「不動産投資の民主化」を掲げ、不動産クラウドファンディング事業を展開するシーラグループが新たな局面を迎えようとしている。“地域創生・社会貢献・応援”をテーマにした不動産クラファン「利回りくん」は、サービス開始以来、わずか5ヵ月で6万人の会員を獲得したほか、この12月には楽天グループからの出資と「楽天ポイント」との連携を発表。これにより不動産クラウドファンディング市場の活性化が期待できそうだ。「利回りくん」を中心に、今後の展開などについて、シーラホールディングスの杉本宏之会長兼CEOに話を聞いた。
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リアルとテクノロジーの融合で成長が加速
―― 御社は単身者向けワンルームマンションを軸に不動産開発と管理事業を展開されていますが、不動産クラウドファンディングなど、新しい事業をスタートさせています。
私たちは2010年に不動産開発会社として創業して以来、「自分たちが欲しいマンションを創る」という理念にこだわり、マンションを創り続けています。しかし、これまでのようなマンションデベロッパーとしての事業だけを続けているのでは、日本の将来を考えると限界があります。そこで、長期的な視点で「不動産投資の民主化」というミッションを掲げ、幅広くテクノロジーを活用し、新しいことにチャレンジしていこうと決意しました。
今回のエクイティファイナンスで、セゾングループ、ジャックスなどの金融機関様やGMOインターネットグループ熊谷会長、楽天グループなど錚々たる方々に株主に入っていただいたことで、資本に厚みが増しました。
これらの資金はすべて、テクノロジー分野への投資に回していきます。早速、核になる優秀なエンジニアを次々に採用していますが、プロップテック(不動産テック)を代表する企業と言えば「シーラグループ」といわれるのにそう時間は掛からないと思います。
―― 不動産クラウドファンディングを始めようとされた理由は何ですか?
きっかけとなったのは、3年半ほど前に米国の不動産を購入したことです。ハワイの不動産会社と取引を進めることになり、当然、物件の調査や契約などのために現地に赴く必要があると思っていました。
ところが、その物件はAR(拡張現実)やVR(仮想現実)によって外観から室内に至るまで、まるで現地にいるかのようにオンラインで見ることができたほか、銀行との決済に向けたミーティングもオンライン、契約や登記も電子サインですることができました。
画面をクリックして、最後も電子サインで署名。WEB上のMLS(日本でいう登記所にあたる)で名前と電話番号を入力して登記を確認。これで取引が完了したんです。これは衝撃でした。
―― 海外の物件購入で、現地に行かなくても取引ができてしまうんですね!
そうなんです。この取引を通じて、「こうした新しいテクノロジーが日本の不動産市場に入ってくるのも時間の問題」「このままだとテクノロジーを駆使したライバル会社に駆逐されてしまう」と考えました。私たちも新しい事業への取り組みを加速させなければならないと思い、テクノロジーの導入や不動産クラウドファンディング事業をスタートさせたわけです。
たとえば昨年、横浜の関内に作った物件「シーフォルム関内Ⅱ」では、居住者専用のアプリを使ってエアコンなどの家電の操作が可能だったり、WEBにてマンション内のジムやゲストルームの予約が可能となっています。管理会社とチャットでやり取りできたり、ハンズフリーのキーシステムを導入したりと、マンション開発にも新しいテクノロジーを取り入れています。
不動産クラウドファンディングの魅力とは
―― そもそも不動産クラウドファンディングとはどういうものでしょうか。
まず、「クラウドファンディング」は、必要資金を小口化し、運営会社を通じてみんなでその活動や事業に投資するスキームです。不動産クラウドファンディングは、その名の通り、不動産の開発・建設資金を小口化し、クラウドファンディングのスキームを活用して一般の方々に幅広く販売するサービスです。投資家はその不動産の賃料を出資した口数に応じ、分配金として受け取ることができます。
―― 不動産クラウドファンディング投資の魅力はなんでしょうか。
最大の魅力は、やはり小口で投資できる点でしょう。不動産投資というと何百万円、何千万年の資金が必要で、高所得者層向けのものというイメージが強いと思いますが、不動産クラウドファンディング「利回りくん」なら1口1万円から投資できます。
また、eKYC(オンライン本人確認)システムの活用により、ネット上で数分の手続きをするだけで購入可能と、実際の不動産売買に比べて手軽に投資できるのも魅力です。これらの魅力が人気を呼び、ここ数年は倍々ペースで市場が拡大しています。
―― 確かに「不動産投資」というと、銀行からの融資を受けるなど大きな資金が必要というイメージがありますが、運用はどうなるのでしょうか。
日本では超低金利が続いていて、普通預金に1万円を預けても利息はほとんどつきませんよね。ATMでお金を引き出せば利息はマイナス、さらにインフレと共に現金の価値はどんどん落ちていきます。この点に気づいていない人が多いですよね。
ところが、仮に年利5%の不動産クラウドファンディングに投資すれば、1年で500円の分配金がもらえます。ただ銀行にお金を預けておくのであれば、前述した通り現代資本主義において預金はどんどん目減りします。長期的な資産形成を考えていただくのなら、私たちの「利回りくん」に投資し、分配金を受け取っていただくことをお勧めします。
不動産クラウドファンディングの市場拡大の背景にある「応援」の気持ち
―― 「利回りくん」は“応援型”不動産クラウドファンディング”と銘打っていますが、“応援型”とはどういう意味ですか?
