投資に興味のある人なら「ナスダック指数」や「S&P500種指数」のキーワードを見かける機会も多いでしょう。しかし、あらためて「ナスダックやS&P500ってどんな違いがあるの?」と聞かれると、不明確な部分もあるのではないでしょうか。ここでは両者の違いや最近の傾向、2021年予測、具体的にこれらの指数に投資する方法などを解説します。

金融
(画像= tokujiro/stock.adobe.com)

目次

  1. ナスダック指数とは?S&P500種指数とは?
  2. ナスダック指数とS&P500種指数の違い
  3. 2021年のナスダック指数、S&P500種指数はどうなる?
  4. ナスダック指数、S&P500種指数に投資をする方法
  5. ナスダック指数、S&P500種指数をテーマにした投資信託の選び方
  6. まとめ:分散投資に適したナスダック指数やS&P500種指数は2021年も人気は不変

ナスダック指数とは?S&P500種指数とは?

ナスダック指数とS&P500種指数はどちらも、アメリカの株式マーケットの代表的な指数です。ただし以下のような違いがあります。

ナスダック総合指数とは

ナスダックはアメリカの新興企業の株式市場で、ハイテク企業やIT企業が数多く上場しています。ナスダック総合指数は、ナスダックに上場する全株式を時価総額加重平均で計算した指数です。

最近のナスダックのトピックは、ナスダックに上場する企業は、最低限1人の女性と1人の人種的マイノリティ(またはLGBTQ:セクシュアルマイノリティの総称)を役員に任命することを義務づける新たな規則ができたことです。先進的な企業が集うナスダックらしい試みといえるでしょう。

ナスダックに上場している企業例は次の通りです。日本でもおなじみの注目企業がずらりと並びます。

アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、テスラ、アルファベット、ペイパル・ホールディングス、アドビ、ネットフリックスなど

ナスダック100指数とは

ナスダック指数には総合指数の他に「ナスダック100指数」もあり、こちらもよく金融商品で使われます。これはナスダック市場に上場する銘柄のうち、時価総額の大きい上位100銘柄(金融系を除く)で構成する指数になります。

S&P500種指数とは

S&P500種指数は、アメリカの主要産業(工業系銘柄を中心に運輸系・公共系・金融系など)を代表する500社の株価指数です。この指数に組み入れられている企業だけでアメリカの株式市場全体の75~80%を占めていて、大型株(時価総額の大きい銘柄)全体の動向をつかむのに向いています。

S&P500種指数のトピックは、電気自動車で知られるテスラが2020年12月21日から組み入れられることです。S&P500種指数に新規で加われば、年金基金や上場投資信託などの運用機関から買いが入りやすいため、その期待からテスラ株は高騰、S&P500種指数の影響力が改めて世に示されました。
S&P500種指数に選ばれている企業例は次の通りです。こちらも日本で知名度の高い企業が並びます。ナスダック指数の対象企業も数多く含まれます。

アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、バークシャー・ハサウェイ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、J.P.モルガン、VISAなど

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ナスダック指数とS&P500種指数の違い

ナスダック指数もS&P500種指数も、アメリカの株式マーケットの大きな流れをつかむ指標という点では共通です。たとえば、アメリカに有事が起こったりアメリカ経済が大打撃を受けるできごとが起きたりすれば、どちらも大きな影響を受けます。

ただナスダック指数は新興企業が中心なのに対し、S&P500種指数は工業系企業の割合が高いのが特徴です。そのため、新興企業に限定する悪材料が出れば、ナスダック指数が大きな影響を受けます。一例では、IT企業に不利な法規制が立案されたといったケースです。一方、S&P500種指数でも、ナスダック指数と同じ企業が多く組み入れられているので無傷ではいられません。

こういった背景を踏まえながら、アメリカの株式マーケット全体に幅広く投資をするならS&P500種指数、とくにアメリカの新興企業にフォーカスして投資をしたいならナスダック指数を選ぶのがよいでしょう。

ナスダック指数、S&P500種指数の最近の推移

近年のナスダック指数、S&P500種指数は好調といわれますが、その中身を詳しく見てみましょう。

ナスダック指数の最近の傾向

下記の表は2015年以降のナスダック総合指数のその年の終値(2020年のみ原稿執筆日)と前年比パーセントです。ちなみにナスダック総合指数は、1971年の終値を基準値100として計算されています。

