6月22日、富士通 <6702> の株価が一時2万0040円まで買われ、年初来の高値を更新した。富士通株の2万円台乗せは2001年1月以来、約20年ぶりのことである。今年1月4日の安値1万4610円からの上昇率は37.2%だ。後段で述べる通り、富士通は2021年3月期決算で過去最高益を更新したほか、次世代通信規格「6G」やスーパーコンピュータ、量子コンピューターへの期待も高まっているようだ。
今回は富士通の話題をお届けしよう。
システムインテグレーターとしての強みを発揮
富士通の歴史はNTT <9432> を抜きに語ることはできない。NTTの前身である日本電信電話公社は1985年にNTTとして民営化するまで日本の電話事業を独占していた。富士通やNEC <6701> 、沖電気工業 <6703> は「電電ファミリー御三家」と呼ばれ、電話機、電話交換機、電話網などの開発・整備に携わっていた。その後、NTTの民営化とともに「電電ファミリー御三家」も通信機器やパソコン、半導体、携帯端末など事業の多角化を加速させたのである。
富士通は日本のパソコン黎明期をリードし、1990年代以降は携帯端末(ガラケー)でも事業を拡大した。しかし、スマートフォンやタブレットの普及による需要低下等で厳しい状況に追い込まれる中、2017年には中国のパソコン大手レノボとPC事業を展開する合弁会社「富士通クライアントコンピューティング(FCCL)」の設立を発表、レノボがFCCLに対して51%出資して経営の主導権を握ることとなり、富士通は実質的にPC事業をレノボに売却する形となった。さらに2018年には携帯子会社の富士通コネクテッドテクノロジーズのほか、製造子会社である富士通周辺機の携帯電話部門を投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループに売却すると発表。これら事業の主導権はポラリス・キャピタル・グループに移り、富士通は携帯電話事業から事実上撤退することとなった。