21年のGDPは6.5%成長を上回る可能性も
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21年のGDPは6.5%成長を上回る可能性も

三井住友銀行 チーフ・マーケット・エコノミスト / 森谷 亨
週刊金融財政事情 2021年3月22日号

 米国経済の今年の見通しは、昨年末からの2カ月ほどの間に生じた情勢変化を受けて、様変わりした。経済協力開発機構(OECD)の昨年12月の経済見通しでは、2021年の米国の実質GDP成長率を前年比3.2%増と見込んでいたが、3月9日に6.5%増と大幅に上方修正している。

 情勢変化の理由の第一は、新型コロナを巡る環境だ。昨年12月下旬から始まった米国のワクチン接種は、徐々にそのペースを上げ、3月10日現在、人口の2割弱が少なくとも1回の接種を受けた計算となっている。集団免疫獲得に必要とされる「人口7~8割の接種」には夏場にも到達するとの見方が出始めている。

 第二は、大規模な政府支援の継続が決定されたことだ。まず、昨年末に期限切れを迎えるはずだった家計向け一時金が、0.9兆ドル規模の対策法の成立(昨年12月27日)によって追加的に給付されることとなった。その後、今年1月5日のジョージア州の連邦上院決戦投票の結果を受けて上下両院での民主党優位が確定し、1.9兆ドルの大型経済対策がさらに上乗せされる運びとなった(図表)。昨年末の0.9兆ドルと合わせた2.8兆ドルは名目GDP比にして14%にも及ぶ。

 これらはとりわけ消費に莫大なインパクトをもたらしそうだ。そもそも家計部門の手元には、やはり大規模だった20年中の所得支援分が残っている。家計所得統計を見ると、同年中、政府からの移転所得の1.1兆ドル増に対し、貯蓄は1.6兆ドル増となっている。つまり、家計は政府からの移転所得分に加え、さらに0.5兆ドル分の支出を手控えて、貯蓄として積み上げている。直近の1.9兆ドル対策のうち家計支援分は1兆ドル程度ある。これが昨年中の貯蓄分に上乗せされて、経済活動正常化のタイミングを待つことになる。

 一方、企業部門も需要見通しの好転に伴う自律的な回復が期待できる。というのも、このところ製造業を中心に在庫不足が顕著となっているからだ。コロナ禍での財需要は予想外に好調だった。機械設備投資が急回復したほか、消費においては巣ごもり需要、在宅勤務関連需要、都市から郊外への移転に伴う需要など、さまざまな需要が顕在化し、むしろコロナ前のトレンドを上回って推移した。他方、供給サイドは、製造現場の活動制限や、国際的なサプライチェーンの混乱などもあって、これらに対応できていない。今後、企業部門の在庫積み増しの動きは加速するとみられる。

 このように見ると、米国の実質GDP成長率は、OECDの上方修正見通しですら、やや控え目かもしれないと構えておく必要がありそうだ。

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(提供:きんざいOnlineより)