で経済的で機能性に優れた原子炉を追求していきます。また廃棄物の処分や原子炉の廃炉といった課題に対する技術開発も必要です。

3. 化石燃料
化石燃料は、エネルギー転換の過渡期で主力のエネルギー源として必要なため、資源外交は強化していく計画です。しかしよりクリーンなガス利用に移行し、非効率な石炭火力発電はフェードアウトさせるとしています。あわせて脱炭素化に向けて新たなエネルギーの開発にも着手していく計画です。

4. その他
水素や蓄電池などさまざまな分野の技術革新を推し進めることで、さらなる省エネ化と脱炭素化を実現していく方向です。また分散型エネルギーシステムの構築を支援し、それによる地域の再開発も推進するとしています。

計画実現には総力戦が必要

第5次エネルギー基本計画において中長期的なエネルギー政策は、政府が主導するだけでなく民間企業なども含めた「すべての力を注ぐ総力戦が必要」と訴えています。たしかに日本経済のより一層の発展や脱炭素化、さらに持続的な世界実現への貢献といった大きな目標達成のためには、官民がしっかりと連携した力が必要です。

計画を実現すべく政府は、エネルギー転換や脱炭素化に向けた官民協調の開発プロジェクトを立ち上げ、国内外の投資を促す見込みとなっています。さらに国際的な協力体制を築くため、脱炭素化技術による海外貢献を行いエネルギー転換の国際連携ネットワーク形成も表明。今後は、政府だけでなく「民間や海外をどこまで巻き込んで計画を進めていけるか」が計画実現のカギとなりそうです。

日本の現状と課題

第5次エネルギー基本計画の中で日本のエネルギー事情の現状と取り組むべき課題について4つのポイントが示されています。

エネルギー資源の海外依存

日本は、かねてからエネルギー資源の海外依存が高く、海外で問題が起きたときに影響を受けやすい弱さが危惧されてきました。これは、エネルギー消費を抑えるだけで解決できるものではなく、中核エネルギーである石油からの転換を実現し、エネルギーミックスによるリスク分散を進めなければなりません。日本のエネルギー自給率は、東日本大震災前の2010年は20%程度でした。

しかし震災後に原子力発電所の停止などの影響があり、2016年には自給率が8%程度に落ち込んでいます。そのため「根本的なエネルギー資源の安定供給」という目標には、まだ道のりが遠いのが現状です。

エネルギー需要構造の変化

日本の人口減少は顕著となっているため、今後エネルギー需要が低下することが確実視されています。また自動車の燃費向上や家電の省エネ化、製造業の使用エネルギー減少など、使うエネルギーを減らす流れは今後も加速していくでしょう。他にも水素やガスなどを効率的に利用する用途拡大の方向も進みつつあります。

こうした産業界の流れに加えて急速に進む高齢化による需要の変化や、AIをはじめとしたデジタル技術によるエネルギー需要構造の変革もありえます。そのため「今後起きうる需要構造の変化に柔軟に対応できるか」が大きな課題になるでしょう。

資源価格の不安定化

世界ではエネルギー需要の中心が先進国から新興国へ移ってきており、世界の需要規模も大幅に増加していく見込みです。特に中国やインドなどの新興国は、国を挙げて資源開発や調達を進めているため、激しいエネルギー資源の争奪戦が各地で起きています。また米国が原油や天然ガスの生産量で世界第1位になったことでエネルギー資源の価格が急落しました。

その後OPEC(石油輸出国機構)の減産合意などで再び価格が上昇するなど、エネルギー市場は非常に不安定です。国際政治や社会情勢によってエネルギー価格が乱高下する現状は、日本のエネルギー資源安定供給という目標の大きな障壁となっています。

温室効果ガス排出削減への取り組み

気候変動を抑えるためには、世界で排出される温室効果ガスの削減が急務です。パリ協定や持続可能な開発目標のSDGsにおける13番目の目標「気候変動に具体的な対策」などに、各国が真剣に取り組む必要があります。日本でもCO2排出削減や化石燃料の依存を引き下げるといった施策に今まで以上に積極的に取り組んでいくことが必要です。

脱炭素化へ向け再生エネルギーが拡大

第5次エネルギー基本計画では、エネルギーが持つべき「3E+S」に時代と世界の状況を考慮した新たな目標が加えられています。2030年、2050年までに取り組む対策も示されており、今後の日本のエネルギーが進むべき重要な指針です。特に温室効果ガス削減と脱炭素化社会へ向けた動きがさらに加速することは明らかでしょう。

太陽光発電をはじめとした再生エネルギーがさらに拡大していくことは確実といえるのではないでしょうか。(提供:Renergy Online


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