米実質金利上昇で1ドル=110~115円のレンジ相場に?
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米実質金利上昇で1ドル=110~115円のレンジ相場に

三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト / 市川 雅浩
週刊金融財政事情 2021年3月29日号

 米長期金利の上昇を背景に、このところドル高・円安の動きが顕著だ。あらためて米長期金利とドル円相場の関係について、過去のデータに基づき検証してみたい。

 2013年から直近まで、米10年国債利回りが上昇した期間は5回あった(図表)。1回目(13年5~12月)については、13年5月、当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長であったバーナンキ氏が、量的緩和の縮小を示唆したことをきっかけに、米10年国債利回りは1.4%上昇した(いわゆるテーパータントラム)。これを受けてドル円は7円37銭、ドル高・円安が進行した。

 2回目(15年1~6月)は、米利上げの織り込みが進み(実際の利上げは同年12月に実施され、ゼロ金利政策が解除)、米10年国債利回りは0.8%上昇した。日本の10年国債利回りも0.2%上昇したが、米実質金利の上昇幅が相対的に大きかったため、日米の実質金利差は拡大した。その結果、ドル円は5円19銭、ドル高・円安が進んだ。

 3回目(16年7月~17年3月)は、16年11月の米大統領選でトランプ氏が勝利し、減税などによる景気押し上げ期待から、米10年国債利回りは1.3%上昇した。日本の10年国債利回りも0.4%上昇したが、やはり日米の実質金利差は拡大し、ドル円は14円34銭、ドル高・円安方向に振れた。

 4回目(17年9月~18年11月)は、FRBによるバランスシート縮小(17年10月に開始)などの影響により、米10年国債利回りは1.2%上昇した。日本の10年国債利回りも0.1%上昇したが、この期間においても日米の実質金利差は拡大し、ドル円は5円62銭、ドル高・円安が進行した。

 5回目(20年8月~21年3月)でも、日米実質金利差が拡大し、ドル円は3円16銭、ドル高・円安が進んだ。以上から、米長期金利の上昇は、日米実質金利差の拡大を通じ、ドル高・円安を促しやすいということが確認できた。

 現在、期間10年の米期待インフレ率は2.3%程度、米実質金利はマイナス0.6%程度である。この先、米国の景気が力強く回復し、期待インフレ率が落ち着いたまま、実質金利の上昇(マイナス幅の縮小)が進めば、米10年国債利回りは2%の水準が意識される。この水準への到達にはまだ時間を要すると思われるが、その場合、ドル円は1ドル=110~115円のレンジに入っていく公算が大きいと考えている。

米実質金利上昇で1ドル=110~115円のレンジ相場に?
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(提供:きんざいOnlineより)