個人と同じように法人も確定申告をする必要がある。しかし、法人は個人よりも手順が複雑で、提出すべき書類も多い。この記事では、法人の確定申告について詳しく解説する。

法人の確定申告に関するQ&A

法人,確定申告
(画像=PIXTA)
Q


法人は必ず確定申告をしなければならないのか?

法人は会社法によって確定申告が義務付けられている。個人の所得税と違い、法人は赤字の場合も確定申告を行わなければならない。所得がなくても、法人住民税などの税金が発生するためだ。

法人は会社法によって確定申告が義務付けられている。個人の所得税と違い、法人は赤字の場合も確定申告を行わなければならない。所得がなくても、法人住民税などの税金が発生するためだ。


Q


法人の確定申告は何を目的としているのか?

法人の確定申告は、1年間にどれだけの所得があったかを国へ報告するために欠かせないものだ。法人住民税などの税金も所得によって変動するため、正確な情報を報告する必要がある。

法人の確定申告は、1年間にどれだけの所得があったかを国へ報告するために欠かせないものだ。法人住民税などの税金も所得によって変動するため、正確な情報を報告する必要がある。


Q


法人の確定申告はどのような流れになっているのか

まず決算書を作成し、決算の金額をもとに確定申告書を作成して、法人ごとに異なる決算月から2ヵ月以内に申告書の提出および納税を行う。

まず決算書を作成し、決算の金額をもとに確定申告書を作成して、法人ごとに異なる決算月から2ヵ月以内に申告書の提出および納税を行う。


Q


個人と法人の確定申告は何が違う?

個人と違い、法人には法人税・法人事業税・法人住民税が課せられており、それらの確定申告書を作成しなければならない。個人の課税対象期間が1月から12月までなのに対し、法人の課税対象期間は法人ごとに異なる事業年度内となり、申告期限もそれぞれ異なる。

個人と違い、法人には法人税・法人事業税・法人住民税が課せられており、それらの確定申告書を作成しなければならない。個人の課税対象期間が1月から12月までなのに対し、法人の課税対象期間は法人ごとに異なる事業年度内となり、申告期限もそれぞれ異なる。

なぜ法人は確定申告をするのか

なぜ法人も個人のように確定申告をする必要があるのだろうか。

個人の場合、確定申告は国民に義務付けられている所得税や住民税の金額を計算するために必要だ。所得額に応じた税金の金額を申告し、期限内に支払うことになるのである。

一方、法人の場合、会社法第435条第2項および法人税法第74条により、毎年確定申告を提出しなければならないと義務付けられている。個人の場合、所得税法第120条で定められており、そもそも法律から異なっている。

所得税額を確定させるために行う個人の確定申告と違い、法人の確定申告は収支などの経営状況をはっきりさせるために行われる。

法人の確定申告の種類について

法人が確定申告で求める税金は大きく4種類に分けられる。利益を得ている会社すべてが課税対象となる「法人税」、1000万円以上の売り上げがある場合に申告する「消費税」、個人における住民税にあたる「法人住民税」、公共サービス費の一部を担う「法人事業税」の4種類だ。

次に、それぞれの税金について解説していく。

法人税の確定申告について

法人税・法人住民税・法人事業税をまとめて「法人税」と呼ぶこともあるが、ここで解説するのは、他の2種類の税金を含まない、個人の所得税に当たる法人税を指す。個人事業主の場合、所得税を支払うことになるが、法人化していれば所得税ではなく法人税を払うことになる。

法人税の課税対象は、普通法人と協同組合であり、大学法人のような公共法人、社団法人のような公益法人、実行委員会のような人格のない集団は法人税の課税対象外となっている。

