企業買収の5つの事例

企業買収はさまざまな業界で盛んに行われており、その買収方法は状況に応じて異なる。ここでは、5つの買収方法に分けて事例を紹介する。

株式譲渡の事例

・事例:九電工・中央理科工業(株式取得による子会社化)
【時期】
2021年8月

【目的】
消防・防災分野の中央理科工業と協業し、九電工グループの営業ネットワークと技術ノウハウを、中央理科工業グループの営業基盤や技術力と融合させ、事業拡大を目指す。

(参考)株式会社九電工:プレスリリース(2021年8月4日)

事業譲渡の事例

・事例:JR九州と有限会社綱屋の飲食店事業ほか
【時期】
2021年10月1日

【目的】
株式会社綱屋が展開する「焼肉ヌルボン」などの飲食店事業と、有限会社ロイヤルフーズの精肉・食材卸販売事業を買収するために行った事業譲渡である。JR九州の発表によると、買収の目的は、コロナ後を見据えた外食事業の強化や鉄道沿線・郊外の発展への貢献としている。

買収の方法は、JR九州が100%出資する完全子会社「株式会社ヌルボン」を設立し、同社が上記の事業を買収する。

(参考)JR九州:ニュースリリース(2021年8月3日)

公開買い付けの事例

・事例1:伊藤忠商事株式会社の株式会社ファミリーマートの敵対的買収
【期間】
2020年7月9日~2020年8月24日

【価格と買収予定株式数】
1株あたり2,300円
予定252,557,288株、下限50,114,060株

【目的】
伊藤忠商事株式会社の発表によると、ファミリーマートを取り巻く経営環境の悪化等から、公開買い付けを実行している。買い付けの下限数であった約5,011万株を上回る約7,900万株の応募があり、これによって保有株式が50.1%から65.71%となった。

(参考)伊藤忠商事株式会社

・事例2:日本製鉄株式会社の東京製綱株式会社に対する敵対的買収
【期間】
2021年1月22日~2021年3月8日

【価格と買収予定株式数】
1株あたり1,500円
上限162万5,500株

【目的】
日本製鉄株式会社は、東京製綱株式会社の株主である。日本製鉄によると、東京製綱が経営上の問題を抱えていることや、問題に対する有効な対応策を講じず業績が悪化している状況があることから、企業価値の回復・向上に寄与するための公開買い付けであるとしている。

このTOBにより、保有株式の割合は9.91%から19.9%となった。

(参考)日本製鉄株式会社:プレスリリース

・事例3:NTTとNTTドコモ(組織再編のための公開買い付け)
【時期】
2020年9月

【目的】
NTTドコモを完全子会社化するために行われた買収である。NTTドコモのリリースによると、NTTドコモの競争力強化とNTTグループ全体の成長のためとされている。

(参考)NTTドコモ:ニュースリリース

第三者割当増資の事例

・事例:ヤマダ電機と大塚家具(第三者割当増資を用いた資本提携)
【時期】
2019年12月

【目的】
大塚家具からは家具販売のノウハウ及び人的リソースの提供を行い、ヤマダ電機からは家電やリフォーム等の家具販売以外の分野のノウハウの提供を行うという業務提携である。資金調達と並行した株主作りの一環で、第三者割当増資による資本提携に至ったものと説明されている。

なお、大塚家具は2021年9月、株式交換によってヤマダ電機の完全子会社となった。

(参考)株式会社大塚家具

株式移転・株式交換の事例

・事例1:LINEとZホールディングス(株式交換による経営統合)
【時期】
2021年3月

【目的】
経営統合契約に基づき、LINEとZホールディングス両社の親会社であるソフトバンク株式会社及びNAVERを含む4社の経営統合のために実施されたものである。

(参考)ZホールディングスとLINEの経営統合が完了

・事例2:株式会社第四銀行と株式会社北越銀行(共同株式移転による経営統合)
【時期】
2017年10月

【目的】
株式移転により、完全親会社となる「株式会社第四北越フィナンシャルグループ」を設立したもの。株式会社第四北越フィナンシャルグループの発表によると、付加価値の高い金融仲介機能と情報仲介機能を発揮することや、経営の効率化を目的としている。

(参考)株式会社第四北越フィナンシャルグループ

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