「利回りくん」は、社会貢献や地域創生のほか、夢を追いかける人たちを応援するためのファンドでもあるんです。たとえば、北海道の大樹町にあるロケット溶接工場に「利回りくん」が活用されました。このロケット事業は事業家の堀江貴文さんが創業したロケット開発ベンチャー企業、インターステラテクノロジズ社が手掛けていて、「世界中の誰よりも小型で低価格のロケットを作る」ことをモットーに掲げています。利回りくんのコンセプトにふさわしい、地域創生と社会貢献、ベンチャーの夢と挑戦を応援するプロジェクトになりました。
―― インターステラテクノロジズは今年7月、小型観測ロケット「MOMO(モモ)」の打ち上げに成功していますね。
はい。そうですね、様々なご苦労を身近で聞いていましたので、リアルタイムで打ち上げの中継を観て、胸に熱いものが込み上げてきました。このように、挑戦を応援するということは、ただの投資とはまったく異なる内なる感情を呼び起こさせてくれるものではないかと思っています。
―― プロジェクトも3日目で3億円以上の資金が集まり、大成功だったと伺いました。
はい。正直当初は不安もありましたが、多くのお客様の熱量を目の当たりにして、われわれのビジョンが正しいことを再認識させて頂きました。この成功により、「利回りくん」のホリエモンのイメージが強くなってしまったのですが(笑)。
ほかにも、ペット共生マンション「イヌネコヒルズ」や、ライブ配信者のために完全防音と通信環境を整備した「ライバーズマンション」といったプロジェクトもあります。ペットとの共生を重視した「イヌネコヒルズ」は前澤友作さんが目指す「犬猫の殺処分ゼロ」の実現に向けた取り組みの一環です。
このように、社会貢献や地域創生だけでなく、夢や目標、志に向かってがんばっている人たちを、「利回りくん」への投資を通じて“応援”することができるんです。
「利回りくん」は、単に不動産への投資をして分配金をもらうというだけではなく、そうした人々の思いに“共感”し、“応援”するという、従来の不動産クラウドファンディングとはまったく異なる新しい魅力を感じられるサービスです。
―― 投資家にとって、応援の結果がリアルに見えるのも、この“応援型”不動産投資クラウドファンディングの魅力なのでしょうか。
そうなのだろうと思っています。「利回りくん」は、単に不動産に投資する従来の不動産クラウドファンディングとは違って、“応援したい”というみなさんの気持ちも大切になってくる投資です。
だからこそ、顧客目線のUXの改善を続けるのは必須であり、来年早々には掲示板でのコメント機能や投資家同士のオフ会、現地視察と運用状況をレポートした動画を定期的にアップするなど、熱量の高いファンとのコミュニケーションを重視したアップデートを続けていきます。
また、来年の第一弾は開発型ファンドになる予定ですが、事業のプロセスを一緒に楽しんでいただき、物件の完成や事業の成功という結果を通して、「応援してよかった」という満足感が得らえるのも、新しい「利回りくん」の魅力になっていくと確信しています。
これまでは、堀江さんや前澤さんのような著名人の賛同をいただけたこともあって、「利回りくん」のラインナップも、すでに募集や運用が完了したものを含めると12件まで増えてきました。
しかし、ここからが本当の意味での「利回りくん」ファンを増やしていく正念場です。今後のプロジェクトについてはまだ詳細はお伝えできませんが、現在独立リーグのチームとのスタジアムの改修やJリーグのチームと一体となった地域創生、行政と一体となった市営住宅の立替えプロジェクト、また著名人が関係する社会貢献や地域創生プロジェクトなどが目白押しとなります。
1つひとつのプロジェクトに想いを込め、決して雑にならないよう全身全霊取り組まないといけないと自分を戒めています。
楽天グループとのサービス連携は「利回りくん」利用者にどんな利益をもたらすのか
―― 楽天グループとのサービス連携の経緯や目的などは後編で詳しくうかがいたいと思いますが、連携によって「利回りくん」のサービスが拡充されるようですね。
