本記事は、西尾太氏の著書『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(星雲社)の中から一部を抜粋・編集しています
年収別に必要な仕事のスキルを明確に知っておこう
会社が「各クラスに求めていること」とは何か?
では、一般的な目安とされている「年収基準」を公開します。ここで紹介されているコンピテンシー=評価基準は、社員2000名の上場企業から社員3名のベンチャー企業まで成長しているさまざまな会社で実際に導入・運用されているものです。
チーフや主任といった等級や職位の呼称は会社によって異なりますが、呼称が違っても、昇格するごとに求められる行動は、どんな会社もほぼ変わりません。
また、会社の特性によってクラスごとに求めるコンピテンシーが異なる場合もあります。たとえば「うちは採用時から『主体的な行動』を求める」「もっと下のクラスから『進捗管理』が必要」などですが、基本的な考え方は共通しています。
まずは、現在の自分のクラスに求められているスキルや行動は何か、そして今後必要となるのはどんなことかを確認してください。
現在の自分に求められていること、これから求められることが認識できれば、年収を高める方法や成長ステップの指標になるはずです。
ちなみにコンピテンシーは年収を上げるうえで「欠かせないもの」であり、他のクラスのコンピテンシーが必要ないわけではありません。
たとえば、現在は「課長」であっても、課長クラスに求められるコンピテンシーだけを達成すれば評価されるわけではありません。
当然、その前段階である「自己完遂クラス」「チーフクラス」等のコンピテンシーも求められ、できて当然とされます。
自己確認の意味でも「補助・育成クラス」から順を追ってチェックしていきましょう。
それでは最初に「各ポジションに求められている人材像」を確認していただき、各クラスの「年収基準」と、必要とされるコンピテンシーを見ていきましょう。
■各ポジションに求められている人材像
●補助・育成クラス
社会人の基本を身につけ、協調性をもってチームの一員として仕事をする。指示を受けながら、業務を遂行する。成長のための学習を怠らない。
●自己完遂クラス
任された仕事を完遂する。相手の気持ちに共感し、安心・安定感を抱かせ信頼を得る。新たな動きに前向きに取り組む。適切な報連相を行い、チーム内で信頼されている。
●チーフクラス
自分の仕事の完遂とチームメンバーの支援、後輩指導を行う。状況を客観的に見たうえで、自ら率先して行動する。
任された仕事の進捗を管理し、やり遂げる。問題の本質を見ることができ、業務における判断とアウトプットの品質が信頼されている。アイデアを適切にわかりやすく企画にまとめ、提案することができる。
●プロジェクトリーダー・主任クラス
プロジェクトを率い、目標達成のための進捗を適切に管理し成果を出す。周囲のメンバーの士気を高める働きを行い、活性化したチームにする。
柔軟性が高く、その状況判断は信頼を得ている。多くのアイデアを出し、常に改善を心掛け、実績を上げる。自身の考えを有効に伝えるプレゼンテーション能力にすぐれ、相手に理解されている。
●課長クラス
任された5名〜10名のチームの目標設定・計画立案を適切に行い、計数の管理も行いながら、成果を上げる。
チームメンバーそれぞれの人材育成に責任を持つ。傾聴力があり、メンバーから信頼されている。部門単位の決断のための有効な解決策を、論拠を持って示す。
一定領域の専門性を有し、社内で認められている。発想はこれまでのものにこだわらず、変革を実現する。
●部長クラス
3年程度の部門の戦略を策定し、経営の承認を得て、メンバーに示す。明確な部門の目標を設定する。優秀な人材を引き上げ、仕事を任せることにより育て、また人材育成の仕組みをつくり、実績を上げる。
重要な決断のための解決策を十分練って経営に提言する。経営からも同僚・部下からも信頼される説得力を有している。
●役員・本部長クラス
組織のビジョンを描き、そこに至る戦略を策定し、経営の承認を得て、組織メンバーに示す。
大きな組織を率い、目配りがきく。優秀な人材についての見る目を持っており、チャンスを与えて引き上げる。
社内外に人脈を持ち、ビジネスに活用している。適切に決断し、その決断の責任を負う。
●社長・上級役員クラス
スケールの大きさが問われる。会社全体のビジョンを示し、そこに至る戦略を描き示す。大きな組織を率い、ゆるぎない信念で多くの人たちを導く。広い人脈を持ち、社会的にも影響を及ぼす。重要な決断をタイムリーに行い、全責任を負う。ゆるぎない信念で、組織を導いていく。
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