シーラホールディングス

“応援”というテーマを加えることで、不動産クラウドファンディングに新しい世界を切り開いたシーラグループ。2021年12月、楽天グループからの出資とサービス連携開始を発表した。これにより、シーラは楽天の利用者に対しても自社の不動産クラウドファンディングを訴求できることになる。後編では楽天グループとサービス連携するに至った経緯やその狙い、波及効果、さらには不動産クラウドファンディングの将来像などについて、引き続きシーラHDの杉本会長に話を聞いていく。

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目次

  1. 楽天グループとのサービス連携によって会員数100万人突破を目指す
  2. いい物件の最大のキーワードは「人が集まる」地域
  3. 今後も不動産クラウドファンディング市場は拡大する
杉本宏之(すぎもと ひろゆき)
お話を聞いた人:杉本宏之(すぎもと ひろゆき)
株式会社シーラホールディングス取締役会長兼CEO。1977年生まれ、神奈川県出身。高校卒業後、宅建主任者資格を取得し不動産会社に就職。2001年に独立し、エスグラントコーポレーションを設立。2005年、業界史上最年少で上場。2010年にシーラホールディングスを創業。現在はプロップ(不動産)テックグループを掲げ、クラウドファンディング事業、マンションデベロッパー事業、CVC事業など、グループ売上高197億円までに成長させる。https://rimawarikun.com/

楽天グループとのサービス連携によって会員数100万人突破を目指す

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―― この12月、楽天グループからの出資とサービス連携を発表されました。提携に至るまでの経緯や御社への波及効果などについて、お話をうかがえますか。

序盤にお話しましたが、3年前にハワイの不動産を購入した時、米国の不動産取引のDX化に衝撃を受け、「このままでは新しいテクノロジーを取り入れた他のライバル会社に駆逐されてしまう」という危機感を抱きました。それ以来、テクノロジーの導入やテック企業との提携を進め、成長し続けなければならないとの思いを強くしました。

実は、不動産クラウドファンディングはそんなに儲からないビジネスだと業界内で言われています。短期での運用成績を求める顧客の要望に疲弊して撤退していく企業が多く、また継続していても、実態は顧客リスト集めのための客寄せパンダ状態となっている企業も見受けられます。

しかし、多くの企業が諦めているからこそ、生き残ればウイナー・テイク・オールになれると考え、役員と本質的な議論を繰り返しました。

結論としては、20万人のお客様を獲得し、そのうち15%が投資をしていただければ超長期で事業の収益をあげられる仕組みを整えられるということでした。そこで、さらに踏み込んでアイデアを出したのは僕自身で、地域創生と社会貢献というコンセプトで根強いファンを獲得するという、「利回りくん」の原型となるビジネスモデルを思いつきました。

そこからは前述した通り、様々な方々にご協力をいただき、当初想定の3倍以上のスピードで成長を続け、今日に至った訳ですが、あまりに早く成長を遂げたがゆえに、次の一手を早急に考えなくてはなりませんでした。それが、プラットフォームとしての圧倒的な地位を固めるための戦略でした。

そのためには他社にはない、強い集客力が絶対的に必要となるのですが、楽天さんの会員基盤、集客力を活用できれば、不動産クラウドファンディング業界で圧倒的なプラットフォームの座を得ることができる。一見荒唐無稽な考えに聞こえるかも知れませんが、僕は本気でそう考え、今回の提携を将来に向けた成長の一丁目一番地ととらえ、楽天さんに事業のプレゼンテーションをしました。

―― プレゼンテーションの反応はいかがでしたか?

最初のプレゼンでは、「楽天さんと組んで、15万人の『利回りくん』の会員獲得、50億円以上の売上高を目指す」ことを伝えました。会員15万人は、不動産クラウドファンディング業界でトップと肩を並べる数字です。

楽天の三木谷会長とは、昔から親交がありましたので、本件についてもメッセージを送ったところ、ある記事が送られてきました。その記事には「ネットフリックス会員数2億人」「1コンテンツ170億円の投資」という文字が書かれていました。そして同社がどのようにメガベンチャーまで成長してきたかについて、また日本企業が世界で羽ばたけない理由などについて書いてありました。

これは「15万人なんて小さい目標を掲げず、もっと大きなものを狙え」という三木谷会長のメッセージだ。私はそう捉え、次のプレゼンでは100万人の会員獲得を目標に掲げました。これが功を奏したのかは定かではありませんが、プレゼンを受け入れていただき、出資およびサービス連携まで話を進めることができました。

―― 15万人から100万人はかなり大きなスケールアップですね。

そうですね。もちろん実現しなければただの妄想おじさんになってしまいますから(笑)、プレッシャーは大きいです。しかし、足元では1日平均で500人のお客様が増えています。サービス開始5ヵ月で会員数は6万人を超え、ここから楽天グループとの連携での加速を考えると、年内7万人、来年は20万人、2025年に100万人という目標は、決して妄想ではないことをご理解いただけると思います。

そこから新たなビジネスも考えている訳ですが、“不動産投資に関心を持った100万人”ですから、不特定多数の100万人とはわけが違います。広告ビジネスなどを含めた「利回りくん」の売上高の増加だけではなく、AIを活用しお勧めの不動産を紹介する会員ビジネス、その先にはお客様の持ち分を仲介し、売りたい時に売って買いたい時に買う、クラファン取引所ビジネスも考えています。

不動産投資に興味を持った100万人の会員獲得を達成できれば、業界では圧倒的なプラットフォーマーとなります。そしてトラフィックが集まれば、雪だるま式にお金も集まります。つまり、どこにもできないような地域創生と社会貢献、そして挑戦を応援するプロジェクトをどんどん手掛けることができます。その先には、「国民に必要とされる会社」として役割を果たしていけるとも思っています。

いい物件の最大のキーワードは「人が集まる」地域

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―― その「国民に必要とされる会社」としての役割とは、実際に何ですか?

