株式投資で成果を出すための戦略としてはさまざまなものがありますが、高配当銘柄に注目するというのも1つの方法です。この記事では予想配当利回りが高い銘柄をランキング形式で紹介しつつ、配当の基礎知識や投資する際の注意点などについても解説していきます。
配当とは?すべての企業が配当を出しているわけではない
高配当銘柄に着目して株式投資をする際には、まず株式投資における「配当」の仕組みについて最低限の知識を有しておくことが重要です。
配当とは、企業が利益の一部を株主に対して分配・還元することを指します。配当が行われない「無配当」のケースもありますが、基本的には株式を保有していることで配当金を得ることができます。
投資の利益は「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」に分類されますが、株式投資の場合は売却益がキャピタルゲイン、配当がインカムゲインに相当します。
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予想配当利回りとは?
では続いて「予想配当利回り」について説明していきます。
配当の多寡を比較する投資指標
予想配当利回りは一般的には、「配当の多寡(多いか少ないかという意味)を比較するための投資指標」などと説明されます。
予想配当利回りの計算方法
予想配当利回りは次の計算式で算出されます。
1株当たり予想年間配当金÷株価×100(%)=予想配当利回り(%)
たとえば、1株当たり予想年間配当金が10円で株価が1,000円の場合と、1株当たり予想年間配当金が20円で株価が1,000円の場合は、それぞれ予想配当利回りは以下のように計算されます。
10円÷1,000円×100=1.0%
20円÷1,000円×100=2.0%
このように、1株当たり予想年間配当金が高ければ、その分、予想配当利回りも高くなります。
1株当たり予想年間配当金は、企業が決算発表の際やIRページで公表しているケースと公表していないケースがありますが、非公表の場合はアナリストなどによる配当予想などを基に算出されることもあります。
また、予想配当利回りには株価の変動も影響してきます。1株当たり予想年間配当金が10円のケースで、株価が1,000円から2,000円に上がった場合と、株価が500円に下落した場合の予想配当利回りを比較してみましょう。
10円÷2,000円×100=0.5%
10円÷500円×100=2.0%
このように、株価が上がると予想配当利回りは下がり、株価が下がると予想配当利回りは上がります。つまり高配当利回りを狙うのであれば、1株当たり予想年間配当金に着目するだけではなく、株価が下がったタイミングで購入することも重要になってきます。
期末まで予想年間配当金が一定とは限らない
先ほど、株価が変動することで予想配当利回りが変化することについて説明しましたが、企業が公表している予想年間配当金が期末まで一定とは限りません。業績の善し悪しによって配当予想を上方修正することや下方修正することがあるので、注意しましょう。
予想配当利回りをチェックする方法
ここまで予想配当利回りの計算方法について解説してきましたが、自分で銘柄ごとに予想配当利回りを計算して比較するのは大きな手間です。日本経済新聞の公式ウェブサイトなどで予想配当利回りのランキングなどが紹介されているので、そうしたデータを活用するのがよいでしょう。
まず株式市場全体などにおける予想配当利回りの平均値の確認を
各銘柄の予想配当利回りをチェックする前に、株式市場全体や主要な株価指数を構成する銘柄の予想配当利回りの平均値を確認しておくと、各銘柄の予想配当利回りが高いのか低いのかを判断できます。
こうした予想配当利回りの平均値も日本経済新聞の公式ウェブサイトで公表されています。ちなみに2020年12月8日時点の予想配当利回りの平均値は以下の通りとなっています。
<平均配当利回り>
指標 | 予想配当利回りの平均 |
日経平均 | 1.74% |
JPX日経400 | 1.45% |
日経300 | 1.60% |
東証1部全銘柄 | 1.65% |
東証2部全銘柄 | 1.79% |
ジャスダック | 1.54% |
※出典:日本経済新聞社
東証一部上場企業の予想配当利回りランキング
では続いて、東証一部上場企業の予想配当利回りランキングをみていきましょう。
予想配当利回りランキングはYahoo!ファイナンスの2020年12月8日時点のデータを引用しますが、このデータはあくまで2020年12月8日時点のデータであるということを念頭に置いておいてください。
これまでにも説明した通り、株価は時間が経つにつれて変化するものですから、この記事を読んでいる時点ではすでに予想配当利回りランキングも異なる結果となっています。
▽東証一部予想配当利回りランキング ※会社予想ベース
ランク | 予想配当利回り | 銘柄名 |
1位 | 7.41% | 株式会社コナカ(7494) |
2位 | 7.16% | 芝浦機械株式会社(6104) |
3位 | 7.15% | JT(2914) |
4位 | 7.06% | コニカミノルタ株式会社(4902) |
5位 | 6.75% | ソフトバンク株式会社(9434) |
