本記事は、西尾太氏の著書『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(星雲社)の中から一部を抜粋・編集しています

これからの働き方は大きく4つに分かれる

年収
(画像=タカス/PIXTA)

●働き方の「4つの選択肢」

これまでは、おもに正社員の年収についてお伝えしてきましたが、働き方の選択肢はそれだけではありません。契約社員、派遣スタッフ、アルバイト、パート、業務委託、フリーランスなど、さまざまな雇用形態・契約形態があります。

それらすべてを含めて、働き方には大きく分けて「4つの選択肢」があります。現在も、これからも、あなたはそのいずれかを選択していくことになります。そして、そのどれを選ぶかによって、年収の上限もほぼ決まってきます。

まずは、その「4つの選択肢」を見てみましょう。

(1)オペレーター

決められたことを指示通りに実行する働き方です。誰がやっても同じ結果が出ることが求められます。補助・育成クラスや自己完遂クラス、または契約社員、派遣スタッフ、アルバイト、パートなど、非正規雇用のケースが多いです。おもな職種の例として、販売職、一般事務、店舗スタッフ、工場のライン作業などがあげられます。

(2)オペレーティングマネージャー

決められたことを組織的に遂行する働き方です。上位組織から指示された目標を達成することが求められます。チーフクラス、プロジェクトリーダー・主任クラス、課長クラスなどが該当します。おもな職種の例として、営業マネージャー、チェーン店の店長、工場の職長、コールセンターのマネージャーなどがあげられます。

(3)スペシャリスト

専門的な領域で高い付加価値を出すことが求められる働き方です。医者や弁護士、クリエイターなど、起業・独立して自営するケースも多く、企業内で仕事を行う場合でも業務委託や有期雇用契約社員である場合があります。

(4)コア人材

組織やチームを率いて、創造や変革による高い付加価値が求められる働き方です。部長クラス、役員・本部長クラス、社長・上級役員クラスなどが該当します。正社員が中心ですが、委任契約による年俸制の場合もあります。

ただ、部長以上ではなくても、組織を巻き込んで新たな価値を創出したり変革を主導したりするのであれば、ここにあたります。

下の図は「4つの選択肢」を図に表したものです。働き方には「運用=決められたことを決められた通りに行う」と「変革・創造=新たな価値を創造する、これまでのものを大きく変革して価値を出す」「個人で成果を出していく仕事」と「組織・チームを通じて成果を出していく仕事」という4つのベクトルがあります。

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(画像=『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』より)

図の左側にあたるオペレーティングマネージャーとオペレーターは決められたことを決められた通りに行う「運用」が求められる働き方、右側のコア人材とスペシャリストは、新しいものをつくる「創造」や物事を変える「変革」、それによる「付加価値」の提供が求められる働き方です。

図の上半分にあたるコア人材とオペレーティングマネージャーは「組織・チーム」の力によって成果を最大限にすることが求められる働き方、下半分にあたるスペシャリストとオペレーターは「個人」の力によって成果を最大限にすることが求められる働き方です。

これらの「4つの選択肢」のどれが偉いとか偉くないとか、どれが大変でどれが楽かということはありません。どの働き方にもそれぞれメリット・デメリットがあり、よい面もリスクもあります。

ただし、年収に限っていうと、どの働き方を選ぶかによって上限がほぼ決まってきます。年収1000万以上を望む場合には、図の「右側」を目指す必要があります。「4つの選択肢」によって想定される、年収について詳しく見てみましょう。

●「これからの働き方」によって想定される年収

(1)オペレーター 想定年収200万~400万

正社員の場合は「育成期間」にもあたる時期です。指示されたことを指示されたとおりにできれば、年収は300万くらいになります。

報連相などの基本的なビジネスマナーを身につけ、お客様の情報収集を行い、自分のことが客観的に見られて、協調性があり、周りの人の気持ちがわかって、それなりの品質が保てて、頑張ろうという成長意欲があり、自分で考え自分で動け、誠実に対応できて、ルールやマナーが守れて、それなりのエネルギーがあり、人に教えることもできたら、年収400万くらいまではいけます。

ただし、これらのことができず、社会人としての常識が欠けているような場合は、正社員は難しく、年収200万、場合によって年収100万円代ということもあり得ます。

非正規雇用の場合は、働いた時間で給与が支払われます。働ける時間には、おのずと限界があります。時給1000円のアルバイトが時給3000円に大幅アップしたりすることも考えにくいため、年収としては300万くらいが上限となります。

