ファーマーズサポートがユニコーンで株式投資型クラウドファンディング(ECF)を利用して資金調達を行います。そのため評判や実績を投資家目線でまとめたいと思います。
目標募集額や事業計画、サービス内容などもチェックしてみたいと思います。
今回のECFはアグリテック系の案件になり、ベンチャーキャピタルからの出資も受けています。人工知能(AI)を用いた畜産管理システムを行う企業になります。
母牛の画像情報を人工知能で解析し、分娩予兆を検出するサービスを行います。今後は他のサービスへも横展開していくそうです。
MOOVIE(モービー)という牛の分娩の予兆を検知するシステムを開発し、90%~95%という高い精度で分娩を検知できるそうです。MOOVIEを利用することで契約農家のストレスを軽減します。
代表の春日良一氏はNTT系企業に勤めた経歴があり、システム系に強みを持つ方のようです。かなりニッチな事業のようにも感じますが、地場からの応援も熱いと感じ取れます。
また、本クラウドファンディングはエンジェル税制優遇措置Bの適用が行われることになっています。
株主優待も付いているため早速内容を確認してみたいと思います。「牛のスマホ音源」には驚きと斬新さを感じ、少し笑ってしまいました!
【この記事を読んでわかること】
・畜産農家が減少し飼育戸数が減っていると説明している
・MOOVIEを利用することでどんなメリットがあるのか調べている
・企業概要とVC出資、さらに春日良一氏について調べている
・ビジネスモデルと特徴を調べ特許を取得していると説明している
・業績と上場(IPO)を行う時期、また株主優待優待の詳細を説明している
目次
ファーマーズサポートは何を解決できる企業なの?畜産農家の労力を改善できる可能性
同社代表の実弟から畜産業界の話を聞き、ICTを活用した農業や畜産業の生産性向上を目指す取り組みに着手したとあります。
NTTでの経験が大きく関係していると考えられます。代表の春日良一氏の経歴を確認するとNTT以外の企業でも取締役に就かれていました。
ファーマーズサポートは2017年9月から事業を行っているとあり、既に4年程度が経過しています。
同社の主力サービスは牛の分娩(出産)予兆を検知するシステムです。
牛舎にビデオカメラ等を設置しリアルタイムでモニタリングを行い、分娩予兆を検知すると飼い主のスマートフォンやタブレットに通知が届きます。
ビジネス内容は簡単に把握できるため、投資を行う前に深く考える必要はなさそうです。事業そのものは単純だと思います。
畜産業に人工知能(AI)やloTを用い、飼い主の労力やストレス軽減、さらに非接触による感染予防などが期待されます。
ユニコーン公式サイトでは、肉用牛の飼養戸数と頭数のグラフが掲載されています。2012年と2021年では飼養戸数が30%以上も減っています。
知人の実家も畜産農家を行っていましたが2件ほど廃業になっています。人が住んでいる地域では時代の変化もあり、難しい問題もあるようです。
様々な問題があり飼養戸数がどんどんと減っていると考えられます。
逆に肉用牛の数値がここ数年伸びていると言うことは、大規模な畜産農家が増えているのか?と考えることもできそうです。
また、畜産業界では子牛の死亡率の高さも問題視されており「2012年に出生した子牛264,298頭のうち7,807頭(約3%)が死亡」「2019年の全分娩頭数の8.6%にあたる11,558頭が胎児死」というデータが出ています。
【分娩事故が起こる要因】
・種牛が大型の場合、子牛も大きくなる傾向がある
・初産の牛は難産になりやすい
・逆子など母体内で正常でない姿勢になる
・産道が十分に開いていない状態で人が子牛を引っ張り出す
・予定日から時間が経ちすぎて子牛が大きくなる
・陣痛が弱い
※ファーマーズサポート調べ
畜産農家の方は分娩が近づくと夜間を含め1日中牛舎を監視することになり、労力やストレスなど多大な負担がかかるとされています。
この辺りの労力は知人から聞いたことはありませんが、テレビなどでたまに取り上げられているため何となく伝わってきます。
まとめると、同社のサービスを利用することで母牛の画像情報を人工知能で解析し、分娩予兆を検出することで、畜産農家の労力を軽減できると言うことです。
あとはコスト面の問題だと思います。導入を行い事業として継続できる畜産農家がどの程度いるのか?とそこも気になります。
ただ今後、エネルギーや食料資源の需給がひっ迫すると言われており、大きな目でみれば農林水産省が推し進めるSDGs(持続可能な開発目標)にも関係があると考えられます。
アグリテックは世界でも注目されていますからね。
企業概要を詳しく調べてみました
同社は畜産分野のDXに挑戦するベンチャー企業になります。