課税対象となっている法人は1年間の所得が800万円を超えているかどうかで法人税率が変わるため、適用される法人税率を把握しておくことが重要である。

消費税の確定申告について

消費税の確定申告は、個人事業者にせよ法人にせよ、特定の条件を満たしていると申告の義務が発生する。条件は以下のとおりである。

・2年前の売上高が1000万円を超えている
・1年前の1月から6月末までの売上高あるいは人件費が1000万円を超えている
・事業を始めてからあるいは法人を設立してから2年以内であり、かつ資本金が1000万円以上
・1年前の12月末までに自ら消費税の課税事業者になるための書類を提出している

以上のいずれかに当てはまる個人・法人は、消費税の確定申告をしなければならない。

消費税の確定申告で必要な書類は、「消費税及び地方消費税の確定申告書」、「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」で、消費税の還付がある場合は「消費税の還付申告に関する明細書」も必要となる。

また、年度内に行われた取引がすべて新しい税率だったか、旧税率による取引も含まれていたかによって必要な書類が変わる。ほかにも、譲渡を行った場合など、状況に応じて必要な書類は変わるため、毎年何の書類が必要なのかをよく確認することが重要だ。

法人住民税の確定申告について

法人住民税とは、正確には「法人都道府県民税」と「法人市町村税」のことを指しており、本店およびすべての事業所がある地方自治体に納税する。

「法人都道府県民税」と「法人市町村税」は、所得金額に応じて変動する法人税割と、資本金と従業員の人数で変動する均等割の合計で求められる。

法人住民税の申告に必要な書類は「法人都道府県民税申告書」と「法人市町村民税申告書」である。法人住民税は法人税とまとめて確定申告が行われるため、これら以外に必要なものは法人税と同じである。

法人事業税の確定申告について

法人事業税とは、事業を行うために活用している公共サービスや、公共機関運営のために必要となる費用の一部を担うために法人に課せられている税金である。法人住民税と同じく、法人税と同時に確定申告が行われ、事業所が置かれている都道府県に対して法人事業税が支払われる。

法人事業税の申告に必要なのは「法人事業税申告書」である。法人住民税同様、法人税・法人住民税とまとめて確定申告が行われるため、ほかに必要な書類は法人税と同じである。

確定申告時には、法人住民税や法人事業税の状況を申告するためにも、「租税公課の納付状況等に関する明細書」という別表を添付して提出しなければならない。

法人の確定申告に必要な書類とは

以上のように、法人税各種と消費税ではそれぞれ必要な書類が異なる。確定申告の際は、法人税各種をまとめて申告する。その際に必要な書類や、法人事業税・法人住民税に必要な書類を併せて解説する。

作成する必要がある書類

法人が当年度の勘定記録などをもとに作成して提出する書類は以下のとおりである。

・決算報告書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・販売費および一般管理費の明細・個別注記表)
・勘定科目内訳書
・法人事業概況説明書
・法人税申告書
・法人事業税・地方法人特別税・法人都道府県民税の申告書(自治体ごとに詳細は異なる)
・法人市町村民税の申告書(自治体ごとに詳細は異なる)
・消費税および地方消費税の確定申告書(提出の必要がある場合)
・その他法人によって必要な添付書類

法人住民税と法人事業税の場合、自治体ごとに異なる書類を申告書として指定しているため、書類の名称はそれぞれ異なる。法人は年内に行われた取引などの内容ごとに提出しなければならない別表や添付書類も非常に多いため、必ず毎年提出する書類の確認が必要である。

用意する必要がある書類

提出の必要がある確定申告書やその添付書類以外にも、医療費控除などの各種控除を受けるために必要な証明書類や、法人側で保管しておくための確定申告書の控えなども同時に提出しなければならない場合もある。こういった書類の添付漏れがないよう、確定申告前に準備を済ませておくようにしよう。

法人が確定申告をする際の手順について

確定申告には多くの提出書類があり、個人・法人によって提出の必要がある書類も異なる。事業開始月と決算月なども会社によって異なるため、事業年度や繁忙期などの時期を鑑みたうえで、いつ頃までにどの準備を済ませておけばよいのかを意識しておくことが重要である。

