企業買収と合併、業務提携の違い
企業買収と合併との違い
企業買収と合併は、どちらもM&Aの手段の一つだが、M&A後の会社の状況に違いがある。企業買収は、あくまで会社のオーナー・経営者の変更であり、買収された会社は子会社として存続する。
これに対して合併は、元の会社は消滅して1つの会社に統合され、元の会社の設備や権利義務は、合併後の会社に承継される。
企業買収と業務提携・資本提携との違い
業務提携とは、共同研究や共同開発等を成功させるため、互いの情報や技術を共有するために行う契約であり、資本の異動がない点で資本提携や買収と異なる。
一方、資本提携は、提携する相手に出資することで経営にも参画し、業務提携よりも強固な関係を築く契約である。
仮に資本提携として50%超の株式を取得して相手を子会社化したとしても、ベースが業務提携にあるときは、一般的に企業買収という表現は用いられないようである。
企業買収の注意点
企業を買収する際には、注意すべき点が大きく2つある。
・買収先の企業を正しく分析すること
企業買収は、買収先の経営資源を正しく分析し、自社の既存の経営資源と掛け合わせたときのシナジーで効果的に業績を上げることを目指すものでなければならない。
・株式の割合による経営支配関係に違いがあること
企業買収を株式の移動を伴う方法で行う際に知っておかなければならないのは、「議決権割合」と「決議事項」の関係だ。
会社の意思決定は、株主総会の決議で行われる。普通決議であれば、過半数の議決権があれば決議できるため、50%超を超える株式を取得すれば、その会社の経営に関する意思決定を下せる立場になる。
一方で、以下のような決議事項は、3分の2以上の議決権が必要となる「特別決議」が必要だ。
・譲渡制限株式の買い取り
・募集株式・募集新株予約権の発行
・株主に株式・新株予約権を割り当てる決定
・定款の変更
・事業譲渡の承認
・事業の譲受・賃貸
・解散
など
言い換えると、3分の1を超える株式を買収すれば、買収した者が単独で上記の特別決議にかかる事項の決定を阻止できるようになる。
したがって、発行済み株式数の3分の1超・半数超え・3分の2超が、企業買収において相手から取得する株式数の基準になる。
企業買収の事例を参考に自社にとっての方向性を探ろう
企業買収の意味や目的、合併や資本提携などを除く4つの方法について、実際の事例を交えながら解説してきた。
企業買収の事例は豊富にあり、買収の成功事例だけでなく失敗事例もある。自社が企業買収という道を選ぶのか、または合併や資本・業務提携などの道を選ぶのか、これまでの事例も参考にしながら考えてもらえれば幸いだ。