6位 | 6.65% | 菱洋エレクトロ株式会社(8068) |
7位 | 6.60% | 株式会社あおぞら銀行(8304) |
8位 | 6.46% | 日本郵政株式会社(6178) |
9位 | 6.32% | 株式会社東和銀行(8558) |
10位 | 6.27% | 株式会社淺沼組(1852) |
11位 | 6.23% | グランディハウス株式会社(8999) |
12位 | 6.21% | ENEOSホールディングス株式会社(5020) |
13位 | 6.17% | 株式会社三井住友フィナンシャルグループ(8316) |
14位 | 6.14% | 株式会社ジャステック(9717) |
15位 | 6.01% | 株式会社長谷工コーポレーション(1808) |
16位 | 5.99% | 三機工業株式会社(1961) |
17位 | 5.98% | 株式会社ゆうちょ銀行(7182) |
18位 | 5.96% | 株式会社フォーラムエンジニアリング(7088) |
19位 | 5.88% | 株式会社オンワードホールディングス(8016) |
20位 | 5.74% | 株式会社SANKYO(6417) |
※()内は証券コード
※出典:Yahoo!ファイナンス
銘柄ごとの予想配当利回りランキングの首位は「株式会社コナカ」で7.41%となっており、20位の「株式会社SANKYO」でも5.74%です。先ほど紹介した「東証1部全銘柄」の予想配当利回りは1.65%でしたので、上位20位はかなり高い予想配当利回りであるといえます。
このランキングの30位は「フィデアホールディングス株式会社(8713)」で5.41%、40位は「株式会社佐賀銀行(8395)」で5.14%、50位は「小松ウオール工業株式会社(7949)」で4.94%となり、50位前後になって初めて5%を割る予想配当利回りとなっています。
ちなみに、日本経済新聞が公式サイトに掲載している2020年12月8日時点の予想配当利回りランキングでは、「株式会社インターワークス(6032)」が9.09%で1位となっています。Yahoo!ファイナンスのランキングとはなぜ異なる結果となったのでしょうか。
その理由は、株式会社インターワークスがその時点では1株当たりの予想年間配当金を公表していないことにあります。日本経済新聞のランキングでは記者予想ベースで予想配当利回りが算出されて比較が行われていますが、Yahoo!ファイナンスのランキングは会社予想ベースで作成されていますので、同社がランキングに登場していないのです。
高配当利回り銘柄に投資をする際の注意点
では最後に高配当利回り銘柄に投資する際の注意点に触れていきます。
業績が悪化すると減配やキャピタルロスのリスクが高まる
まず注意しておきたいのは、前述の通り、企業が事前に発表している予想年間配当金は、業績の善し悪しによって結果的に上下することがあり得るということです。
業績が悪化すると減配(配当金を減らすこと)となることもあり、株主側の視点でみると投資の成果が圧縮されることとなります。
また業績が悪化すると株価の下落リスクが高くなるため、保有株式の価値自体が低くなる可能性も出てきて、キャピタルロス(価格下落による損失のこと)につながっていきます。
こうした減配やキャピタルロスのリスクを100%避けることは難しいですが、その企業の財務指標や業績推移などを投資前に確認することで、業績悪化などの気配を分析することは可能です。
配当利回りから投資の研究を始めるのもおもしろい
この記事では、高配当銘柄に着目した投資手法の基礎知識や注意点について解説してきました。配当に着目した投資手法は投資前にある程度収益を予想できるというメリットがあり、堅実に投資の成果を出したいのであれば推奨される投資手法のひとつであるといえます。
また、高配当銘柄ランキングは株価の変動もあり日々刻々と変化しますので、定期的にランキングがどのように変動したか確認しながら、投資する銘柄を検討するのが良いでしょう。決算発表日などは株価の変動も起きやすいため、特にランキングの変化に注目したいタイミングです。
ただ、予想配当利回りだけに着目して投資銘柄を選ぶことにはリスクも伴いがちです。投資前にその企業の売上高や最終損益の推移のほか、この記事では詳しくは触れませんが「PER(株価収益率)」などから投資価値を判断することも重要です。
ネット証券会社によっては、単純な配当利回りランキングのほか、さまざまな財務指標などを確認・比較しやすいツールを提供しており、銘柄選択に大いに役立ちます。こうしたツールをうまく活用できるかでも投資の成果が変わってきますので、ネット証券選びにもこだわりたいところです。
※本記事は2020年12月現在の情報をもとに制作しています。実際の投資の際には最新の情報を確認してください。
文・岡本 一道
政治経済系ジャーナリスト。日本の国内メディアと海外メディアの両方でのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会・文化など幅広いジャンルにおけるトピックスで多数の解説記事やコラムを執筆。ニュースメディアのコンサルティングなども手掛ける
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