特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。
株式会社アドキャストは、2006年に不動産コンサルティング業として創業。当初は4名ほどで事業を始めたが、不動産取引のリスク調査力と未公開情報の収集力で独自のサービスを展開。創業4年目からは支店展開を積極的に進め、現在では支店7店舗、グループ社員130名を超える企業へと成長した。住宅ローンのコンサルティングやライフプランニングも得意分野だが、顧客が本当に必要としている不動産情報の提供にこだわり、事業拡大を続けている。今年の4月には8店舗目となる新宿支店を開業予定と、コロナ禍でも事業を躍進させ続けているトップに話を聞いた。
(取材・執筆・構成=長田小猛)
1972年静岡県生まれ。
高校卒業後、地元静岡県で車のディーラーに就職。営業の基礎や顧客の開拓方法を学ぶ。20歳で上京して不動産の仲介売買に携わり、32歳でファイナンシャル事務所へ。34歳で独立し、アドキャストを立ち上げた。座右の銘は「ピンチを楽しむ」。困難な時だからこそ発想を変え、人より倍の努力をして成長を狙う。
売り切れるから早く買って下さいというビジネス業態を変えたい
――会社設立当初から、不動産コンサルティングを中心に事業を展開されています
当社の企業理念に、「不動産業界に新しいビジネスモデルを提案し不動産業界を健全化させ変革させる」というものがあります。我々は、不動産仲介会社=不動産コンサルティング会社だと考えています。不動産業界が当たり前のように行っている「売るだけの営業スタッフ」や「売るだけのテクニック」は顧客の利益を考えない一方的な経営スタイルであり、これを変えたい。 たとえばアメリカでは、公的な資格を持っていないと不動産は扱えません。反して日本は、5人に1人しか資格を持っていない。これでは業界は良くなりません。会社を作った理由の1つに、インターネットの普及による情報の逆流化があります。今までは業界の人間からお客様に流れていた情報が、インターネットの普及によってお客様も簡単に手に入れられるようになった。我々がお客様を超える情報を持っていなければ、不動産業界は変えられないと思ったのです。
だからこそ我々は社員教育や資格取得にこだわり、コンサルティングのできる不動産会社にこだわります。ホームページのスタッフ紹介を見ていただければ、ほとんどの社員が何らかの資格を持っていることがおわかりいただけると思います。
アドキャストは住宅購入からファイナンシャルプランニング、ライフプランまで、トータルにお客様をサポートします。個別の住宅ローン相談から不動産セミナーや購入セミナーも定期的に開催しています。城南・城西など、都内23区を中心とした住宅や土地の売買に強みを持っております。
――ホームページに通常の不動産仲介会社と貴社の違いが載っていました
【通常の仲介会社】
・いくら借りられるかで購入物件をすすめる。
・一番安い変動金利でローンの返済額を提示し、今の家賃と比べたがる。
【アドキャスト】
・将来、教育費がかさむ時期や、老後の生活がきちんと過ごせるか、ライフプランを立てて購入価格を検討する。
不動産業界で多くの会社が行っている「この物件価格ならお金も借りられるし、ローンの支払いは今の家賃よりも安くなるから、売り切れないうちに早く買って下さい!」という営業はしたくありません。我々はお客様から手数料をいただきます。そして当社の売上の9割は仲介手数料です。安くはない報酬を受けるのだから、我々はお客様にとって納得感のある仲介ビジネスをするべきなのです。
最近はお客様の生活様式も変わり、共働きのご夫婦が8割近くになっていると思います。またここ5年くらいでしょうか。マイナス金利政策になってから、弊社の考え方も少し変わりました。お二人に収入があるなら(夫婦が考えているよりも購入の余力があるなら)、もう少し良い不動産を買って老後資金としても考えていただきたい。そんなおすすめもするようにしています。高齢化社会と共稼ぎ化の加速、これにどう対応していくかが今後の経営課題です。不動産を買えるところに住むのではなく、より便利に、より価値のある場所に住みたいとなってくるでしょう。もう安いだけで不動産を選ぶ時代ではないのです。
顧客が本当に欲しい情報にこだわるビジネススタイル
――貴社の強みにはどのようなものがありますか?
「不動産取引のリスク開示能力」と「未公開情報の収集能力」ですね。不動産取引のリスクは、物件自体と購入される物件の周辺にも存在します。建物を調査するのはもちろんですが、「近所にどんな人が住んでいるのか」、「近隣で問題になっていることはないか」、「子どもが進学する小学校や中学校の評判は」、「電磁波や騒音などは問題ないか」、「その地域の災害リスク」など、一生に一度の買い物をするのに気になりませんか?これらすべてが不動産取引のリスクであり、弊社はこれを細かく調査します。宅建業法で定められている重要事項説明書に書かれていないようなことこそ、お伝えするべきことです。
未公開情報の収集能力も弊社の強みです。インターネットに載っていないような流通情報を収集し、物件の企画段階から情報を紹介できるようにします。たとえば相続物件などは、売れる状態になるまでにタイムラグがあります。短くて3ヵ月、平均して6ヵ月ほどは引き渡しまでにかかるのです。このような段階から我々は情報を収集し、お客様にご提供していきます。このようなスピード感を持った会社は他にないと思っています。
――コロナ禍は事業にどのような影響を及ぼしましたか?
実は不思議なほど影響がありません。業績は前年に比べて1.3倍ほど。昨年の4月は確かに前年の5割、5月は7割ほどでしたが、以降は好調です。リモートワークや在宅のストレスが増大しているせいか、お客様に物件の紹介を急かされている状況です。もちろんオンラインでの営業(動画やYouTube)は行っていますが、先日スイスからオンラインで来られたお客様が、2億円の物件をお買い上げになりました。お客様の方が私たちより進んでいます(笑)
――今後はどのように事業を発展させていきたいとお考えですか?
現状は不動産仲介業(アドキャスト単体)で23億ほどある売上を、30億まで持っていきたいですね。目標は不動産仲介業で都内No.1になること。建売のグループ会社もあるので、グループ全体売上で100億が中期目標です。IPOも視野に入れて、3年で押し上げたいと考えています。
そのためには支店展開も積極的に行っていきます。1人ではなくチームで売上を作って欲しいのです。弊社には23、4歳の営業担当もいます。若くて営業経験の少ない社員が数千万円の物件を売るのはなかなか難しい。すぐにマネージャーがフォローできたり、お客様が車ですぐに当社に来られたりするような環境を作りたいと思っています。
私がいなくなっても、次世代に受け継げる会社の仕組み作りといえるかもしれませんね。
㈱アドキャスト ホームページ
https://www.ad-cast.info/
㈱アドキャスト 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCQG29Tbm4tjJRn37asFZe3Q