本記事は、青木龍氏の著書『2%の人しか知らない、3億円儲かるビル投資術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
テナントには個人よりも法人を入居させる
オフィスビルに入居させるテナントは基本的に法人(企業)になります。
ここは住居系とは大きく違うポイントで、法人を入れることにはさまざまなメリットがあります。
まず、事務所として貸し出す場合、保証金を賃料の6~12ヶ月をお預かりするのが一般的です。
オーナーによっては3~6ヶ月で設定することもありますが、その辺りはオーナーの考え方次第です。
住居系の場合は「敷金・礼金」の名目で1~2ヶ月分の家賃を預かりますが、賃料単価も踏まえてこの差は大きいです。住居系が10~20万円なのに対し、事務所の場合は数百万円の幅で保証金を預かることができるのです。
そういう意味では、個人事業者も「事業体」ではありますが、最初の保証金の部分で発生する数百万円の負担がなかなか出せなかったりするので、やはり入居させるのは法人のほうがいいことになります。社会的信用や事業としての安定性の側面からも、一般常識レベルで「個人事業主よりは法人」と言えるでしょう。
この保証金はあくまでも「預り金」ですが、不測の事態が起きた際にオーナーを守ってくれる“守護神”の役割を果たしてくれます。
例えば、あるテナントが業績不振に陥って3ヶ月の家賃滞納をしたと仮定します。保証金は6ヶ月分を入れてもらっておいたとしましょう。
最終的に立ち退いてもらう形で決着はついたとして、滞納分の家賃は保証金から受け取る形で相殺ができます。また、原状回復のための費用(基本的にはテナント側が負担するもの)も、保証金で相殺することができるのです。
つまり、オーナーの持ち出しは0円で済むということです。
テナントにするのは「カタい」法人がおすすめ
一般常識としての「法人の社会的信用」をより担保することを考えると、誘致する法人でも、より「カタい」法人を誘致することをおすすめします。
「カタい=事業が長く成り立っている優良企業」です。保証金をきちんと払ってもらえ、かつ毎月の賃料も確実に収めてもらえる“ある程度、事業が順調な企業”ということです。
そういう意味ではスタートアップの企業よりは、製造系や士業、行政機関の出先機関などのほうが資金力や事業としての安定性は上になります。
行政機関に関しては、民間企業に比べると数は圧倒的に少ないですが、私の経験でも過去に誘致したことがあるため、起こり得ないことではありません。
優良企業を誘致したいと思ったら、不動産管理会社を活用するべきです。
優良企業は優良な不動産管理会社とつながっています。要するに「お金持ち企業ネットワーク」を持っているのです。
優良な不動産管理会社とは、なるべく長く事業を続けていて、社会的信用を持っているところです。そういう不動産管理会社とつながっていることで、オーナーは自分のイメージするテナント(後述します)を誘致できる可能性が上がり、安定的な営業外収益を作りやすくなります。
テナントを募集する場合でも、ビルを売却する場合でも同じですが、「いい企業に入ってもらいたい」「できるだけ高く売却したい」と思うなら、基本的に情報は拡散せず、水面下で流したほうがいいです。
誰でも知っている物件に優良テナントは食いつきません。むしろ、自身の持っているネットワークを頼りに、できるだけ静かに行動します。
不動産管理会社側も、仲介ビジネスとして成約すれば手数料が入る前提がありますので、できるだけ双方の希望に合ったマッチングを行おうとします。オーナー、テナント、不動産管理会社と「3方よし」になるように動くのです。
入居させたいテナントをイメージしてみよう
優良なテナントを誘致するためにも、ここであなたがビルオーナーになったときに誘致したいテナント像をイメージしてみましょう。
本書でお伝えしている投資用のビルは、ここまでの流れで「Cグレード以下」としていますが、基準階面積200坪以下のさまざまなビルのうち、特におすすめなのが基準階面積100坪以下の中小オフィスビルです。
Cグレードは幅が広いです。5~10人程度の小規模な企業から始まり、基準階面積100坪になると数十人~50人程度、200坪になると100人規模の中小企業が利用することになります。
もちろん、業種・業態によって人の数は増減します。
ですから、オーナーは自分の所有するビルがどのような企業が利用することになるか(利用しやすいか、利用してもらいたいか)をイメージしておくことをおすすめします。
例えば、渋谷駅周辺だったらIT系が多い傾向があります。
千代田区だと駅にもよりますが、製造系のバックオフィスが多かったり、弁護士や行政書士や社会保険労務士などの「士業」が多かったりします。
これらのエリアに多い業種・業態を把握しておくことで、もしも解約や契約期間終了で空室が発生したときにどの業種にフォーカスして募集をかけると響きやすいかがわかります。
テナント側は自社の業種に合ったエリアを探していることがほとんどなので、マッチングはよりスムーズになるのです。
そして、できれば入居させたいターゲットをイメージしたら、その業種に強い不動産管理会社と組むことをおすすめします。不動産管理会社はテナントの誘致を代行してくれるので、オーナーの負担を減らすことができます。
不動産管理会社を選ぶときは、ぜひ「このエリアに多い業種のテナントを入れるネットワークをお持ちですか?」と質問してみましょう。さらに、直近で空室を埋めた実績があるかどうかも確認しましょう。
オーナーが想定するテナント誘致に強い不動産管理会社と組むことができれば、迅速に空室を埋めることができますし、オーナーが希望するテナントが入居して来る確率も上げることができます。
人づてにテナントを紹介してもらう方法もあり
本書の読者である経営者であれば、不動産管理会社と組む以外にも、人脈を使って優良テナントを誘致する方法もあります。
経営者仲間へストレートに「こういう物件があるのだけど、テナントとして入れそうな会社を知らない?」と聞いてしまうのです。もしかすると、経営者ネットワークの中で目的に沿ったテナントが見つかるかもしれません。
もしくは、開業支援をしているコンサルタントなどに話を持って行く方法もあります。開業支援をしているところは、単に事業計画の支援以外にも、開業場所のアテンドを兼務していることがあります。
そのようなコンサルタントに物件を提案することで、テナント誘致につながります(ただし、この場合はスタートアップ企業の可能性が高いので、精査が必要です)。
テナントを誘致する場合、やはり基本は不動産管理会社に頼るのがベストなのですが、それ以外の方法もありますので、ここで補足しておきます。