2019年に話題となった「老後2000万円問題」や、コロナ禍による在宅勤務増加に伴う可処分時間の増加により、資産運用に注目が集まっている。
資産運用の有力な選択肢の一つである株式投資を行うためには、まず証券会社に口座を開設する必要がある。商品のラインナップや手数料など証券会社を選ぶ基準は多岐にわたるため、投資初心者のなかには「どの証券会社を選べば良いかわからない」という人も多いのではないだろうか。
この記事では、投資初心者が口座開設をする際に注目したいポイントについて説明する。また、スムーズな口座開設につながるように、口座開設の仕方についても確認していこう。
株式投資を始める前に理解しておくべきこと
投資初心者が、証券口座を開設し、すぐに購入する株式を物色するというのはあまりおすすめできる方法ではない。投資を始める前には「方針」を決めておく必要があるからだ。
株式に限らず、すべての投資にはリスクがつきものである。自分が、株式への投資を通じて、何を実現したいのかによって許容できるリスクも変わってくるからだ。
「老後に向けて20年かけて2000万円の資金を用意したい」という方針ならば、初期投資額にもよるが、それほど大きなリスクをとらなくてもよい場合が多いだろう。一方で「余裕資金を出来る限り増やしたい」という方針を取るならば、IPO投資などに積極的に取り組んでみるといった選択肢も出てくる。
実際に取引を始める前に自身の「投資の方針」を明確にした方がよいだろう。
ネット証券の口座開設に必要なもの
証券会社で口座を開設する際には、本人確認書類の提出およびマイナンバーの提示が必要だ。本人確認書類には、一般的に次のような書類が利用できる。
・運転免許証
・住民票
・健康保険証
・年金手帳
・個人番号通知カード(顔写真なし)
・パスポート、など
ネット証券では、口座開設をオンラインで行うため、「提出する本人確認書類に顔写真があるかないか」でいくつかの書類を組み合わせて提出することになる。一例を挙げると、次のようなイメージだ。
例1:マイナンバーカード(顔写真のあるもの)
例2:個人番号通知カード(顔写真なし)+運転免許証
例3:個人番号通知カード(顔写真なし)+住民票+年金手帳
こちらは、証券会社によって詳細が異なるため、必ず開設を希望するネット証券会社のホームページで確認すべきだろう。
ネット証券の口座開設手順
ネット証券会社にもよっても異なりますが、一般的に口座開設には以下の3つの方法がある。
1.申込書類のやり取りを郵送で行う方法
2.ホームページ上の口座開設申し込みフォーマットに必要事項を入力、提出書類をアップロードする方法
3.2に加えて顔認証する方法
それぞれに手順が少しずつ異なるため、一つずつ確認していく。
【郵送での口座開設の 一般的な流れ】
内容 | 日の目安 | |
ステップ1 | Webサイト内の「口座開設」画面から「郵送での口座開設」を選択し、申込書類を取り寄せ申請 | 当日 |
ステップ2 | 口座開設情報の入力・送信 | |
ステップ3 | 申込書を郵送で受け取る | 1~2日程度 |
ステップ4 | 送られてきた申込書類に記入および署名のうえ、本人確認書類・マイナンバー確認書類など必要書類と一緒に返送する | 1~2日程度 |
ステップ5 | 証券会社が審査。問題なければ、口座開設のお知らせ(ログインID・パスワードなど)が郵便で届く | 1~2日程度 |
ステップ6 | 証券会社の個人専用ページにログインし、取引開始 | - |
ネット証券でも、証券会社によっては口座開設手続きを郵送で行うことができる。ネット上でマイナンバーなど、個人情報を送ることに抵抗がある人は郵送で行うことも検討するとよいだろう。
しかし、郵送の場合はどうしてもやり取りだけで何日もかかってしまい、実際に株式取引を行えるようになるまで時間がかかる点はデメリットだ。
次に、オンラインでの口座開設の手順を見ていこう。
【オンラインでの口座開設の一般的な流れ】