次に、決算前後から確定申告を行うまでの流れについて解説する。

決算前後の流れ

まず1年度分の記帳をすべて完了させる必要がある。領収書や通帳など必要な証明書類が揃っているかをきちんと確認しておかなければならない。記帳が正しいかどうかを確認するため、「試算表」を作成する。金額誤りや入力漏れなどがあれば、この時点で修正する。

貸借の一致などすべての確認事項がチェックできたら、決算整理仕訳を行い、未処理や仮勘定となっていた仕訳や、貸倒れなどの処理、減価償却などを行う。

すべての記帳・入力が完了したら、再度作成した試算表をもとに決算書を作成する。

確定申告書の作成、準備

決算整理仕訳などの決算書作成までの処理と同時に、確定申告書を作成する。法人税・法人事業税・法人住民税、必要な場合は消費税の確定申告書に必要な書類をそれぞれ作成していく。

決算書作成と同時に進めるが、決算が確定した後の金額が必要な書類もある。確定申告書の作成を遅らせないためにも、決算を早く済ませたほうがいいだろう。

申告書の提出時とその期限

決算書と確定申告書が完成したら、税務署などそれぞれの提出先に提出する。確定申告書の提出期限は決算日から2ヵ月以内で、法人税などそれぞれの税金の納付期限も決算日から2ヵ月以内となっている。確定申告書の提出はもちろん、税金の支払いも忘れずに済ませておこう。

確定申告の書類はどこに提出するのか

先述したとおり、法人の確定申告書は決算日から2ヵ月以内に提出しなければならない。しかし税務署にだけ提出すればいいというわけではない。

法人税と消費税の確定申告書は税務署に提出するが、法人住民税と法人事業税はそれぞれの事務所が置かれている都道府県の税務担当先に提出する。事務所ごとに名前や担当地区が異なるため、間違った都道府県税事務所に提出しないよう気をつけなければならない。また都道府県税事務所に送るものとは別に、法人市民税の確定申告書は市区町村に提出する。

つまり提出先は税務署、都道府県税事務所、市・区役所の計3つとなる。

確定申告書はそれぞれの提出先に直接提出することもできるが、郵送でも提出できる。郵送する際は、期限内に届くように日数を計算して、期限ギリギリにならないように注意しよう。

法人の確定申告を行う際に使われるソフトについて

確定申告といえば、今ではソフトを使って必要書類を作成することも多い。確定申告の対象者や税理士は、どのようなソフトを使って確定申告の必要書類を用意しているのだろうか。

会計ソフトについて

確定申告をするための会計ソフトといえば、「弥生会計」だろう。クラウドデータでのやり取りが可能な「弥生会計オンライン」もある。電話のサポート対応も万全で、他社に比べて強いブランド力を持っている。

税務ソフトについて

確定申告をするために使われている税務ソフトは、「魔法陣シリーズ」や「達人シリーズ」などがある。「魔法陣シリーズ」は長年税理士の助けになってきた実績と信頼のあるソフトで、「達人シリーズ」は「弥生」や「freee」など他の会計ソフトと連動できるため、忙しい確定申告時には強い味方となってくれる。

これらのソフトのほかにも、優れたソフトは多数販売されているので、自分に合ったソフトを選ぶことが重要である。

法人の確定申告における注意点について

法人は2期連続で確定申告の期限を過ぎてしまうと、翌年度から青色申告ではなくなってしまう。青色申告のさまざまなメリットを失わないためにも、直前になって書類が足りないという事態にならないよう、前もって準備を進めておくことが重要である。

法人の確定申告では複数のことに気をつけよう

法人の確定申告では常に期日を意識し、期限までの日数を逆算していつまでに書類を準備しておく必要があるのかを念頭に置いて行動するよう心がけよう。

法人によっては必要書類が異なったり、法改正などで申告方式や提出書類が変更となったりすることもあるため、常に新しい情報を確認したうえで申告することも重要だ。