鹿児島銀行が出資するファンドの「かごしまバリューアップファンド」、宮崎太陽キャピタルが出資するファンドの「みやざき未来応援2号ファンド」などVCからの出資実績も確認できます。
項 目 | その内容 |
---|---|
会社名 | ファーマーズサポート株式会社 |
本社住所 | 〒892-0821 鹿児島県鹿児島市名山町9番15号 |
代表者名 | 春日 良一 |
設立年月日 | 42979 |
決算期 | 3月 |
事業内容 | 畜産をはじめとした一次産業向けに、ICT・人工知能などを活用したシステムの研究開発ならびに提供 |
資本金 | 28,900,000円 |
発行済株式数 | 4,608株 |
主要株主 | ・春日 良一(代表取締役)及び役員関係株主 49.4% ・ベンチャーキャピタル(2社) 50.6% |
※2021年8月25日調べ
株式投資型クラウドファンディング(ECF)で集めた資金の使途は、システム開発費用や広告宣伝費、運転資金、人件費に充てられる予定です。
また、発行株式数4,608株からバリュエーションを計算すると約6,900万円になります。
既に導入している畜産農家が複数あるそうです。今期は営業利益が赤字予想となっていますが来期は黒字化する見込みのようです。
多数のメディアに取り上げられており、地方ではあるもののテレビ(KKB鹿児島放送)で取上げられています。牛の出産の兆候を検知するシステムの販路開拓に取り組む鹿児島市の企業と表現されています。
販路が拡大できれば面白いかもしれません!
ファーマーズサポートのビジネスモデルと特徴を考察!!
同社は2017年9月に、情報通信技術を活用する畜産管理システムの特許(特許第6203238号)を取得しています。
また、ビデオカメラの映像からAI(人工知能)で分娩予兆を物体検知できるシステムの特許を出願中となっています。
この機能はMOOVIEしか備えていないため大きな特徴となります。
ビジネススキームは上記のようになります。
パナソニックとパナソニックi-PROセンシングソリューションズからビデオカメラを仕入れ、シナプスでAIサーバー管理を行います。また、ゲートウェイBOXの製造はコネクシオに委託しています。
販売は、一次特約店と二次特約店(約200社)を介して全国の畜産農家にサービスを提供する流れになります。
ファーマーズサポートはMOOVIE(モービー)の開発や管理、システムメンテナンスなどを行うようですね。現時点でクラウドなどによりアップデートが常に行われる仕組みかどうかは判断ができませんでした。
MOOVIEは牛舎にビデオカメラを設置して、スマートフォンやタブレットを通してリアルタイムで牛の状況を確認できます。分娩予兆が表れた際に畜産農家に通知が届く仕組みです。
これにより畜産農家の負担は大きく軽減され、他の作業に集中することができます。
あとはこのシステムを導入できる畜産農家がどれだけ日本にいるかだと思います。小規模だとなかなか難しい気もします。
商品構成は牛舎に設置するゲートウェイBOX、監視カメラ、LEDライトそれぞれ1台を1セットとし、オープン価格で販売しています。参考価格は初期費用50~60万円、月額1万数千円となっていました。
製品化するまでに大学校や農業高校、畜産農家などで実証実験を重ね90%~95%という高い精度で分娩を検知できるそうです。
牛や人間のストレス負担を大きく軽減できることもセールスポイントだそうです。
「牛」に同社のサービスが利用できるのであれば、他の動物でも利用できそうな気がします。動物園だとスタッフが分娩(出産)を監視している場面がテレビでたまに出ますよね。
畜産は後継者問題もあり、ここ10年程度で大きく変わると考えています。ファンディーノだとコーンテックという企業がアグリテック分野で資金調達しています。
熊本の企業だったため私も覚えています。益城電池さんではお世話になっていました。※コーンテック事業の他にも事業を行っています
これからファーマーズサポートのようなサービスを利用し、畜産もIT化していかないと効率の問題も顕著化しそうです。
ファーマーズサポートの業績と上場(IPO)を行う時期を確認してみました
2025年3月期を基準期としてIPO(新規株式公開)を目指すとあります。一気に成長すると事業計画から感じ取れますが、シード期の投資になるため、個人的に先のことはわからないと考えています。
2025年3月期の売上は約61.0億円を見込みます。営業利益は約23.4億円です。この事業規模に成長できれば上場はできると思います。
今後は代理店と連携して、鹿児島県を起点に宮崎県や熊本県のJA(農業共同組合)や県の機関にアプローチしていくそうです。経済連などが関わると普及は早そうですが、今度は収益の問題も出てきそうですよね。