内容 | 日の目安 | |
ステップ1 | Webサイト内の「口座開設」画面から「オンラインでの口座開設」を選択 | 当日 |
ステップ2 | 口座開設情報の入力・送信 | |
ステップ3 | 本人確認書類・マイナンバー確認書類など必要書類をアップロードする | |
ステップ4 | 証券会社が審査。問題なければ、口座開設のお知らせ(ログインID・パスワードなど)が郵便で届く | 1~2日程度 |
ステップ5 | 証券会社の個人専用ページにログインし、取引開始 | - |
すべてネット上で口座開設申し込み手続きができる証券会社を選択した場合は、取引できるまでの時間を短くすることができる。申込者情報の入力や必要書類の送信など、申し込み手続き自体は、当日中に終えることもできるため、時間がかからない。証券会社から郵送されたログインIDやパスポートなどを受け取ることができれば、取引を開始することができる。
オンラインでの口座開設の場合、書類を郵送することで住所や本人確認を行っている証券会社も少なくない。しかし、最近ではオンラインでの申し込み時に本人の顔認証を行うことで本人確認を完了させる証券会社も出てきている。このような証券会社を利用すれば、申し込みから取引開始までの期間をより短縮することができるだろう。申し込み手順は次の通りだ。
【オンラインでの口座開設(顔認証)の一般的な流れ】
内容 | 日の目安 | |
ステップ1 | Webサイト内の「口座開設」画面から「オンラインでの口座開設」を選択 | 当日 |
ステップ2 | 口座開設情報の入力・送信 | |
ステップ3 | 顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、または運転免許証+個人番号通知カード)、およびスマホなどで撮影した本人の顔写真をアップロードする | |
ステップ4 | 証券会社が審査。問題なければ、口座開設のお知らせ(ログインID・パスワードなど)がメールで届く | 証券会社により 当日~2日程度 |
ステップ5 | 証券会社の個人専用ページにログインし、取引開始 | - |
一般的なオンライン手続きと、顔認証による手続きの違いは、マイナンバーや本人確認書類をネット上で送信する際に、スマホなどで撮影した本人の顔写真を一緒に送ることだ。こうすることで、証券会社による本人確認か完了すれば、ログインIDやパスワードなどがメールで届き、その後すぐに取引を開始することができる。
ネット証券の口座開設にかかる最短時間は?
3つの口座開設の手順を解説してきたが、郵送での申し込み以外は、基本的に当日口座開設手続きが完了する。しかし、「口座開設までの日数と取引開始できるようになるまでの日数は別」ということには注意が必要だ。
口座開設が完了しても、証券会社から送られてくるログインIDやパスワードが届かなければ、サイトへログインできないため株式を購入することはできない。主な証券会社のうち、口座開設を申し込んでから実際に取引を開始できるまでの期間が比較的短い証券会社を以下にまとめた。
取引開始までの 最短日数 |
証券会社名 | 公式サイト |
即日 | DMM.com証券 | 公式サイト |
野村證券 (ICカードリーダライタでマイナンバーを読み取り手続きする場合) |
公式サイト | |
翌営業日 (2営業日) |
大和証券 (インターネットかんたん申し込みの場合) |
公式サイト |
GMOクリック証券 | 公式サイト | |
マネックス証券 | 公式サイト | |
楽天証券 | 公式サイト | |
SMBC日興証券 (ダイレクトコース・ネットで口座開設の場合) |
公式サイト | |
4営業日 | LINE証券 | 公式サイト |
表中には、主なネット証券に加え、総合証券会社のオンライン取引できるコースも含めている。例えば、野村證券のようにオンライン手続きの際にICカードリーダライタでマイナンバーを読み取って手続きすれば当日に口座開設完了メールが届き、取引開始することが可能な場合もある。
