中古マンション価格は当面高騰が続く
賀藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 代表(不動産鑑定士・CMA) / 賀藤 浩徳
週刊金融財政事情 2021年8月17日号
中古マンション価格の上昇が続いている。図表は、首都圏の中古マンション価格の推移である。各地域とも、コロナ禍による価格下落は2020年半ばまでには落ち着き、以降は上昇幅が拡大している。全国の住宅価格指数を見ても、マンションは20年前半に多少の下落が見られたものの、その後は元のトレンドラインに戻って上昇を続けている。
これらの理由については、次のような要因が挙げられる。まず、新築物件の価格が高止まり、ないし高騰を続けていることである。不動産経済研究所によると、首都圏の21年上半期の新築マンションの平均価格は6,414万円となった。前年同期(6,671万円)に比べ下落したものの、その水準は19年上半期の6,137万円を大きく上回る。近畿圏でも21年上半期の平均価格は4,360万円と、前年同期比8.3%増となった。新築価格が高くなり過ぎているため、まだ割安感を実感できる中古物件に人気が集まっている。
新築マンションは、分譲価格が供給者価格(用地の取得費、建築費等の実コストに利潤を上乗せした価格)であるため、価格が下方硬直的となる。また、人件費・材料費の上昇により実コストが上がっていることや、平成バブル崩壊時およびリーマンショック時と異なりデベロッパーの寡占化が進み、需要に応じ供給量を調整できる(数次にわたる分譲による分譲時期の後ずらしなど)ことも価格の高止まり・高騰を助長している。
加えて、超金融緩和が中古物件価格の上昇を後押ししている。史上最低水準に近い住宅ローン金利が、買い手の購買力を飛躍的に高めている。また、デベロッパーにとっても、金融機関の貸出態度が緩和的で、資金繰りの維持が可能となっていることから、価格を引き下げて売り急ぐ必要がない。
富裕層や住宅購入層の投資・購入意欲の増大も挙げられる。コロナ禍で所得に悪影響が生じたのは主として低所得層であり、富裕層や住宅購入層にはあまり影響が及んでいない。逆に、富裕層がコロナ禍でアクティブに消費できなくなった分を株や不動産に振り向ける動きが見られる。
プロの投資家が投資する大型の不動産に関しては、すでに価格のピークが到来しているというシンクタンクのアンケート結果が公表されている。しかし、中古マンションなどのエンドユーザーが購入する物件については、以上の理由からしばらく高騰が続きそうだ。今後、新築価格の頭打ちが明確になったときに、こうした状況が転換ないし逆回転する可能性が高まろう。
(提供:きんざいOnlineより)