また、業界誌に広告出稿を行ったり、2021年10月には幕張メッセで開催される「国際畜産資材EXPO」に出展予定となっています。
分娩予兆検知だけでなく、他の検知システムの展開も予定しているそうです。
同社の現時点での目標は2026年にシェア40%だそうです。そんなに短期間で拡大できるのか?と疑問もありますが、ベンチャー企業は勢いが大事な時もあると思います。
地場に強みを持つ企業のため、九州内であれば横のつながりも利用できそうな気がします。VCの力も関係するはずです。
ファーマーズサポートの株主優待とエンジェル税制適用について調べた結果
ファーマーズサポートには株主優待が付いています。確認すると「子牛キャラクター付き不織布トートバッグ」「牛のカレンダー(デジタルデータ)」「牛のスマホ音源」となっています。
猛烈に気になるのが牛のスマホ音源です。
株主優待は毎年3月末日現在に株主名簿に記載又は記録された株主を対象としています。投資を行ってもすぐに貰えるわけではありません。
トートバッグのデザインは「NHK みんなのうた」の北風小僧の寒太郎の月岡貞夫氏がデザインしたものだそうです。
牛のスマホ音源はMOOVIEアプリに利用されている実際の通知音となっています。牛の鳴き声に続き「お産が始まります。注意してください」の音声が流れるそうです。
利用する機会はないと思いますが、クスクスと笑ってしまいそうです。スマホ音源にする投資家がどれだけいるのか?とそちらも気になります。
本クラウドファンディングは、エンジェル税制優遇措置Bが適用されることになっています。
設立10年未満の企業が対象となり、対象企業への投資金額全額をその年の株式譲渡益から控除できます。控除対象となる投資額の上限はありません。
また、株式投資型クラウドファンディング(ECF)に興味があれば事業者別にインタビューをさせて頂いています。よかったら参考にしてください。
【インタビュー】
・Unicorn(ユニコーン)
・FUNDINNO(ファンディーノ)
・Ecrowd(イークラウド)
・CAMPFIRE Angels(キャンプファイヤー エンジェルス)
ファーマーズサポートに投資を行っても問題がないのか?評判と実績まとめ
ファーマーズサポートに出資したい投資家の層が今回は極端にわかれそうな気がします。また売上や利益に不安を感じる投資家もいそうです。
ターゲットになる顧客が現時点では畜産農家となるため、投資家は将来のイメージが湧きにくい気がします。
また、窪田畜産の動画が公式サイトに用意されていたため共有したいと思います。繁殖経営を行い母牛が400頭いるそうです。
今後500頭まで増やすために毎月コンスタントに40頭くらいの分娩数になるように調整するそうです。そのためにも同社のサービスが必要のようですね。
はっきりしたことはわかりませんが、従業員を増やすことも大事だとは思いますが、400頭~500頭になると日々の雑用も大変なのではないかと考えられます。
MOOVIE(モービー)も複数台が必要になると思いますが、既に利用している企業があるため採算が合うと考えられます。
やはりある程度の規模を持った畜産農家がターゲットになると考えられます!
項 目 | その内容 |
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プロジェクト名 | AI&IoTを活用した24時間監視システムで牛の畜産をアシスト「ファーマーズサポート」 |
目標募集額(株数) | 7,470,000円(498株) |
上限募集額(株数) | 14,940,000円(996株) |
募集価格 | 1株当たり15,000円 |
申込単位 | 6株 |
最低申込金額(株数) | 90,000円(6株) |
上限申込金額(株数) | 450,000円(30株) |
申込期間 | 2021年09月01日~2021年09月05日 |
※2021年8月25日調べ
ユニコーン公式サイトの「投資家の皆様へ」を確認すると、牛の畜産をはじめ、豚・鶏の畜産、さらには農業の生産性向上に寄与していきたいと仰っています。
分娩(出産)予兆の検知システムが多方面に利用されると面白そうです。ただ投資家の資金が必要のようですから、賛同いただける投資家の方は投資を行ってみては如何でしょうか。
農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)をかけ合わせた「アグリテック」への投資も今後活発化すると思います。
米国だと大規模に事業を行っている企業が多いためアグリテックへの投資も注目されています。日本では人材不足や食料問題の解消に役立つと言われているようです。
日本の食料自給率向上にもつながるため、ファーマーズサポートには頑張って頂きたいと思います!