特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

神奈川県で創業し、投資家や富裕層向けに不動産物件を提供しているリストグループ。地元神奈川県と東京都をはじめ、日本全国、海外の物件を幅広く取り扱っている。6つの会社から構成されるグループ企業で、不動産の購入から管理、売却までワンストップで対応。年商1,000億円を目指している。コロナ禍で生活様式や人々の価値観が変わりゆく中、不動産業界の現状はどうなっているのか?今後同社がどのように事業展開を図っていくのか?代表である北見氏に伺った。

(取材・執筆・構成=山田尚明)

リスト株式会社
(画像=リスト株式会社)
北見 尚之(きたみ・ひさし)
リスト株式会社代表取締役
1965年神奈川県生まれ。
大手不動産仲介会社で営業マンとして勤務し、25歳で独立。1991年にリスト株式会社を設立した。

75の国と地域に広がるネットワーク。不動産の購入から管理まで一貫してサポート

――1991年に設立。30年で6社を束ねるグループ会社になりました。

私はもともと大手不動産仲介会社で営業として働いていました。業界に携わっている中で、サービス面で不十分と感じる点が目についたのです。自分にとってそれは「ここを改善すればもっと良くなるんじゃないか」「こんなサービスがある不動産会社があったら成功するんじゃないか」というビジネスチャンスに感じられました。それで「不動産で独立したい」という気持ちが強くなったのです。「契約を100本取れたら独立する」という目標を持って前職の会社に入社したのですが、わずか2年間で達成できたので、25歳のときにリスト株式会社を設立しました。

不動産の仲介事業にはじまり、2000年には新築マンション分譲、2004年にはアセットソリューション事業を開始するなど、事業の幅を一つひとつ拡大し、2010年には世界最大級のオークションハウス「サザビーズ」が展開する不動産仲介ブランド「サザビーズ インターナショナル リアルティ®」の国内独占営業権を取得。今では「リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ」「リストデベロップメント」「リストホームズ」「リストアセットマネジメント」「リストコンストラクション」「リストプロパティーズ」という6つの会社を束ねるグループ企業に成長を遂げました。

リスト株式会社
(画像=リスト株式会社)

――土地の取得から販売、管理・資産運用まで一貫してサポートを行っています。

当グループでは、土地の取得や建物の建築は「リストデベロップメント」「リストコンストラクション」「リストホームズ」、販売は「リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ」、投資物件の利回り改善は「リストアセットマネジメント」というように、グループ会社がそれぞれの役割を果たし、土地の購入から運用までをグループ内で対応できる体制が整っています。海外に物件をお持ちのお客様、あるいは逆に日本国内に物件を持たれている海外のお客様の代わりとなって、物件のメンテナンスや維持管理をさせていただくことも可能です。たとえばハワイの物件でしたら、日本に住まわれているお客様の代わりに月1回の清掃、郵便物の受け取り、手続きの代行などはもちろん、バッテリーが上がらないように車のエンジンをかけるといったきめ細かいサービスもご提供しています。お客様がハワイに来られる際にはレストランの予約なども代行しています。物件はもちろんですが、こうしたサービスも高い付加価値と言えます。

――富裕層や投資家向けに日本国内をはじめ世界中の物件を提供されていますね。

主に私たちのターゲットとなるのは30~50代の富裕層ビジネスマンです。物件価格は神奈川県では5000万円、東京都内では1億円、ハワイでもワンミリオンが平均です。特にハワイにおいては他社がハーフミリオンなので、かなりハイグレードな物件を取り扱っている会社と言えるでしょう。先ほどもお話したとおり、当グループではサザビーズ インターナショナル リアルティ®の国内独占営業権を保有しています。75の国と地域に直営フランチャイズを展開しているので、リスト サザビーズ インターナショナル リアルティをご利用いただければ世界各国の物件を探すことができます。「SIR.com」という情報サイトで物件情報を検索できます。リゾートに行った気分に浸れて眺めているだけでも楽しいので、ぜひ一度ご覧ください。

リスト株式会社
(画像=リスト株式会社)

不動産業界は今後も伸び続ける

――コロナ禍において不動産業界ではどのような影響があったと考えられますか?

やはり当社のように海外の物件を取り扱っている会社は影響がありましたね。現地へ物件を見に行くことができないですから。しかし、全く需要がないかと言えばそうでもありません。当社ではオンラインで物件の見学ができる体制を整えています。ネットで物件を見て購入を決められるお客様も数多くいらっしゃいます。2020年の緊急事態宣言発令時には海外不動産への需要が下がり、好調だった国内不動産で売上を賄っていたのですが、今ではだいぶ回復してきました。

――国内の状況はいかがですか?

国内は活発に動いています。取り扱い物件数も増えていますし、成約物件の価格も上昇傾向にあります。コロナ禍でリモートワークが普及したことと、人口が過密な都心から地方に移住する動きが活発になったことで、湘南や軽井沢などリゾート地の物件の人気が高まっています。それに加えて、特に今は中国やオーストラリアなど海外の富裕層のお客様が日本国内の物件を購入されるケースも増えてきました。これからも国内の不動産業界は伸びていくのではないかと考えています。ただ、立地が悪い物件は価格が下がり続けています。人気物件は価格が高騰し、不人気な物件は売れない。これから地域によって二極化がより鮮明になってくるのではないかと思います。

――コロナ禍で社内体制に変化はありましたか?

当社でもリモートワークを推奨しています。特に営業の仕事はパソコンと携帯電話さえあればどこでもできます。勤務時間もフルフレックス制にして、自由に働けるようにしました。逆に、出社させず勤務時間に決まりを設けないことで、お客様の都合に合わせて商談ができるというメリットも生まれました。今では3割くらいの社員がリモートで働いていますね。コミュニケーションや進捗管理などはTeamsなどを使って行っています。社員からは「特に普段と変わらず仕事ができている」という声が聞かれ、大きなトラブルや混乱はありません。ただ、社員同士の交流、たとえばランチに行ったり雑談をしたりといったことができなくなったことがデメリットかなと思っています。また、当社ではCSRの一環として各支店で地域住民の方といっしょにゴミ拾いを行っているのですが、こうした活動ができなくなってしまったのも寂しいですね。

――これからの目標とそのためのプロセスをお教えください。

まだまだ発展途上の会社ですが、年商1000億円、そして経常利益50億円を目指し、上場も視野に入れています。国内では今は東京都内や神奈川県内の物件取り扱いがメインとなっていますが、今後は地方にも支店を展開していきたいと考えています。富裕層向けの高価格帯物件、一次取得者用の物件を取り扱っていくという方向性は変わりません。創業して30年間の実績とノウハウがあるので、投資とディベロップを併用すれば目標は達成できると確信しています。もちろん、海外のお客様も今後間違いなく増えていくので、日本の物件の魅力を発信し続けていきたいと考えています。グローカルカンパニーとして、お客様や地域と共にこれからも発展していければと思います。