2019年に、金融庁が「老後2,000万円問題」をテーマとした報告書を作成したことが話題になりましたよね。現在はさらに金額が増え、「老後3,500万円問題」などとも言われていますが、「利回りくん」への地道な投資を通じて、国民の課題である老後の資金問題を解決する、そんな役割を担っていきたいと考えています。楽天グループとの取り組みによって、その考えを実行できる準備が整ったと考えています。

―― 老後の資金問題に頭を悩ませている国民は、必ずしも不動産投資に関心がある層とは限らないですよね。

それはそうですね。ただ、圧倒的なプラットフォーマーになることで、できることが増えるのは確かです。まずは不動産投資の民主化というミッションを掲げ、多くの国民にこうした解決方法があることを知っていただかなくてはなりません。

また「利回りくん」で、より身近なテーマで面白いプロジェクトを手掛けているのも、不動産には縁がないと思ってしまっている人々に対して、注目をしていただくきっかけになると思っているからです。

日本には不動産投資と聞いただけで「怖い」、「損しそう」などと考える人たちが少なくありませんが、そうした方々に対して、「不動産投資は適切な方法で行えば自分の将来を救ってくれるツールである」ことを示す努力を続けていきたいと思います。

―― 不動産投資の「適切な方法」とはどういったものでしょうか。

不動産投資で大切になってくるのは、やはり物件選びです。いい物件の条件は多々ありますが、やはり「人が集まる」地域であることが最も重要だと思います。

私たちはその「人が集まる地域」をテーマに、東京23区内の物件開発を続けてきました。今後も、東京一極集中に課題があるとはいえ、このトレンドが長期的に続く可能性は高いと考えています。一方で地方では、人口が減り経済規模が縮小し、税収が減り、インフラを維持することが困難になり、行政が破綻していくかもしれません。

今回「利回りくん」をスタートしてから様々な地方行政様や地方のスポーツチーム、企業などからプロジェクトのご相談をいただき、より想いを強くしました。その想いとは、決して都市部を優先し地方を見捨てるということではなく、地方の分散したリソースを集中させることにより、人が集まる地域を創り出すことです。これにより、地方においても、東京と変わらぬいい物件が組成され、不動産投資の適切な投資対象がどんどん増えていく、と考えています。

この人が集まる地域を創り上げる役割を、「利回りくん」の応援プロジェクトが担っていけると感じています。この一連の我々の目指すべきミッションに力を与えてくれているのが、1日500人も増加するお客様であり、日本各地からご相談いただく様々なプロジェクトの数です。日本の抱える課題を国民みなさまと共に解決をしていく、それが最終的な「利回りくん」のミッションだと思っています。

今後も不動産クラウドファンディング市場は拡大する

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―― 「利回りくん」をはじめ、不動産クラウドファンディングが老後の資金問題の解決策という認識が広がれば、この市場はさらに拡大しそうです。

いま、不動産クラウドファンディングに参入する若い企業が増えてきていることもあって、2018年に20億円以下だった市場規模が、2021年には200億円程度まで拡大すると予想しています。今後は、さらに拡大するでしょうし、私たちがその市場拡大の一端を担うことになるわけです。

ただ、マーケットが急拡大すると健全性を保てなくなる可能性があるので、市場の統制や税制面での対策などを目的とした「不動産クラウドファンディング協会」のような組織を立ち上げるべきだと考えています。業界が盛り上がるのはいいことなのですが、その過程で無秩序な部分がどうしても出てきてしまうんです。

そこで協会を設立して、業界の自主規制の枠組みを作ったり、あるいは不動産投資の利益を所得税ではなく、株式投資のように一律20%にするよう政府に提言をするなどといった活動が進められれば、不動産クラウドファンディングマーケットの健全化につながると考えています。まだ構想段階ではありますが、仲間へ呼びかけながら一歩一歩進めて行きたいと考えています。

―― 最後に、読者に対して一言お願いします。

私たちシーラグループは、「利回りくん」が不動産投資の民主化を加速させ、ひいては老後の資金問題の解決策の1つになるという考えから、これからも情熱と志をもって事業を進めていきたいと考えています。今回の楽天グループとのサービス連携によって、それが実現化に向けて動き出しました。“不動産投資は怖いもの”と身構えず、まずは「楽天のポイントがもらえるんでしょ?」という気持ちでかまいませんので、「利回りくん」のホームページを覗いていただければうれしいです(笑)

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杉本宏之(すぎもと ひろゆき)
お話を聞いた人:杉本宏之(すぎもと ひろゆき)
株式会社シーラホールディングス取締役会長兼CEO。1977年生まれ、神奈川県出身。高校卒業後、宅建主任者資格を取得し不動産会社に就職。2001年に独立し、エスグラントコーポレーションを設立。2005年、業界史上最年少で上場。2010年にシーラホールディングスを創業。現在はプロップ(不動産)テックグループを掲げ、クラウドファンディング事業、マンションデベロッパー事業、CVC事業など、グループ売上高197億円までに成長させる。https://rimawarikun.com/