決算書の経常利益はどう読まれるか

一概に「当期純利益が黒字だから事業が順調」「経常利益が赤字だから事業の状態が悪い」とはかぎらない。重要なのは、それぞれの項目の中身を見て実態で判断することだ。

経常利益はどう読まれるか

経常利益は経常的に繰り返される企業活動で得た利益や損失が反映された数字であり、会社の収益力が最も把握しやすい。税引前当期純利益や当期純利益は例外的な普段発生しない利益や損失も加味して計算されるため、一過性の収益や損失で黒字もしくは赤字になり得る。そのため企業の正常な収益力を判断したい場合は、経常利益を見るのが最適だ。

例えば会社が不動産を所有していて賃貸収入がある場合、営業利益が赤字でも経常利益が黒字になることがある。この場合、本業以外の所有不動産によるインカムゲインにより資産運用が順調である可能性がある。また営業利益が黒字で経常利益が赤字の場合は、本業ではうまくいっているものの借金が多く有利子負債の利息負担が大きいことが考えられる。

この場合は、返済元金の負担も大きい可能性があり資金繰りにも問題があるかもしれない。当期純利益が赤字で経常利益が黒字の場合は、一時的な損失により利益が圧縮されたものの企業としては安定的な事業運営ができていると判断できる。また当期純利益が黒字で経常利益が赤字の場合は、一時的な収益のおかげで利益を得られたものの本業の事業自体はうまくいっていない可能性があるだろう。

企業としての体質を見直し業務内容の改善を図る必要がある。

企業の収益は実態で把握する必要がある

経常利益は、経常的な企業活動で得た成果とはいっても営業外収益や営業外費用は毎年必ず発生するとはかぎらないものもあるため、本業による営業利益とは考え方が若干異なる。例えば有価証券を売却して利益が得られたとしても毎年継続的に計上できるわけではなく、所有する有価証券がなくなれば売却により利益を得ることも不可能になってしまう。

補助金や助成金などを営業外収益に計上するケースが見られるが、こちらも毎年受け取る性質のものではないため、除外して考えることも必要だ。補助金や助成金が受給できたことは、結果としてよかったといえるが金融機関などの社外の者からすると「事業活動に伴う実力ではない」と判断することが多いだろう。

本来補助金や助成金は、毎年受給できるとはかぎらない臨時的な利益であり、特別利益に計上すべき性質のものといえる。企業の収益は、実態で把握する必要があり、営業外利益や営業外収入、特別利益や特別損失の各項目の中身をよく吟味して判断することが大切だ。