不動産事業と不動産サービス事業を両輪として、前期までに18期連続で増収増益を達成したプロパティエージェント。前編では、中西社長が掲げる経営理念やコロナ禍における不動産市場の状況などをお届けしましたが、後編では前編に引き続き、最新技術を活用した「不動産サービス事業」や業績の見通しなどについて、経済アナリストの馬渕磨理子さんが中西社長にお話をうかがっていきます。

(※インタビューでは、撮影時以外のマスク装着やソーシャルディスタンスの確保など、新型コロナウイルスの感染防止に対する十分な配慮を行っています)

プロパティエージェント(前編)
(画像=ZUU online、撮影=末松正義)

識者プロフィール

中西聖 SEI NAKANISHI
プロパティエージェント株式会社 代表取締役社長
1977年2月6日生まれ、高知県出身。2004年プロパティエージェントを設立。明治大学大学院グローバルビジネス研究科修了(MBA)。2018年、東京証券取引所市場第1部銘柄に指定。「デジタル」×「不動産」で新たな価値を創造する事をコンセプトに、18期連続で増収増益を達成。2020年8月顔認証IDプラットフォーム、導入ソリューションを行うDXYZを設立し、代表取締役に就任。2021年には、子会社化したシステム開発子会社アヴァントの取締役に就任。デジタル化によりリアルとネットをつなげ、スマートな社会の実現を目指す。2013年に「シェアリングビジネス -消費者間取引におけるイノベーションの研究(Airbnb、Esty、BUYMAを題材にCtoC市場の研究を行い、消費モデルAISTAを構築)」、2015年に「不動産市場の透明性向上に貢献するビジネスモデルの構築」、など論文や原稿を執筆。
馬渕磨理子 MARIKO MABUCHI
経済アナリスト
京都大学公共政策大学院で法律、経済学、行政学、公共政策を学び、修士過程を修了。法人の資産運用・管理を行い、そこで学んだ財務分析・経営分析を生かして2016年からアナリスト業務を担当。個別銘柄の分析を手掛けるほか、フィスコ・シンクタンク研究員としてマクロ経済や世界情勢などの研究を行っている。現在はアナリストとして『フジテレビ「LiveNewsα」レギュラーコメンテーター、Yahoo!ニュース公式コメンテーター、ラジオ日経で自身の番組を持つなどメディア活動に力を入れている。ほかに、プレジデント』(プレジデント社)や『週刊SPA!』(扶桑社)、『日経ヴェリタス』(日本経済新聞社)などへの寄稿や日経CNBCへの出演など、各メディアで活躍中。著書に『株・投資ギガトレンド』(プレジデント社)、『5万円から始められる!黒字転換2倍株で勝つ投資術』(ダイヤモンド社)。

「業界で売り上げトップ」など3つの信念を掲げる

馬渕 御社はリーマンショックや現在のコロナ禍をものともせず、創業以来18期連続で増収増益を達成しています。今回はそうした御社の強みや今後のビジョンなどについてお話をうかがわせてください。まず、プロパティエージェント創業に至った経緯をお話いただけますか?

中西 最初はゼネコンに就職して物件の施行管理などを学んだあと、いわゆる不動産デベロッパーに入社しました。その会社では営業マンから始まり、その後営業部長を務めたのですが、会社での立場が上がっていくにつれ、「業界で一番いい商品を提供する」、「顧客に一番喜ばれる会社でありたい」という思いを持つようになりました。

そんな時、不動産会社の売上高ランキングを見て、当時勤めていた会社が70何位だったのですが、「超大手だってそんなに遠くないじゃん」と思ったんですね。それで、さらに先ほどの気持ちが強くなっていったわけですね。営業部長の身で勝手ながらにそう思っていました。

馬渕 なかなか壮大な思いですね。

中西 もうひとつ、ジム・コリンズの著書『ビジョナリー・カンパニー』に強く感銘を受け、先見性を持ち、長く続いて行く会社を作りたいという夢を持つようになったことも、起業のきっかけになりました。確か会社を3日くらい休んで、その本を2回ほど繰り返して読んだ気がします。

そこで、いかにいい商品を作るか、顧客に喜んでもらえる商品を作るかというビジョンをその会社の経営陣に持つよう動いたのですがダメでした。当時の経営陣は昔気質の不動産会社というか、「頑張って商品を売って儲ける」という価値観が強かったんだと思います。昔の日本ではそういう考え方が当たり前だったのかもしれません。ただ、それは自分が掲げるビジョナリー・カンパニーとはほど遠いものだったので、自分で起業するしかないなと考えるようになりました。

馬渕 経営陣と社長では会社の方向性に関するビジョンが違ったということですね。それでご自身の理念を掲げて起業されたと。

中西 そうですね。「一番いい商品を提供する」「顧客に一番喜ばれる商品を開発する」「業界で売り上げトップ」という3つの信念を持ち事業活動を続けています。不動産事業を拡大していくのはもちろんですが、不動産を買ったり売ったりすること以外に、「不動産サービス」の部分を充実させることを念頭に置いています。

創業して間もないころ、ちょうどREIT(不動産投信)や都心のオフィスを住宅に転換させる手法が海外から上陸したのですが、不動産業とは買ったり売ったり開発したりするだけではなく、さまざまな付加価値をつけていくものであるとも考えるようになりました。

馬渕 「不動産サービス」となると、何でもできてしまう印象がありますね。

中西 たとえば、いま私たちが手掛けている「宅配ロボット」事業では、その物件に宅配ロボットが荷物を届けてくれるサービスがあれば、その物件の価値は上がりますよね。単にその事業だけを取り上げると不動産とは全く関係ないように思われるかもしれません。そうした不動産の付加価値となる事業やサービスを「不動産サービス」と呼んでいますが、そういう観点からすると、何でもできてしまうというのも間違いではないかもしれません。

馬渕 御社はその宅配ロボットや顔認証技術など最新の技術を活用した事業を展開されていますが、そういうお考えのもと、従来の不動産会社の枠組みを超えた事業に次々と取り組まれているわけですね。

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(撮影=末松正義)

都心の「いい物件」はコロナ禍でもあまり値下がりせず

馬渕 御社の主力である投資用マンションについてお話をうかがわせてください。御社は「『デジタル』と『不動産』で価値を創造する企業」をコンセプトとされていますが、投資用マンションに関して都心にターゲットを絞っているのはなぜでしょうか。