10月25日、米株式市場でEV(電気自動車)メーカー大手のテスラが一時1,045.02ドルまで買われ、過去最高値を更新した。
この日の上昇でテスラの時価総額は初の1兆ドル超えとなった。米レンタカー大手ハーツ・グローバル・ホールディングス(以下、ハーツ)からEV10万台を受注したとの情報のほか、モルガン・スタンレーのアナリストがテスラの目標株価を900ドルから1,200ドルに引き上げたこと、さらに環境関連銘柄としての注目度も高まっているようだ。テスラ株は翌26日は一時1,094.94ドル、29日も1,115.21ドルまで買われ、過去最高値を記録している。
ちなみに、10月27日時点の世界の上場企業の時価総額ランキングを見ると、テスラはアップルとマイクロソフト、サウジアラムコ(サウジアラビアの国有石油会社)、アルファベット(グーグルの親会社)、アマゾンに次ぐ第6位となっている。自動車業界の時価総額では2020年7月にトヨタ自動車(以下、トヨタ) <7203> を抜いて首位に立ったが、10月27日時点でテスラの時価総額はトヨタ(約2421億ドル)の約4倍と大きく差をつけている。
今回はテスラの話題をお届けしよう。
ハーツがEV10万台を注文、テスラの世界販売の20%に相当
『レンタカーのハーツがテスラ車10万台注文、電気自動車で過去最大』そんなタイトルがブルームバーグのヘッドラインに並んだのは10月25日のことだった。米レンタカー大手のハーツが10万台のEVをテスラに発注したことを伝える記事である。
ブルームバーグによると、ハーツのEVに対する1回の注文としては過去最大で、テスラにとっては約42億ドル(約4,800億円)の売上になるという。ハーツは今後、全世界に保有する計50万台の乗用車・商用車のほぼ全てをEVにする計画ということだ。
一方、ハーツのマーク・フィールズ暫定CEO(最高経営責任者)はロイター通信の取材に対し、今回注文したのは「モデル3」が中心で、11月からハーツの店舗で借りられるようになるとしている。ハーツは自社のネットワーク全体に数千台の充電器を設置するほか、モデル3の利用者は米国と欧州にある3,000カ所のテスラの急速充電拠点を利用できるという。
テスラ、時価総額でメタを抜き去る
ちなみに、今回ハーツが発注した10万台はテスラの世界販売台数(2020年、約50万台)の20%に相当する。それだけにマーケットに与えたインパクトも大きかったようだ。
10月25日のテスラ株は前日比で一時14.9%高の1045.02ドルを記録、過去最高値を更新するとともに、時価総額で初の1兆ドル超えとなった。2010年のIPO(新規株式公開)から12年ほどで時価総額1兆ドルに到達しているが、これは過去2番目の最速記録だという。これより速いのはIPOから9年ほどで1兆ドルを達成したMeta(メタ=旧フェイスブック)だけである。
冒頭で述べた通り、テスラは今回の株価上昇で、世界の上場企業の時価総額ランキングで第6位となった。一方、メタの時価総額は8,904億ドルで第7位に後退している(10月27日時点)。
世界的な半導体不足、それでもテスラの生産は拡大続く
10月21日、テスラは2021年第3四半期(7~9月)決算を発表した。売上高は前年同期比57%増の137億5,700万ドル、純利益は4.9倍の16億1,800万ドルと好決算だった。今回の決算で売上高と純利益は四半期ベースで過去最高を更新している。
特に7~9月は、EVの販売台数が前年同期比73%増の24万1,391台と急増したことが業績に寄与した。一方、生産台数も64%増の23万7823台と大幅に増加している。世界的な半導体不足等で大手自動車メーカー各社が減産を余儀なくされる中、高い生産台数を維持していることがテスラの業績好調を後押ししていると見られている。
自動車業界は半導体不足、電力不足に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で東南アジアの部品メーカーが減産したこともあり、サプライチェーンが滞っている。その影響からトヨタは9月と10月に世界生産をそれぞれ約4割減産し、11月も約15%の減産を決めている。