愛知時計電機(7723)は、水道・ガス関連機器をはじめとする流体計測機器・システムの製造販売を手掛ける老舗メーカー。設立から120年以上「計測」をコア技術に事業を展開。ガス・水道メーターは国内トップシェアを維持し続けている。同社は今期「新中期経営計画2020」の最終年度を迎える。その進捗と来期以降の展開について話を聞いた。
ガス・水道メーターで
国内シェア3割
同社の事業分野は、「ガス関連機器」「水道関連機器」「民需センサー・システム」「計装」の4つ。なかでもガス・水道メーターは、LPガスで30%、都市ガス・水道で30〜40%と国内トップシェアを維持している。
「社会インフラに関わるメーターは、ガスは10年、水道は8年毎に必ず交換をしなければなりませんので、一定の国内市場規模を確保できております。私共のメーターは料金の取引に関わる法定計量器ですので信頼性が求められます。そうした社会の要請に応えられるように[計測]というキーワードの技術を磨くことを継続しております」(星加俊之社長)
今期(2021年3月期)の連結業績は、売上高450.4億円(前期比6.4%減)、経常利益27.5億円(同14.5%減)の予想となっている。減収減益の要因は大きく2つある。1つ目は、LPガスメーターの需要サイクル。LPガスメーターは10年周期で需要の大きな波があり、昨年度まではその波がピークだったが、今年度から何年間かは下降期に転じる。それが業績にも大きく影響をするため計画当初から下がる見込みをしていた。
もう1つの要因は海外事業。「海外展開は、米中貿易摩擦や新型コロナの影響があり活動が鈍っています。国内市場のメーター関連製品においてはコロナの影響はありませんが、民需センサー・システム分野で軽微な影響を受けており、それらを鑑みるとマイナスになる見込みです」(同氏)
10年スパンでみる
「アイチクラウド」
同社は今期、2018年に発表した「新中期経営計画2020」の最終年度を迎える。重点施策に挙げた市場と事業領域の拡大の取り組みの中で、実績がつき想定以上のスピードで伸びているのが「アイチクラウド」だ。
アイチクラウドは、LPガスメーターにLPWA(低消費電力で広域をカバーできる通信技術)を活用した自動検診の通信端末を付けてデータを収集し、収集したデータを取引先に提供するサービス。LPガスのボンベはガスが無くなる前に交換が必要だが、従来はガスの正確な残量が把握できなかったため、ある程度の間隔で交換をしていた。しかし端末をつけることによって常時ガスの使用量が分かるようになり、ガス切れになる直前に効率よく交換ができるようになった。
同社は、通信端末をLPガスメーターに付与してガス事業者に販売。その後は毎月月額でデータを提供する。通信端末の本体料金と月毎のサービス料が同社の収益になる。
「サービスとしては、月1件100円もしませんが、仮に100円とすると10年間で1万2000円になります。ガスメーター1台の単価もそこまでは高くないので、10年間スパンでサービスを提供することでいえば、メーター販売の倍を超える(又は倍以上の)売上規模になると期待しています」(同氏)
また、基盤分野の収益向上の取り組みでは、生産部門で地道な作業を続けている。例えば、部品レベルの細かな仕様変更や調達先の工夫などだ。こうした取り組みは小さいもので半年、大きいもので2年ほどで成果が上がる。2年半前に発売した家庭用水道メーターはコスト低減の効果が出て利益貢献をしている。
一方で、海外事業は伸び悩んでいる。もともと2年半は、国内95%、海外5%の海外比率を、何年か先に10%にする目論見で海外市場の拡大に力を入れているが、外的要因に加え、水道関連で市場変化についていけなかったこともあり計画通りには伸びていない。
メーカーから
ソリューション提案へ
来期以降は、「アイチクラウド」、「海外」、「計装」の3つの成長分野に重点を置くと星加社長は話す。
「まずはアイチクラウドの水道、都市ガスへの展開を目指します。私共メーカーからどういったデータをどう活用できるかお見せするには、各事業者様の課題を共有しながら進めていかないと実際に効果がある提案ができないと思いますので、連携させていただきながらやっていくのが重要だと思います」(同氏)
LPガスメーター自体は10年周期の波に大きく影響を受けるが、アイチクラウドを拡大することで、その波を補完する売上が期待される。次に、海外市場では、ASEAN、中国を中心に、ヨーロッパ、中東、アメリカでも実績を積み上げていく。
「海外への取り組みはまだ日が浅いので、まだまだ拡大する余地があると思います」(同氏)
さらに、過去5年〜10年のスパンで見ると着実に力がついてきている計装分野も伸ばしていく。
同社の今期の配当予想は110円。中間50円、期末50円の普通配100円は変更せず、特別配当の10円が加算されている。
「私共はLPガスの需要の波がありますので、ピーク時には特別配当で還元させていただいております。安定的な配当をきちんと還元する方針を継続していきます」(同氏)(提供=青潮出版株式会社)