将来のために投資したいけれど何から始めればいいか分からないという人のために、投資の目的・方向性・金額設定・投資方法についての考え方や金融商品の種類についてお伝えします。また、始めるにあたって知っておきたい税制度を紹介します。ポイントを押さえ「豊かな人生のための投資」を始めてみてください。

目次

  1. 将来に向けて投資の準備を!まずは目標を決めよう
  2. 守る部分は貯蓄、攻める部分は投資で。決めるのはその割合
  3. 投資を始めるのにどんな金融商品を選べばいいのか?
  4. 資産を集中させず、資産を分散して運用しよう
  5. NISAの税制優遇制度も上手に活用しよう!
  6. 手堅い投資商品も存在する。まずは始めてみよう

将来に向けて投資の準備を!まずは目標を決めよう

学資保険orジュニアNISA、子どものために今から始めるならどっち?
(画像=Maksym Yemelyanov/stock.adobe.com)

投資を始める目的として「今あるお金を少しでも増やしたい」という人が多いのではないでしょうか。

投資はそれ自体が目的ではなく、あくまでも夢や目標を実現するためのお金を得るための「手段」です。この夢や目標から具体的な金額を割り出し、戦略を立ててから始めることでより効果的な投資ができるといえます。

そこで、まず3つのことを考えてから始めることをおすすめします。その3つとは、「何のために」「いくらを」「いつまでに」です。これらを明確にすることで、運用方針や運用商品が決まってきます。

投資には、短期・長期のもの、リスクが伴うものなどさまざまな商品があります。目的、金額、期間で、投資方法や取れるリスクが変わってくるからです。

この3つが不明確なままでは、運用方針にブレが生じます。ブレを生じた状態のまま運用を続けると、「確実に必要になる資金が減ってしまった」「必要な時期に間に合わなかった」など、パフォーマンスや本来の目的自体にも支障が出てきてしまいます。

では、実際に3つの項目について考えていきましょう。

(1)なんのために

あなたはどのような資金を準備するために投資をおこなうのでしょうか?

(結婚費用・教育費・住宅資金・老後資金・海外旅行・留学・車購入・資格取得など)

(2)いくらを

その資金は、いくら準備すればよいのでしょうか。必要な金額を具体的にあげておきます。

(3)いつまでに

現金化する期限も明確にしておきます。それにより、運用できる期間が決まります。

たとえば、老後資金を例に挙げて解説していきます。

総務省の「令和元年 家計調査報告 [家計収支編]」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみ世帯)の1カ月の家計収支は、実収入ー23万7,659円、支出ー27万929円となっており、毎月3万3,269円の不足があることがわかります(データ上、1円の誤差あり)。

毎月3万3,269円の不足が、世帯主65歳から95歳までの30年間続くと約1,200万円が足りないことになります。

この約1,200万円を65歳までに準備することにします。

現在40歳の人であれば、65歳まで25年ありますが、毎月どのくらい貯金をしていけばよいのでしょうか。計算すると1年間に48万円、1カ月にすると4万円を貯めれば目標を達成できることがわかります。この月4万円は、運用なし(利息なし)の場合です。

では、資産運用をした場合はどうなるでしょうか?金融庁の資産運用シミュレーションで計算してみましょう。

【参考】金融庁 資産運用シミュレーション

この必要な老後資金1,200万円を得るために、25年間積み立て、年想定利回り3%で運用した場合はどうなるでしょうか?毎月の積立額は約2万7,000円ですむことになります。

一方、同じ年想定利回り3%で、毎月の積立額を4万円にした場合、積立期間は17年6カ月になります。年3%の運用をすることで、積立期間が25年から18年9カ月に圧縮されます。

このようにシュミュレーションすることで、今後の運用方針や戦略が立てやすくなります。

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守る部分は貯蓄、攻める部分は投資で。決めるのはその割合

シミュレーション結果から、運用することの効果が理解いただけたかと思います。ただし、投資は「元本が保証されない」ことも事実です。

そこで、運用は守りの「貯蓄」と攻めの「投資」のバランスを決めてから始めることが大切です。

守りの「貯蓄」のなかには、緊急生活資金として最低でも手取り月収の半年分は確保しておきたいものです。このお金は、生きていくために必要なお金です。1年分以上あればさらに安心です。

投資をこれから始める方は、「最悪なくなっても良いお金」くらいの金額から始め、慣れたころに調整していくとよいでしょう。

投資を始めるのにどんな金融商品を選べばいいのか?

