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医療費の地域差を縮減して制度の持続性向上を

(厚労省「医療費の地域差分析」)

大和総研 政策調査部 / 石橋 未来
週刊金融財政事情 2021年3月29日号

 2000年度に30.1兆円だった医療費は、20年度に46.8兆円(予算ベース)と1.6倍に増え、保険料の引き上げ等による国民の負担はそれだけ重くなっている。高齢化に伴う医療費増加は避けられないが、できるだけ抑える工夫が必要だ。注目したいのが年齢構成を調整した上で見た1人当たり医療費の「地域差」だ。年間の1人当たり医療費について、最高額の県と最低額の県との間には約19万円も差がある(図表1)。西日本と北海道で高く、東日本で低い傾向があり、主に入院医療費が地域差に影響している。入院医療費が高額な都道府県では、住民が長期の入院を要する疾病にかかりにくくなるよう努めることに加え、不必要な入院が行われていないか検証する必要がある。

 また、都道府県別の人口10万人当たり病床数と1人当たり入院医療費の関係からは、「供給が需要を作っている」様子がうかがわれる(図表2)。病床が多過ぎる地域では、病院経営上、稼働率を上げるために過剰な入院サービスが提供されがちだろう。

 合理的な説明がつかない高額の医療費は、地域住民の負担だけでなく、社会保険料や税を通してほかの地域の人々の負担も高めている。公的な医療保険からの受益は公平であるべきだ。

 対策の一つは、25年まで取り組まれる地域医療構想の下、全体としては将来過剰となる病床を減らしつつ、必要な病床を機能別に整備することである。これを実現すれば、病床数が諸外国と比べて非常に多いにもかかわらず病床の確保が難しいという、コロナ禍で明らかとなった日本の課題解決にもなる。あらゆる世代にとって安心できる社会保障制度が、客観的データやエビデンスに基づいて再構築されることを期待したい。

医療費の地域差を縮減し制度の持続性向上を
(画像=きんざいOnline)
医療費の地域差を縮減し制度の持続性向上を
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(提供:きんざいOnlineより)