「高所得サラリーマンは2020年から増税」という話を耳にした人は多いだろう。具体的には、平成30年度税制改正で給与所得控除が減額されたので、給与収入850万円超の人 (子育て世代を除く) は税負担が増したという話だ。

所得が増えると、原則として所得税だけでなく住民税の負担も増える。

上記の税制で算出される「令和3年度の住民税」は、2021年6月から始まる。今回は平成30年度税制改正における個人所得課税のポイントを復習しつつ、住民税に関する変更点について解説する。

高所得者の負担が増した「平成30年度税制改正」

2021年6月から変わる住民税 ! 高所得者ほど負担が増える ?
(画像=umaruchan4678 / stock.adobe.com)

「平成30年度税制改正」における個人所得課税の大きな変更点は、以下の4つだ。

(1) 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除への振替
(2) 給与所得控除の適正化
(3) 公的年金等控除の適正化
(4) 基礎控除の適正化

平たく言えば、高所得者の負担を増やしたということだ。

(1) では働き方の多様化を踏まえ、特定の収入のみに適用される給与所得控除と公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、どのような所得にも適用される基礎控除の控除額を10万円引き上げた。この変更だけであれば、10万円を控除する対象を変えただけなので税負担は変わらない。

(2) では、上記のとおり給与所得控除が一律10万円引き下げられたことに加えて、上限額が220万円から195万円に引き下げられた。また、上限額が適用される給与水準が以前の給与収入1,000万円超から850万円超に引き下げられたので、給与収入850万円超から徐々に税負担が増えることになった。冒頭の話は、この (2) を指している。

(3) は、これまで高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みになっていたことを是正する改正だ。具体的には、公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に195.5万円の上限を設けたり、公的年金等以外の所得金額が1,000万円を超える場合は控除額を引き下げたりした。

(4) でも、高所得者狙いの増税が行われた。所得の多寡に関わらず一定金額を控除できる基礎控除は、これまでは誰でも一律38万円だったが、合計所得金額2,400万円超から控除額が減っていき、2,500万円超はゼロとした。 (2) に比べると対象者が少ないため、メディアなどで知る機会はあまりなかったかもしれない。

2021年6月からの令和3年度住民税への影響は ?

ここからは、2021年6月から始まる令和3年度住民税について解説する。住民税 (個人住民税) は、地方自治体等が行う行政サービスに必要な経費を、その能力 (担税力) に応じて住民に負担してもらうものだ。個人の住民税には①所得割②均等割③利子割④配当割⑤株式等譲渡所得割があり、①と②については1月1日時点の住所がある地域で徴収される。

また、①は前年 (2020年1月1日~2020年12月31日) の所得金額に応じて課税されるので、上記の税制改正で増税になった人は原則として住民税 (の所得割) も増税になる。税率は地域によって若干異なるが約10%で、東京都の場合は都民税が4%、区市町村民税が6%である。

サラリーマン (給与所得者) の場合、住民税は6月から翌年5月まで毎月の給料から特別徴収 (企業が納税者に変わって納税すること) される。2021年6月分の給与明細は2021年5月分と見比べつつ、よく確認しよう。

ひとり親控除やコロナ関連の寄付金控除も

令和3年度住民税では、新設された「ひとり親控除」や「新型コロナウイルス感染症に係る寄附金税額控除の特例」などが適用される。

「ひとり親控除」では、前年の合計所得金額が135万円以下のひとり親の個人住民税が非課税となったり、合計所得金額が500万円以下のひとり親は総所得金額等から30万円が控除されたりする。

「新型コロナウイルス感染症に係る寄附金税額控除の特例」では、新型コロナウイルスの影響で文化芸術・スポーツイベントが中止、延期、規模縮小となった場合、チケット代の払戻しを請求する権利を放棄することで、その金額が寄附金税額控除の対象になる。ただし、指定されているイベントに限ることや、控除額に上限があることに注意したい。

住民税をきっかけに税金制度や自分の納税状況について知ろう

2021年6月から始まる令和3年度住民税は、原則として高所得者ほど負担が増える。特に、高額の給与所得を得ている人は注意が必要だ。

増税対象でなかったとしても、改めて給与明細をよく見て「自分はどれくらい税金を払っているのだろうか」と確認すると良いだろう。税金が源泉徴収されるサラリーマンは、経営者や個人事業主に比べて税金に関心がない人が多い。

脱税はいけないが、税負担を減らすことは資産形成において非常に重要だ。その第一歩は、税制や自分の納税状況についてよく知ることだろう。

(提供:大和ネクスト銀行


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