企業買収とは、会社を買い取ることでありM&Aの代表的な方法である。2019年、国内のM&Aの件数は4,000件を超えて過去最高となっており、M&Aに興味のある経営者も多いだろう。本記事では、企業買収について事例を交えながら解説し、合併や業務提携などの用語との違いを解説する。
目次
企業買収とは
企業買収とは、他企業の経営権を買い取ることである。具体的には、買収先企業の発行済み株式の50%超を買い取ったり、事業部門を買い取ったりすることを指す。企業買収の目的は、買収先企業が保有する営業基盤、技術、人材などの経営資源を吸収することである。
企業買収の目的
企業買収の目的は、自社の経営改善や事業拡大を効率的に達成することにある。
他社が整えた人材・設備・ノウハウなどの事業基盤を自社の経営に吸収することで、短期間で新しい市場に参入することや、自社の既存の技術と組み合わせて生産性を向上させたり新しいニーズを獲得したりすることに活用される。
企業買収の方法5つ
本記事では、企業買収を株式譲渡や事業譲渡とするため、これらに準じた企業買収の4つの方法を、事例を交えながら解説する。
1.株式譲渡とは
株式譲渡とは、売り手の発行済み株式を買い取る方法である。売り手企業にとっては、会社のオーナーと経営者が変わるだけで、従業員や第三者との契約は存続する。
買収した後の権利関係が複雑でなく、手続きが比較的わかりやすいといった理由から、中小企業のM&Aにもよく用いられる。
2.事業譲渡とは
事業譲渡とは、売り手企業が保有する事業の全部または一部を売却する方法である。その事業に属する建物や機械などの資産や借入金等の負債、ノウハウや知的財産が対象となる。
株式譲渡とは異なり、どこまでを買収の対象とするかは個別契約となる。そのため、債権債務や雇用契約などのそれぞれについて、相手の同意を得ていかなければならない。
事業譲渡のメリットは、個別の事業ごとに買収できることである。自社の発展に必要な事業部門だけを買い取れるため、資金効率がよいといえる。
3.公開買い付けとは
公開買い付けとは「買取期間」「買取価格」「買取数」を公告し、不特定多数の株主から市場外で株式を買い集めることであり、「TOB(Take Over Bid)」と呼ばれる。
TOBといえば、敵対的買収をイメージする経営者も多いだろう。敵対的買収とは、買収する相手が同意していない状態で、公開買い付けを仕掛けることだが、公開買い付けの全てが敵対的買収を意味するわけではない。グループ会社を完全子会社化する場合、流通する自社株を取得する場合などにも用いられる。
ここでは、近年の敵対的買収の事例と、それ以外の公開買い付けの事例を紹介する。
4.第三者割当増資とは
第三者割当増資とは、特定の社外の者に、新株や新株予約権を発行して金銭の払い込みを受けるものである。企業買収において活用するには、発行済み株式の50%超の新株を発行し、相手の子会社となることが一般的である。
5.株式交換・株式移転とは
持ち株会社を設立して完全子会社化するなど、経営統合や組織再編の手法でよく用いられる「株式交換」や「株式移転」についても解説する。
・株式交換
株式交換とは、売り手の発行済み株式のすべてを、買い手企業の株式と一定比率で交換する方法である。買い手が支払う買収の対価が株式であるため現金が不要であり、売り手は完全子会社となるといった特徴がある。
・株式移転との違い
株式移転とは、2社以上の会社が発行済み株式の全てを、新設する持ち株会社(親会社)に取得させる方法である。親会社が新設されることが、株式移転と大きく異なる点となる。複数の会社の経営を統合するために利用されることが多く、「共同株式移転」ともいう。