老後生活を無理なく送るためには、公的年金による収入のほかに自力での老後資金作りが必須となっています。個人の資産構成のなかではマイホームなどの不動産は大きな金額を占めますが、不動産は預貯金や株式・債券などと比較すると現金化するのに時間を要してしまいます。

また、老後資金を捻出するためにマイホームを売却した場合は今後の住居の用意も進める必要があります。家族・親族との同居や老人ホームなどを利用するのであれば問題ないのですが、賃貸住宅の利用を想定している場合は、高齢者のひとり暮らしなどは事故物件となるリスクから物件を契約することが難しくなるかもしれません。

老後資金としてマイホームを活用したいが、長年住んでいるマイホームからは離れたくはないといったニーズにこたえるには、リバースモーゲージやリースバックが有効な選択肢といえます。

リバースモーゲージは大きく分けて3種類の仕組みがある

老後資金や空き家対策に!急増するリバースモーゲージのメリット・デメリットとは?
(画像=takasu/stock.adobe.com)

リバースモーゲージはマイホームなどの不動産を担保とした融資制度で、民間の金融機関が実施するものと国などが実施する公的なものに大別できますが、融資限度額や融資金の使い道の制限など、さまざまな違いがあるため、それぞれの仕組みを把握しておきましょう。

民間金融機関のリバースモーゲージの仕組み

リバースモーゲージの基本的な仕組みは、担保となる建物や土地・私道などの不動産評価額に一定の掛け目を行った金額を融資限度として設定し、その金額内で融資を受け、契約者が死亡した際に担保不動産を売却し元金を清算しますがリバースモーゲージの種類毎に融資した資金の使い道に一定の制限が課せられています。

民間金融機関のリバースモーゲージは融資限度額や利率などは金融機関によって独自に定められていますが、際立った特徴として融資金の使用目的の自由度が高く、生活費や介護費のほか、教育費や遊興費など投資や事業資金以外であればさまざまな目的で利用することが可能です。

公的なリバースモーゲージの仕組み

代表的な公的リバースモーゲージには全国の社会福祉協議会が実施する「不動産担保型生活資金」があります。

これは65歳以上で世帯構成が単身者や夫婦またはその親が同居の世帯が利用可能で、担保となる不動産の不動産評価額の70%まで融資を受けることができますが、担保となる不動産にも制限があり、マンションなどの集合住宅は担保として利用することができなくなっています。

また世帯構成や担保条件だけでなく、連帯保証人も必要となっているため、民間などのリバースモーゲージと比べて利用条件が厳しくなっています。

融資は毎月30万円を上限とした年金方式で行われ、融資期間中は上限金利3%の利息のみを返済し、契約者の死亡によって貸付契約が終了し、その3カ月後までに担保を売却して元金を一括返済することになります。

民間金融機関と公的機関が連携したリバースモーゲージ

民間金融機関と住宅金融支援機構が提携した「リ・バース60」というリバースモーゲージ型住宅ローンもあります。

これは原則として60歳以上の方が申し込めますが、融資金の使い道はマイホームの建設・購入やリフォームのほか既存の住宅ローンの借り換えや高齢者向けサービス住宅への入居費用など、住居関連の支出に限られています。

融資限度額は8,000万円を上限とし、担保評価額の50~60%または必要な住居関連支出の必要額のいずれか低い方までの金額しか借りることができませんが、保証人が不要なほかマンションなどの集合住宅も担保利用可能と利用しやすくなっています。

現役時代に住宅ローンが完済できず、年金収入だけでは返済が厳しくなってきた場合に利用することで住宅ローンの元金返済がなくなり利息返済のみとなるため、住居費の支出を抑え家計を改善したい方におすすめのリバースモーゲージです。

リバースモーゲージのメリット・デメリット

リバースモーゲージはマイホームに居住を続けつつ、一定の資金を得ることができ、返済は少額の利息のみとすることができるため、老後資金が不足していた場合の有効な対策として期待できます。

また将来マイホームを継ぐ人がおらず空き家になってしまう場合は、リバースモーゲージの利用によって空き家対策を同時に進められるといったメリットがあります。

しかし、融資限度額が担保としている不動産の評価額に依存するため、不動産相場の値下がりなどで担保価値が下がってしまうとリバースモーゲージの融資限度額も連動して引き下げられてしまうため、上限額いっぱいまで融資を受けてしまうと担保価値の減少分に相当する金額を返済しなければならず、不動産価格の下落リスクと一括返済のデメリットを背負うことになります。

また、年金方式で融資を受けている場合は、想定よりも長生きしてしまうと融資限度額に到達し融資による収入が停止したうえ利息の返済が上乗せされるため家計収支が悪化してしまいます。

リスクを抑えてリバースモーゲージを利用するには、融資限度額よりも少ない借入れとしたり、返済のために融資金を残したりするなど、余裕をもった資金計画が重要となります。

安心の老後をおくりたい方にはリースバックがおすすめ

リバースモーゲージは慣れ親しんだマイホームに居住が継続でき、融資によって家計も改善できるといったメリットがある一方、不動産価格の動向などに気を配る必要が生じてしまいます。そこで、安心して老後生活を送りたいという方にはリースバックがおすすめです。

リースバックはリバースモーゲージと並び、不動産を活用した老後資金の準備方法として知られていますが、リバースモーゲージと異なるのは、リースバックは金融機関などに対象となる不動産を売却してしまい、賃貸借契約によって居住を継続する点にあります。

売却代金は自由に使い道が決められるうえ、売却によって所有者が変わっているため、以後不動産相場が変動しても居住者に影響は生じません。

リースバックのメリット・デメリット

リースバックのメリットとして、空き家対策や売却代金の活用による家計収支の改善が期待できるほか、災害や経年劣化による修繕費の負担からも解放され、必要な支出が賃料のみとなるため生活の見通しが立てやすくなります。

その反面、金融機関が賃料滞納リスクなどへ備える必要があるため、リースバックによる売却価格は相場価格より低くなる傾向がありますし、仮に高く売却できたとしても賃貸契約時の賃料も連動して増加してしまうといったデメリットがあります。

リースバックは安心・安定が得られる一方で、得られる金額はリバースモーゲージの場合よりも減少してしまう恐れがあります。自身の要望をよく把握し、どちらの制度を利用するかを慎重に検討しましょう。

老後資金の準備にマイホームを活用していく時代へ

年金収入だけでは老後の生活費をまかない切れない場合は自己資金の切崩していくことになりますが、現役世代に充分な資金を用意しきれなかった場合はマイホームを活用して生活費を工面していく必要があります。

慣れ親しんだマイホームに居住を続けながら資金を調達でき、さらに空き家問題の解決にも繋がるリバースモーゲージやリースバックは今後変化する社会情勢のなかで老後を安定して送っていくためには有効な選択肢といえ、近年注目を集めており利用者が増加し続けています。

しかし両サービスには民間・公的機関などによってさまざまな商品設計となっており、またそれぞれにメリット・デメリットやリスクも存在しているため、制度を把握しニーズに合わせ賢く利用していくことが重要といえます。

(提供:Incomepress



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