実際に投資を始めようと思っても、どのような金融商品が自分に合っているかわからないという方は多いと思います。

投資には、株式・投資信託・債券・金・不動産・外貨などさまざまなものがあります。また、税優遇の制度もあって始めやすいものとして、「株式投資」や「投資信託」が挙げられます。

それぞれについて、説明していきたいと思います。

主な金融商品1:株

株式投資といっても投資手法にはさまざまな種類があります。最初に知っていただきたいのは、投資には「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」というものがあることです。

▽キャピタルゲインとインカムゲインの違い

キャピタルゲイン インカムゲイン
特徴 値段が変動することによって得られる収益 保有しているだけで生みだされる収益
収益の種類 売買益 株式の配当・株主優待
期間 短期 中・長期
利益発生の
タイミング
売却時 保有期間中継続的に発生
利益性 値下がりすると損失が発生
(インカムロス)
安定・継続的な利益

目的によって、キャピタルゲイン投資とインカムゲイン投資の2つの比率を考えていく必要があります。ただし、この2つは、はっきりと区分けされたものではありません。インカムゲインに期待して保有していた株が、値段が急騰して大きなキャピタルゲインになり両方の利得を得られる場合もあります。

では、実際にどんな株式を選んだらよいのでしょうか。

インカムゲイン向きの株としては、「ディフェンシブ株」が挙げられます。

ディフェンシブ銘柄とは、景気に左右されにくい業種の株式のことをいいます。具体的には、生活必需品である食品・薬品・日用品、社会インフラである電力・ガス・鉄道、通信・ITなどが挙げられます。これらの銘柄は、社会情勢や生活様式の大きな変化がない限りは、急激な業績悪化の心配がなく、株価も比較的安定しており高配当が見込めるという特徴があります。

その反対に、キャピタルゲイン向きといえるのが「景気敏感株」です。

景気敏感株は、景気による影響を受けやすい銘柄を指します。株価が上下しやすいことが特徴です。

そのほか、株主優待を楽しむ投資をする場合は、ディフェンシブ株のような株価の安定している株を選ぶことで、より安定したインカムゲイン投資ができます。

主な金融商品2:投資信託

投資信託は、多くの投資家から集めたお金をまとめて、運用のプロが株や債券、不動産などで運用する商品です。利益は、投資家の投資金額に応じて分配されます。

投資手法は、大きく分けて「パッシブファンド」と「アクティブファンド」があります。

これら2つは、投資する国も、国内にとどまらず先進国、新興国など購入者のさまざまなニーズに応えた商品があります。

・パッシブファンド

市場全体の平均的な収益を目的としていることが特徴です。例えば、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの指数と同じ値動きをすることを目指しています。代表的なものに、インデックスファンドがあります。

インデックスファンドは、選びやすい、コストが安い、リスクも小さいという長所があります。日経平均など連動する指標が同じであれば、どの商品も運用成績はそれほど変わりません。それならば、販売手数料のかからないノーロード型の商品を選びましょう。

・アクティブファンド

積極的な運用を行い、インデックス(市場の平均)を上回る収益を目指していることが特徴です。主に、成長株や割安株に投資したものが多く、パッシブファンドよりもリスクは高めになります。

注意点としては、販売手数料が高めなことと、パッシブファンドを上回る利益が必ず出せるとは限らないことです。

また、購入の際は口座を開設する証券会社の投資信託の運用成績を確認しましょう。証券会社のホームページでは、トータルリターン、リスク、手数料、運用会社、純資産総額といった複数の条件から、希望に叶う投資信託を絞り込んでくれる機能もあります。

これから投資を始める方には、株ならばディフェンシブ銘柄や魅力的な株主優待のある銘柄。投資信託であれば、値幅が安定しているという意味で先進国のパッシブなど、できるだけ安定性を重視した投資スタイルで始めるとよいでしょう。