ICカードリーダライタを所有していない人の場合は、全体的にネット証券のほうが早く取引を開始できるだろう。
ネット証券での口座開設がおすすめな5つの理由
証券会社には大きく分けて、店舗を構えて営業している「総合証券会社 」と、オンライン専業の「ネット証券会社 」がある。総合証券は、窓口や電話で担当者が取引の相談に乗ってくれたり、アドバイスをしてくれたりしながら注文を出すのが一般的だ。ネット証券は、口座開設から売買取引までのすべてを自分自身がオンライン上で行う。
どちらがいいかは、投資の目的や投資資金、売買の回数など、投資スタイルや投資家の考え方によって異なる。証券口座を開設するのが初めての人は、ネット証券を不安に感じるかもしれない。そこで、ここではネット証券をおすすめする主な理由を確認していこう。
オンラインで口座開設が可能
店舗窓口では、初心者でも経験者でも丁寧に対応してくれる。しかし、投資初心者にとっては証券会社の窓口を訪れるのは勇気がいることかもしれない。オンラインで口座開設ができれば、このようなストレスを感じることもないだろう。
また、ネット環境が整っていれば、パソコンやスマホからいつでもどこからでも口座開設手続きができるため、店舗の営業時間を気にする必要もない。
オンラインで取引が完結できる
株式を売買する方法には、店舗窓口で行う以外に証券会社に電話したりオンラインで注文したりする方法がある。しかし、ネット証券は購入も売却もオンラインで完結させることが可能だ。つまり、口座開設と同様にネット環境が整っていれば、いつでもどこからでもスマホやパソコンを使って売買取引が完結できる。
仕事で忙しかったり店舗へ行く時間がなかったりする人にとっては、大きなメリットといえるだろう。
取引手数料が安い
株式取引では、「買うとき」「売るとき」のどちらでも基本的に手数料がかかる。少しでも多くの利益を得るためには、「手数料が安い」ということは大切なポイントだ。手数料は、各証券会社で異なるが、一般的には店舗で対面取引をするタイプの証券会社に比べて、ネット証券のほうが低く設定されている。
対面取引の場合と、主なネット証券の手数料がどのくらい違うのか、以下の表で確認してみよう。
対面取引では、担当者が相談に乗ってくれたり、アドバイスをしてくれたりする分、手数料も高めに設定されている。しかし、近年は店舗型の総合証券会社でも、オンラインですべての取引を完結できるコースを設けている場合が多くなってる。その場合は、対面よりも低めの手数料を設定しているため、選択肢の一つとして押さえておくとよいだろう。
なお、多くの証券会社(ネット証券含む)は「1回取引をするごとに手数料がかかるプラン」だけでなく、1日当たりの取引額で手数料が決まる「1日定額プラン」も提供している。
取引ツールが充実
株式投資は、情報収集がカギといっても過言ではない。担当者が相談に乗ってくれる総合証券と異なり、ネット証券の場合は銘柄選びや売買のタイミング判断、実行などのすべてを投資家自身が行うことが必要だ。
そのため、ネット証券では、個人投資家が投資判断をするために重要となる「アナリストのレポート」「市況ニュースなどの情報」「売買などの取引を円滑に行えるツール」を充実させている。
また、ネット証券は投資初心者の利用も多いため、「わかりやすい説明」「使いやすいツール」「株主優待」などの情報も数多く提供してくれる傾向がある。
自分のペースで取引できる
はじめての投資では、少額からスタートするのがリスクを抑えるための基本だ。現在では単元未満株やポイント投資もあるが、本格的な取引を考えた場合、株式の取引は単元(1単元=100株)ごとになるだろう。
「自分の予算で購入できる銘柄」「これから成長していきそうな銘柄」を探すのは、思った以上に時間が必要だ。その点、ネット証券は銘柄選びも購入判断も「自分のペース」でじっくり考えて行うことができる点はメリットといえるだろう。
ネット証券の口座は複数開設できる?