専門性の高い派遣スタッフは時給3000円以上のケースもあるため年収400万、場合によっては500万まで行くこともありますが、それくらいが上限となるでしょう。正社員や契約社員であっても同様です。

(2)オペレーティングマネージャー 想定年収400万~700万

小単位の組織を任される、いわゆる中間管理職です。言われたことを言われた通りにできたり、自分ひとりで仕事を完遂できるだけでなく、人に指示を与えて成果を出す仕事ができるようになると、年収400万円を超えてきます。

年収は、影響力の範囲に比例します。

チームやプロジェクト、課のメンバーに動機づけを行い、メンバーを巻き込んで目標を達成する、現状を改善する提案を行い、それが認められて成果につながり、責任を持つ人数が増えていくなど、任された組織の規模が大きくなるにつれ、より大きな影響力の発揮が求められ、その成果によって年収が決まってきます。

部下が3〜5人なら年収500万、5〜10人なら年収600万が目安です。課長クラスは、戦略策定をするなど、新しい価値創造や組織変革をする力を身につけないと700万くらいが上限です。それ以上は、部長クラスのスキルが必要となってきます。

課長クラスのスキルでも700万以上、会社によっては1000万以上の年収をもらっている人もいますが、リストラ候補になりやすい危険な状態です。

より高いレベルのコンピテンシーを獲得して、マネジメント力をアップデートしないと、給与を下げられ、退職勧奨を受けるなど、現在の会社に残り続けることが難しい状況になるかもしれません。

(3)スペシャリスト 年収0~1000万以上

自身の専門性を活かした働き方です。医者や弁護士などの専門職は、専門性や付加価値が高くなるほど収入が高くなり、年収1000万を超える人が多くいます。

ただし、自営業は収入が不安定な面があり、専門技術が陳腐化する、顧客や社会の信用を失うなどの事態によって依頼がなくなれば、廃業ということもあり得ます。

たとえば最近の小学生が希望する職業ナンバーワンといわれる「ユーチューバー」も、年収5億円以上の人もいれば、毎月の収入が数万円、あるいはゼロという人もいます。Webデザイナーやプログラマー、エンジニアといった専門職のフリーランスも、誰がやっても同じ結果を求められるオペレーティブな仕事が中心の場合は、年収300〜400万、高くて500万といったケースが多いです。

1000万以上の高収入を得るには、希少価値の高い専門性を持ち、名指しで仕事が来る、「先生」などと呼ばれる業界でも一目置かれる存在になる必要があります。

(4)コア人材 年収700万~1000万以上

部長や役員クラスなど、企業経営を行う幹部・幹部候補は年収700万以上となり、中小企業の社長でも年収1500万、大企業の社長なら何十億ということもあります。

組織の中で年収1000万以上を望むなら、部長以上を目指すことになります。部長クラス以上に求められるのは、ビジョンや戦略の策定や変革力です。

経済動向、景気、マーケットの状況を広く把握して、3年後、5年後の自社や自部門の姿を具体的に示す。前例や慣習にとらわれず、新たな取り組みを行うことによって組織改革や新規事業の創出を行う。考え得るリスクを想定し、その責任を負う覚悟や、たとえ抵抗があっても反対勢力に屈しない強さや信念が求められます。

また、いま部長でなくても、会社に新規事業など新たな価値創造を提案し、承認を得て、その事業で成功し、事業部や子会社を設立してトップになるなど、大きな成果を出せば、それはコア人材であり、高い年収も望めます。事業が成功すれば、ですが。

コア人材は、価値の創造や組織の変革に成功すれば、それに応じて高い収入を得られます。ただし、それができなければ、相応の負債を負うリスクがあります。

人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準
西尾太(にしお・ふとし)
人事コンサルタント。フォー・ノーツ株式会社代表取締役社長。「人事の学校」「人事プロデューサークラブ」主宰。1965年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。いすゞ自動車労務部門、リクルート人材総合サービス部門を経て、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)にて人事部長、クリエイターエージェンシー業務を行なうクリーク・アンド・リバー社にて人事・総務部長を歴任。これまで1 万人超の採用、昇進面接、管理職研修、階層別研修を行なう。パーソナリティとキャリア形成を可視化する適性検査「B-CAV test」を開発し、統計学に基づいた科学的なフィードバック体制を確立する。中でも「年収の多寡は影響力に比例する」という持論は好評を博している。著書に『人事担当者が知っておきたい、10 の基礎知識。8 つの心構え。』(労務行政)、『人事の超プロが明かす評価基準』(三笠書房)、『働き方が変わる、会社が変わる、人事ポリシー』(方丈社)、『プロの人事力』(労務行政)などがある。

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