特集『withコロナ時代の経営戦略』では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続く中での、業界の現在と展望、どんな戦略でこの難局を乗り越えていくのかを、各社のトップに聞く。

株式会社サークフルステートは、築浅の中古マンションを専門に扱う不動産投資のトータルコンサルティング会社だ。社名のサークフルは、「Succeed(成功)」、「Circle(循環)」、「Full(満ちる)」、「Estate(資産、不動産)」から名付けられた。新築プレミアムの付いていない、良質な築浅中古マンションの資産運用は必ず顧客のライフプランを後押しすると信じてのことだ。顧客のニーズを聞き、最適な提案をするために開催してきたセミナーは会社設立以来400回を超える。顧客の人生に寄り添うため、今も講師としてセミナーに立ち続けるトップに話を聞いた。

(取材・執筆・構成=長田小猛)

株式会社サークフルエステート
(画像=株式会社サークフルエステート)
古川 國博(ふるかわ・くにひろ)
株式会社サークフルエステート代表取締役
1977年新潟県生まれ。城西大学卒。
大学卒業後5年間、投資不動産販売会社でコンサルティング営業に従事。その後、不動産投資販売のスタートアップ企業に役員として立ち上げから参画。6年間、経営のノウハウを学ぶ。2011年、築浅で良質な中古投資用マンションを扱う株式会社サークフルエステートを東京都品川区に設立。

不動産投資を通じて、お客様に未来を販売する

――2011年の会社設立以来、開催したセミナーの数は400回を超えると聞きました。

会社設立から10年目になりますが、自社開催のセミナーは440回です。北は仙台から南は福岡まで、一都三県では特に細かくエリアを分けてセミナーを開催しています。不動産業界の情報はとても偏ってお客様に伝えられていて、公平ではありません。他社のセミナーで、リスクに対する説明が不足していることや主催者側の一方的な説明に違和感を覚え始めるようになりました。対して当社は、お客様目線の顧客満足度の高いセミナーを開催していると自負しています。また当社のセミナーは、古い言葉で言えばプッシュではなくプル。投資用不動産を売るというよりも、お客様の将来の生活に家賃収入を組み入れてもらい、結果として未来を販売しているのだと考えています。他にも、生命保険効果や高所得者には節税効果があることを丁寧に説明して、セミナー数を重ね売上を伸ばしてきました。

――中古マンションの不動産投資を専門に扱っていますね。どのような理由からこのような事業形態になったのでしょう?

サークフルエステートを創業した当時は、建築費も上昇していて、新築マンションはとても割高なものになっていました。これではマンションに投資しても、回収までにはとても時間がかかります。失敗の無い不動産投資をするためには、築浅の中古マンションが最適だと考えました。また、当社が扱う中古マンションは、阪神・淡路大震災以降に建てられた、新しい耐震基準を満たしながらも建築費が安くなってからの物件。主に1996年以降に建てられた、築浅のマンションが中心です。このようなマンションはお客様にとても好評で、4〜5年前からは中古マンションの流通数が新築を上回るようになってきています。昨年の売上は21億円。不動産仲介も行っていますが、中古の物件を買い取って自社商品として販売し、以後は賃貸管理業務を提供するのが主な事業です。

株式会社サークフルエステート
(画像=株式会社サークフルエステート)

お客様にはセミナーで期待以上のものを持って帰って貰いたい

――他社にはない強みは何でしょうか?

まずは月に4〜6回行っているセミナーです。2ヵ月に1回は、大阪や名古屋でも開催しています。ここでお客様に情報提供を行って、あとはお客様ごとに違うニーズをしっかり聞き取ることが目的です。次にしっかりとした知識。私自身もそうですが、販売スタッフにはファイナンシャルプランナーの資格を持たせるなど、金融全般に責任を持って提案できる体制を構築しています。当社がお客様にご提供するのは投資案件ですから、まずは金融。全般的なお金の話と失敗しないためのリスクの話があって、その上に不動産が存在しているのです。実はセミナーは、必ずしも販売の誘因にはなっていません。ですが当社から何を持って帰って貰えるかが重要です。不動産投資の知識だけではなく、当社のご提供するサービスが今後のお客様の人生にどう影響するのか?お客様には期待以上のものを持って帰って貰いたいと考えて、毎回セミナーを開催しています。

――扱っておられるのが投資用マンションですが、富裕層向けのサービスはあるのでしょうか?

以前は土地神話というものがあり、家は買い換えていくものでした。始めはマンションから、そして買い換えるたびにステップアップして最終的には土地付き一戸建て、というようにです。しかしながら、もう家を何回も買い換えるような時代ではなくなりました。また富裕層の方が、転売目的で持つような商品でもないと考えています。ですから、富裕層や投資家に向けての特別な商品は扱っていません。 区分マンション投資を税金対策としてだけ使うこともありましたが、現在では使い方も多様化しています。私たちの扱う中古マンション業界では、複数の部屋を持つ方も多いです。複数の投資物件を持つとリスクが上がるという考え方もありますが、残債の減りが早くなりますし時間を味方に付けた投資とも言えるでしょう。早く残債を返し、確実な将来の収入源として複数の区分マンションを使うというわけです。当社に来られるお客様の年収は、給与所得で400万円台から2,000万円台と幅が広いです。ケースバイケースで複数所有を勧める場合もありますが、まだご自宅のローンをお持ちの方もいらっしゃいます。投資は、ライフプランの中でタイミングよく行うことが大切です。不動産投資が将来の足かせになってはいけないからです。お子さんの成長やご家庭の状況に合わせて、大変失礼ながらご自身の身の丈に合った持ち方をお薦めしています。当社はお客様の悩みをセミナーで聞いて、その人に合ったサービスをご提供していくという方針です。

――今回のコロナ禍は貴社の事業に影響を与えましたか?

当社としては緊急事態宣言中、勤務時間の短縮や在宅勤務を行いました。一方で、お客様からは資料請求や個別相談が増えましたね。在宅勤務で通勤時間がなくなり、自由な時間や考える時間が増えた結果、今後について考える良い機会ができたのかもしれません。

――今後はどのように事業を発展させていきたいとお考えですか?

当社は東京23区、それも山手線周辺の都心6区と副都心を中心に物件を扱っています。当面は、このエリアセグメントをしっかり守り、お客様に本当に価値のある物件を提供していきます。 現在社員は5名。そのうち営業担当は4名ですが、お客様が何を望んでいるのか、しっかりと聞き出す力を社員には期待しています。良い人材がいれば営業担当の数を増やしていきたいとも思いますが、新卒と言うより免許や資格を持った経験者の採用を中心に進めていきます。将来的な事業の拡大としては、西の方面への支社展開を検討しています。これは慎重にコツコツと調査を重ねている最中です。事業の拡大も、投資と同じくタイミングが重要ですからね。