※なお、同じナスダックでも「ナスダック100指数」は、1985年1月31日時点の値を125として算出しています。

▽2015-2020年のナスダック総合指数の終値比較

年(最終日) ナスダック指数 前年比
2020/12/21 12,742 42%
2019/12/31 8,972 35%
2018/12/31 6,635 -3.9%
2017/12/29 6,903 28.2%
2016/12/30 5,383 7.5%
2015/12/31 5,007 5.7%

(引用:株探「NASDAQ」)※小数点以下は省略

2015年以降、前年比がマイナスだったのは2018年のみです。残りの5回はすべてプラスで推移しています。ナスダックの「前年比プラスが優勢」という流れはさらに長いスパンで見ても同様です。たとえば、ここ20年間で前年比がマイナスだった年は5回で、残りの15回はプラスで推移しています。

最近の推移に視点を戻しましょう。着目したいのは2019年に入ってからの力強い伸びです。2019年末で前年比35%、2020年は12月中旬までで前年比40%超です。伸び率が高いため、警戒心の強い投資家は「ナスダックは割高なのではないか。調整が入るのではないか」という視点になってしまうのも仕方ないといえます。

ただ過去には前年比80%超の年もありましたし(1999年)、50%超の年もありました(2003年)。そのため、伸び率が高いというだけで「そろそろ下がる」と考えるべきではないでしょう。あくまでも市場背景を分析して判断するのが賢明です。

S&P500種指数の最近の傾向

S&P500種指数の方はチャートで確認してみましょう。2020年前半はコロナショック、2018年末は金利上昇やGAFAの業績悪化の影響で急落しましたが、全体で見るとナスダック同様にやはり力強い伸びを示しています。

S&P500種指数が好調だったということは、アメリカの株式市場全体が好調だったということです。10年スパンで見ても右肩上がりなのは変わりません。

日本人の投資家でも「アメリカに投資をすればリターンは得られる」とアメリカの株式市場に信頼を寄せる人も少なくありませんが、こういった過去の実績を見ると、その意見にも説得力はあります。

※ただし、さらに長期スパンで見ると、アメリカの株式市場が長期低迷したこともあります。

2021年のナスダック指数、S&P500種指数はどうなる?

2021年のナスダック指数、S&P500種指数の予測については、ウォール・ストリート・ジャーナルの「2021年の市場見通し、言い当てるのは困難」というコラム記事(2020年12月21日付)がヒントになるでしょう。

このコラム記事を執筆したのは、同紙の市場担当シニアコラムニストのジェームズ・マッキントッシュ氏です。マーケットを熟知した専門家でさえ、予測しにくいのが2021年のマーケットなのです。

記事の冒頭でジェームズ・マッキントッシュ氏は、2020年の1月に著名なストラテジストが出したS&P500種指数の予測が的外れになったシーンを振り返りつつ、「2021年の市場を見通し、言い当てるのは困難」という結論に達しています。

なぜ見通しが立たないのかについてジェームズ・マッキントッシュ氏は 「100年に一度のできごとを予測するのは難しい」とシンプルな言葉で語っています。一方で彼は記事内で「市場はそうしたリスクをバリュエーションに反映していないようだ」とも語っていて、2021年の株式マーケットが余談を許さない状況であることを示唆しています。

ジェームズ・マッキントッシュ氏のような慎重派もいる一方、ナスダック指数、S&P500種指数は2021年も好調だという意見を提唱する金融の専門家も少なくありません。たとえば、クレディ・スイス・グループのストラテジストは「S&P500種株価指数は2021年末までにさらに12%上昇する可能性がある」と予測しています(米ブルームバーグ2020年11月19日付)。その理由として新型コロナウイルス感染のパンデミックが収束することを挙げています。

慎重派、楽観派どちらの立場をとるにしても、私たちはコロナ禍という非常時にいることを意識しつつ、投資をしていくべきでしょう。

ナスダック指数、S&P500種指数に投資をする方法

ナスダック指数、S&P500種指数に投資をする場合は2つの方法が考えられます。1つめは、これら指数の組み入れ銘柄に投資をするという方法です。そして、もう1つはこれらの指数をテーマにする投資信託を購入するというものです。

組入銘柄を直接購入する

組入銘柄に投資をするメリットは、ハイリターンを狙えることです。たとえば、ナスダック指数、S&P500種指数に組み入れられているアップル、アマゾン、テスラなどに投資をしてさらなる成長を狙うやり方です。デメリットは、その企業の業績が悪化したり、これらの企業に不利な経済環境になったりしたときに、ダイレクトな損失をこうむることです。

該当する投資信託を購入する

もう1つの投資方法であるナスダック指数、S&P500種指数をテーマにする投資信託を購入するメリットは、分散投資によるリスクヘッジができることです。100円など少額から購入できるので、投資初心者はこちらのほうがよいでしょう。