資産を集中させず、資産を分散して運用しよう

投資を始めたら、1つの運用方法や1つの銘柄に集中せずに資産を分散して運用すること(リスク分散)が必要です。

リスク分散とは、「資金を、性質の異なる複数の金融商品や資産に分散して投資すること」を指します。

すべての資金を1つの金融商品に集中させていると、運用が上手くいかなかった時のダメージが大きくなります。たとえば、1つの会社の株に全資金を投入したとすると、その会社が業績不振により株価を大きく下げたり、倒産した場合、ダメージだけが残って取り返すすべがなくなってしまうのです。

そのため、下の図のように、大きく3つに分散させていきましょう。

投資信託であれば、積立方式にすれば購入の時期をずらすことができて時間分散になります。

毎月一定金額で投資信託を購入する「ドルコスト平均法」を利用するのも、1つの方法です。この投資方法は、長い時間をかけて、じっくり資産形成をしたいという場合に向いています。短期的に見れば価格変動が大きな資産(銘柄)であっても、長期的に持ち続けることでリスクが平準化されていきます。

また、長期であるほどリターンを再投資することによる複利効果も高くなってくるのです。

金融庁のデータに、興味深いデータがあります。

資産を20年間積み立て、国内・先進国・新興国の株と債券の全部で8銘柄にグローバル分散させて投資した場合は、国内の株・債券2銘柄のみに分散した場合と比較して、その約2倍の運用成果がでていることがわかります。

さまざまな金融商品を組み合わせることでリスクを分散できるだけでなく、より利益も見込めることが理解できると思います。

NISAの税制優遇制度も上手に活用しよう!

リスクをできるだけ取らずに資産運用を行うのに、国が用意した税制を賢く上手く活用するのも1つのです。

株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して通常20%の税金がかかります。

しかし、その売却にかかる税金が非課税になるNISA(ニーサ)という制度があります。

金融機関でNISA口座を開設し、そのNISA口座で毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品であれば、売却して得た利益は非課税になります。

NISAには、3つの種類があります。

▽NISAの種

NISA つみたてNISA ジュニアNISA
年間投資枠 120万円 40万円 80万円
非課税期間 5年間 \ (最大10年間) 20年間 最長5年間
実施機関 2023年まで 2037年前 2023年まで
18歳まで払い出しできない
取扱商品数 株式・投資信託 投資信託のみ 株式・投資信託
NISAとつみたてNISAの併用は不可。 NISA・つみたてNISAのいずれかとジュニアNISAの併用は可

一般のNISAか、つみたてNISAのどちらか一方を選択して利用できます。なお、ジュニアNISAは、未成年のみの利用で18歳まで払い出しができません。

このうち、つみたてNISAの場合、投資できる金融商品が限定されています。手数料が安く、複利で運用できる、長期での積立や分散投資に適している商品のみであり、金融庁が指定しています。投資初心者にとって安心で利用しやすい仕組みといえるでしょう。対象商品は、金融庁ホームページに掲載されています。

【参考】金融庁 つみたてNISAの対象商品

積み立て以外の投資信託や株式投資には、「NISA」を利用しましょう。

手堅い投資商品も存在する。まずは始めてみよう

投資とは、今ある資産とこれから入ってくる資産を計画的・戦略的に運用して、必要な時までに必要な金額を得るための方法の1つです。夢や目標に対する資金面からのアプローチといえます。

投資を始める前に夢や目標を明確にすることは、何を優先して何をする必要がないのかを見定めるために必要です。方向性がわかり効率的な考え方ができるように頭を整理できます。

投資は、少しでも早く始めることで経験と利益をより積み重ねることができますが、遅すぎるということもありません。大事なことは、最低限の知識を得てから始めることと、具体的な戦略を持って始めることです。「理解できないものには投資しない」など自分にとってのルールを決めてから始めましょう。

まずは、安定したものを少額から始めてみてはいかがでしょうか。始めてみることで、さらに知識が深まっていくことを実感できるでしょう。「豊かな人生のための投資」をぜひ始めてみてください。

文・井上 美鈴
家計管理・公的制度の紹介・教育費や老後資金の貯め方・奨学金・投資など「すぐに役立つお金の話」を分かりやすく伝えるファイナンシャル・プランナーとして活動。 シングルマザーや子育て世代の女性へ向けて、公的機関でのセミナー講師業や個別相談(対面・オンライン)を中心に行っている。 資格:AFP(日本FP協会認定)・証券外務員1種