「利回りくん」と「楽天ポイント」との連携がスタートします。まず、利回りくんの新規会員登録者に対して500円分、投資金額の0.5%分の楽天ポイントが付与されるほか、会員ページへのログインや誕生日にも楽天ポイントがもらえるようになります(※新規登録者以外のポイント付与の対象は、利回りくん出展ファンドへの投資者のみ)。平均利回り4.2%の現金配当と合わせて、楽天ポイントが付与される形となるのです。
―― かなりお得感の高い投資になりますね。ただ、投資リスクが気になります。
「利回りくん」は不動産に出資して分配金をもらう金融商品ですから、当然、不動産市況の悪化や不動産に関する税制の変更、天災による不動産価値の毀損といった、従来の不動産投資と同じ投資リスクはあります。
ただ、不動産はペーパー資産とは違いゼロになることはあり得ません。また、超長期の運用であれば、金融緩和の進展と共に適切なインフレ率に連動し価格も維持される可能性が高くなります。
さらに先ほどのロケット工場のプロジェクトでは、インターステラテクノロジズの保有資産をきちんと調査したうえで、リスクをどこまで許容できるかについて、何度も交渉するなど、徹底したリスク管理を行っていますし、リスクを減らすように努力しています。
また、基本的に、利回りくんのプロジェクトには、事業を持ち込んだ運営者へリードインベスターとして5%前後の劣後出資をしていただいています。売却時の損失については、先ずリスクを負うのが事業者となりますから、投資家の皆様にもご納得をいただけるのではないかと考えています。
仮に利回りが5%であれば、10年間にわたって保有することで出資金額の半分以上、50%の利回りを得られます。10年後に物件を売却する際、不動産の価値が半減していたとしても、劣後分の5%の利益は残るというリスク判断です。もちろん、これはあくまで「不動産の価値が半減した」場合の話ですが。
―― 地域創生によって町おこしに成功すれば、不動産の価値も上がりそうですね。
地域創生のためのプロジェクトであれば、十分その可能性はあるでしょう。これまでご相談をいただいているのは、地方のプロスポーツチームや地方行政からです。アイデアはあるのに、銀行が資金を融資してくれなかったり、PRする術が限られてしまっているというお悩みを多くいただいています。
「利回りくん」はそうした地方の悩みを解決する手段として、金融仲介機能としての役割も果たせると考えています。現に、10億円単位のプロジェクトのご相談がありましたが、これには大きな資金を投じてくれる投資家が必須です。そこで、当社に入社した元外資系投資銀行勤務のプロによる機関投資家訪問を始めたところ、反応は良好です。日本国債に1%前後での長期運用をしてきた投資家の方などは、4%なら「利回りくん」に長期資金を投じたいと仰っていただいています。
また、地域創生と社会貢献、挑戦による産業発展の意義もたいへん高く評価をいただいたのが印象的でした。コロナ禍で東京一極集中という社会課題が認識されたことも、利回りくんのコンセプトには追い風だったかも知れません。
―― 単なる利回り目的ではなく、事業や活動に共感を覚え、社会貢献と地域創生を応援していくスタンスで投資をすることで、SDGsにも繋がりそうですね。
そうですね。これからの社会ではSDGsを無視しての事業活動はほぼ不可能になるといっても大袈裟ではないと思います。「利回りくん」は“利回りによる収益”と“地域創生・社会貢献”を両立しているのが最大の特徴と言えます。
国の財政問題、お客様の老後の年金問題など、お客様と社会の課題にしっかりと向き合い、日本に貢献出来る事業を目指します。そして、今後は楽天グループとのサービス連携によって更なる知名度の拡大と共に、多くのお客様が利回りくんへご加入いただけると思います。
これからも皆様が共感、応援したいと思えるプロジェクトを続々とお届けできる予定ですので、楽しみに見守って頂けたら幸いです。(後編へ続く)
※編集部より:本記事タイトルに、一部事実と異なる表現があり、訂正をいたしました。また、楽天ポイントの付与について、投資利回りと混同させる表現があり、削除いたしました。お詫びして訂正させていただきます。12月2日