本記事は、青木龍氏の著書『2%の人しか知らない、3億円儲かるビル投資術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
「好立地」とは2つの需要を満たしているところ
第3章で軽く触れましたが、オフィスビルを取得するなら何よりも立地が重要です。
立地さえ良ければお客様が安定的に訪れるように、立地のいいオフィスビルはテナントとして入る企業の従業員たちにとって使い勝手がいいため、空室になりづらかったり、仮に空室になっても埋まりやすかったりします。
では、実際に物件を選ぶ際に「立地がいい」とは何を満たしていることなのか? それは「賃貸と売買の2つの側面で需要を満たしているか」です。
需要には「賃貸=テナント需要」と「売買=オーナー需要」があります。
テナント需要としては、最寄り駅からの距離が近く、家賃も比較的安く、中の占有スペースが自社にふさわしく……といった「借りたくなる物件」の条件にリノベーションなどの話も絡んできますので詳細は別章でお伝えするとして、ここではオーナー需要で考えてみましょう。
物件は利回りだけを見て選んではいけない
オーナー需要として売買を考える際、ポイントの1つになるのが利回りです。
利回りがいい物件=安定した営業外収益を得やすい物件なので、あなたはオーナーとして取得する際も、もしくは売却する際に新オーナーとなる人が選ぶ際にも需要の大きなポイントになることがわかると思います。
ただ、注意していただきたいのは「利回りだけでは考えない」ということです。
もちろん、利回りがいいほうが収益も増えるので、ついついパーセンテージだけで利回りを考えてしまいがちです。
ですが、私から言わせれば「利回りだけで不動産投資が成功するのであれば、小学生でも成功できる」ということになります。当然、かなり難しいでしょう。
物件を選ぶときに書かれている利回りは、あくまでも“瞬間最大風速”で考えるべきです。どんな物件であっても長期的には変動する可能性を秘めています。現状の利回りではなく「ポテンシャル」に注目すべきなのです。
現状の利回りが仮に3%であっても、物件精査の際に周辺の賃料に比べて割安な場合は保有してから賃料アップ交渉によって利回りが増えていく可能性は高くなります。
逆に、現状は8%の利回りを誇っていても、周辺相場よりも2倍近く高いとしたら半分の4%くらいにまで下がるリスクを抱えていることになります。
物件を見るときは単に利回りだけではなく、比較した上でお得な物件かどうかをスクリーニングする必要があります。それがあなた自身、そして売却するときの新オーナー需要としての好立地物件を獲得するコツになります。
空室があるからと言ってダメな物件とは限らない
利回りとともに、注意しておくべきなのは「空室率」です。
ビル1棟の購入を考えるとします。その際に選択肢として、10テナントが入れるフロアがあるとして、「現在、満室で利回りが6%」の物件Aと「現在、半分が空室で利回り3%」の物件Bがあるとしましょう。
空室率だけで考えると、間違いなく物件Aのほうが良さそうに見えます。
ですが、本書でお伝えしているように、「周辺の家賃相場と比較して割安な物件」を手に入れていく場合は、話は少し変わってきます。
物件Bの利回り3%が実は周辺よりも割安な場合、賃料を上げてテナント募集をかけたとしても集まってくる可能性はとても高いです。私の経験では、こういうビルが実は利回り8%ほどでも回る物件であることがよくあります。
逆に、何かの際に下げることを検討する場合でも、割安な物件Bは都合がいいです。
物件保有期間中に起きる可能性のあるリスク・イベント(例えば、リーマンショックや新型コロナウィルスのパンデミックなど)があってテナントが抜けそうになった場合、一時的な賃下げを行うことでテナント抜けを回避する余裕を持っている、と考えることもできるからです。
もちろん、安易に賃下げはすべきではないですが、抜けられるよりはずっとマシです。割安な物件Bであれば、そもそも購入時点では賃料が割安だったため、賃料を上げてからのコントロールもしやすいのです。
このように考えると、物件Aの満室で利回り6%というのは、そこから賃料を上げていく交渉ももちろんできますが、物件Bという割安なオフィスビルを手に入れて、オーナー自身で手を入れていくほうが将来性は高くなります。
オフィスビルは手に入れて終わりではありません。むしろそこがスタートで、オーナー自身の采配で賃料収入をコントロールしていけることが醍醐味の1つです。
ガチガチで動かせない物件より、割安で弾力的な運用をしていける物件のほうが、オーナー需要も高くなるのです。