さらに「ナスダック指数、S&P500種指数のどちらに投資をすればよいか」という疑問のある人もいるかもしれません。これについては、安定性が高いのは伝統的企業も含めて数多くの企業を対象にしているS&P500種指数の方です。ただ成長性で見ると、本稿の前半で見てきたようにナスダック指数の方が過去の成長性は高いです。その反面、2000年前後にドットコム・バブルが起きたように新興企業淘汰のリスクがあります。

ナスダック指数、S&P500種指数をテーマにした投資信託の選び方

最後に、はじめてナスダック指数、S&P500種指数と連動する投資信託を購入する人向けに銘柄選びのポイントをご紹介します。

ナスダック指数をテーマにする投資信託の銘柄選びのポイント

各ネット証券で用意している銘柄検索システムを利用すると、ナスダック指数をテーマにした投資信託が複数表示されるはずです。ただ注意したいのは、一口にナスダック指数をテーマにした投資信託といってもさまざまな種類があることです。

・銘柄選びのポイント1:ナスダック指数でも投資範囲を絞って考える

1つめは「ナスダック指数のどの範囲に投資するファンドなのか」という点です。たとえば「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」(大和アセットマネジメント)はナスダック100指数に連動するファンドです。当然ながらナスダック総合指数と連動するファンドとは異なる値動きをします。また「三菱UFJ NASDAQオープン」(三菱UFJ国際投信)は、ナスダック銘柄のなかでも長期的な成長が期待できる企業を厳選したものです。

・銘柄選びのポイント2:レバレッジがかかっているとリスクも大きくなる

2つめは、「レバレッジがかかっているか」です。「NASDAQ100 3倍ブル」(大和アセットマネジメント)は、ナスダック100指数の値動きの3倍程度となることを目指して運用するファンドです。逆に「NASDAQ100 3倍ベア」は、ナスダック100指数の値動きの3倍程度“逆となること”を目指しています。当然ながらナスダックが好調な局面では、値下がりし続けることになります。

・銘柄選びのポイント3:為替ヘッジの有無でリスクが変わる

3つめは「為替ヘッジありかなしか」です。「為替ヘッジなし」のファンドを選ぶと、円安になるとリターンが増えますが、円高に振れたときのリスクが大きいです。為替変動リスクを軽減したいのであれば「為替ヘッジあり」のファンドを選ぶとよいでしょう。例えば、「三菱UFJ NASDAQオープン」にはAタイプ(為替ヘッジあり)とBタイプ(為替ヘッジなし)が用意されています。同じシリーズでも為替ヘッジありなしでリターンが変わってきます。

ここまで紹介したもの以外にも、ナスダック指数と連動するファンドには、ナスダック100指数の2倍程度のリターンを目指す「iFreeレバレッジ NASDAQ100」などもあります。

S&P500種指数をテーマにする投資信託の銘柄選びのポイント

S&P500種指数をテーマにする投資信託もナスダック指数と同様に「レバレッジがあるか」「為替ヘッジがあるか」などが銘柄選びのポイントになります。

S&P500種指数と連動する投資信託のなかで、圧倒的人気の銘柄は「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」です。「eMAXIS Slim」 は、三菱UFJ国際投信が運用する業界最低水準の運用コストを追求するシリーズです。「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2019」で20本中7本を「eMAXIS Slimシリーズ」 が占めたほどの人気ぶりです。

S&P500種指数の動きと連動する成果(配当金込み・円換算ベース)を目指す「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は同アワードで2位にランクインするなど人気の高い銘柄です。楽天証券の投資信託買付ランキングでも全銘柄で1位となっています(2020年12月21日現在)。

S&P500と連動する投資信託でレバレッジ型の銘柄には、「iFreeレバレッジ S&P500」(大和アセットマネジメント)があります。S&P500の値動きの2倍程度(米ドルベース)となることを目指したファンドです。

まとめ:分散投資に適したナスダック指数やS&P500種指数は2021年も人気は不変

株式の投資初心者は、日本国内の銘柄に偏る傾向がありますが、やはり投資の基本は分散投資です。日本の株式だけでなく、海外にも分散投資をしてリスクヘッジをしましょう。そのときに候補となるのが、ナスダック指数やS&P500種指数の組み入れ銘柄や関連する投資信託なのです。

文・本間 貴志
ビジネス書に特化した編集会社のサラリーマン・ライターを経て、資産運用や税務の分野を専門とするライターとして活動。自身で賃貸物件の経営や、年間で億単位の株式売買も行っている

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