いくつかの証券会社を比較してみると、「A社も良いけど、B社も良さそう……」と迷う人もいるかもしれない。そのような場合には、複数の会社に口座を開設するのもおすすめだ。証券会社の証券取引口座は1社に絞る必要はなく、複数の会社で開設しても問題ない。
ネット証券の場合、証券口座の開設や口座維持手数料など口座を保有することで費用はかからない傾向にある。また、口座があったとしても必ず株式の購入をする必要はない。いくつかの会社に口座を開いておき、実際にログインして判断するという選択肢もある。
「説明のわかりやすさ」「取引画面の使いやすさ」「投資に関する情報の充実度」といった観点から体感しながら、自分に適する証券会社を見つけるとよいだろう。
ネット証券の口座を複数開設する6つのメリット
複数の会社で口座開設するメリットは、主に以下の6つだ。
さまざまなサービスが受けられる
証券会社が顧客に提供しているサービスは、会社ごとに異なる。例えば、通常ならお金のかかる会社四季報や日経新聞を無料で閲覧できたり、取引 に応じてポイントが付与されたりするなど、さまざまだ。複数の会社に口座を開設することで、受けられるサービスの幅が広がるだろう。
有益な情報が手に入りやすい
証券会社が自社の顧客向けに提供している情報は、さまざまだ。例えば、アナリストによるレポートも会社ごとに視点や切り口が違っていることもある。複数の会社を利用すれば、情報量も質も高くなり自分にとって有益な情報が入りやすくなるだろう。
証券会社を比較して取引を進められる
どの証券会社も手数料やサービス内容をはじめ、それぞれに独自の特長がある。しかし、投資スタイルによっては合う・合わないがあるものだ。さまざまなサービスを比較したり体験したりしながら複数の会社を使い分けるのもよいだろう。
IPOの当選確率が高くなる
IPOとは「新規株式公開」という意味で、未上場の会社が株式を公開し、証券取引所に上場して売買できるようにすることだ。IPOでは、前もって公開される「公募価格」よりも高い初値がつくことが多く、値上がり益が期待できるため、投資家からも注目を集めている。
しかし、IPO株は申し込みをして抽選に当たった人だけ購入できる仕組みとなっている。そのため、複数の証券会社で申し込みをしておけば、当選確率アップも期待できるだろう。ただし、重複申し込みを禁止している場合もありますので確認が必要だ。
証券口座名 | IPO実績 | IPO抽選方法 | ||
---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | ||
1位 詳細はこちら |
86社 | 84社 | 38社 | 完全抽選 70% チャレンジP 30% 店頭配分あり |
2位 詳細はこちら |
66社 | 61社 | 22社 | 店頭90% ネット10% 完全平等抽選 (※) |
3位 詳細はこちら |
50社 | 45社 | 24社 | 100%完全平等抽選 |
詳細はこちら |
47社 | 37社 | 16社 | 100%完全平等抽選 |
詳細はこちら |
11社 | 26社 | 13社 | 100%完全抽選 |
詳細はこちら |
23社 | 24社 | 9社 | システムでの平等抽選 |
詳細はこちら |
9社 | 21社 | 3社 | 70%完全抽選 |
詳細はこちら |
1社 | 0社 | 1社 | 100%完全平等抽選 |
システムトラブルに対応できる
オンラインで取引できるのがネット証券の強みだが、システムトラブルが発生し、ログインや売買などの取引ができなくなるリスクもある。複数の会社で口座を持っていれば、1社でシステムトラブルが発生しても、別の会社で取引をすることも可能となる。
株主優待を多く受けられる
例えば、配偶者や子どもなどの口座も複数の証券会社に開設することで、株主優待を多く受けられることがある。株主優待を受けるための必要株数は、銘柄ごとに異なるが、例えば100株以上で株主優待を受けられる企業の場合、異なる証券会社で同一銘柄を100株ずつ保有しても受けられる株主優待は一つだけだ。
しかし、家族2人でそれぞれに100株ずつ優待銘柄を保有していた場合、家族で受けられる株主優待は2つになる。なぜなら、株主優待の権利は証券会社単位ではなく、株主名簿によって決められるからだ。ネット証券を利用する場合は、家族も含めて複数の証券会社に口座を開設することも方法の一つといえるだろう。
株式投資を始めるデメリット
株式投資はしっかりと勉強し、成長する株を見つけられれば儲けることが可能である。しかし、株式投資にはリスクが伴い、最悪財産を失うリスクも存在する。
株式投資に関する知識を身につけて投資をすることをおすすめする。
自分にあった口座を選んで取引を
証券会社を選ぶポイントとして「手数料」「口座開設手続きのしやすさ」「取引開始までの期間」などについて見てきた。何より大切なのは、自分の投資スタイルに合う証券会社で口座を開設することだ。
しかし投資初心者の場合は、「自分がどのような取引をしたいのか、自分の投資スタイルをイメージできていない」という人も多いかもしれない。その場合は、まず手数料を抑えることを念頭に置きながら選択肢を絞ってみるとよいだろう。
買った株が「どのように動くか」「どの程度の頻度で売買することになるのか」はやってみなければわからない部分もある。しかし、売買の手数料を抑えることは自分自身でもコントロール可能だ。
そのうえで、リスクも含めて投資についてわかりやすく説明してくれている会社や、使い勝手のいい会社を選ぶとよいだろう。まずは、複数のネット証券で口座を開き、さまざまなツールを試しながら自分に合う証券会社を選ぶべきだろう。