世界の株式市場は、2020年、2021年と、新型コロナウイルスに振り回されてきました。ここにきてさらに、新型コロナウイルスの新しい変異株である「オミクロン株」が発見され、波乱の場面もありました。足元はやや落ち着きを取り戻しているようです。
12/2(木)時点で、主要株価指数の年初来上昇率は、米国(S&P500)が21.9%、ドイツ(DAX)が11.3%で、日本(TOPIX)は6.7%です。2020年に続き、主要国株価は上昇傾向です。世界は、新型コロナウイルスによる落ち込みは一時的であり、それを乗り越えて発展が続くとみているようです。2021年の日本株の出遅れ感は顕著で、このまま、新型コロナウイルスの感染拡大第6波を回避できれば、出遅れ挽回に向けた日本株の反発が期待できそうです。
もっとも、配当や株主優待などの株主還元を享受しながら、じっくりと株式投資を楽しみたいと考える投資家にとっては、そもそも日本株の出遅れ自体投資チャンスに映っているかもしれません。その意味で、株主権利確定銘柄の多い12月は重要な月であると考えられます。そこで今回の「日本株投資戦略」では、12月に株主の権利が確定する株主優待銘柄についてご紹介したいと思います。余っているNISA(少額投資非課税制度)枠を使い切り、税制上のメリットを活かした資産運用の一部としても検討したい所です。
当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。ぜひ、ご視聴ください。
日本株投資戦略(YouTubeに遷移します)
■執筆者のプロフィール
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
・好きな場所 秋葉原(末広町)
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30万円未満で買え、配当も期待できる「12月株主優待」16銘柄
配当や株主優待などの株主還元を享受しながら、じっくりと株式投資を楽しみたいと考える投資家にとっては、12月は重要な月であると考えられます。「3月本決算・9月中間決算」に次ぎ、「12月本決算・6月中間決算」の企業が多いため、12月に配当や株主優待の権利が確定する銘柄も多いためです。NISA(少額投資非課税制度)枠が余っている場合は、その使い切りも検討したい所です。そこで、今回の日本株投資戦略では、12月に株主の権利が確定する株主優待銘柄についてご紹介したいと思います。
近年、「株主優待」は投資家の高い関心を集めており、雑誌などメディアで幅広く紹介されるケースも増えています。値上がり益など売買益の獲得を狙うだけでなく、配当や株主優待などの獲得を取り入れることにより、投資家は株式投資の総合的なリターンをより高めることが可能になると考えられます。「つなぎ売り」など、信用取引の活用により、リスクを回避しながら配当や株主優待を享受できるテクニックも普及してきたと考えられ、「株主優待」のすそ野はかなり広がってきました。
「つなぎ売り」の手順はおおまかに以下の通りです。
- 購入したい株に対して権利付最終日の寄付前までに「現物買い」の注文と、一般信用取引短期(15営業日)売りで「信用新規売り」の注文を寄成で発注する
- 権利落ち日以降に、信用売りを「現渡」で返済する
「現渡」で返済することによって、現物取引の売却手数料と、信用取引の決済手数料をかけずに、少ないコストでリスクを低減することができます。なお、「つなぎ売り」で株主優待をお得に活用する方法については、SBI証券のWebページでご紹介しています。この方法を使うためには「信用取引口座」の開設が必要になりますので、ご注意ください。
今回の「日本株投資戦略」では、12月優待銘柄を抽出しました。足元の業績にも最低限の配慮をしているため、信用口座を持たない方でもご参考になると思いますが、「つなぎ売り」を活用すれば、「株主優待」のメリットを低リスクで享受できると思っています。図表1の銘柄は以下の(1)~(9)のすべてを満たしています。掲載の順番は、12月末予定1株配当を株価で割った割合が高い順としました。
(1)東証上場銘柄。証券・商品先物は除く。
(2)会社側が、12月に株主優待と配当の権利確定を予定していること。
(3)SBI証券の株主優待検索機能で「一般信用売り」対象銘柄であること。
(4)12/2(木)までの5営業日で、1営業日あたりの最低売買高が1万株以上あること。
(5)株主優待の権利確保に必要な最低保有株数が100株であること。
(6)株主優待の権利確保に必要な最低売買金額(株価×100)が30万円未満であること。
(7)株主優待の権利確保に必要な最短保有期間の条件がないこと。
(8)12月決算銘柄の場合は第3四半期累計純損益が黒字。6月決算は第1四半期純損益が黒字。
(9)株主優待がクオカードまたはお米券のみの場合は1,000円相当分以上の贈呈であること。
一般的に、株主優待の権利獲得にあたっては、必要な最低保有株数や最短保有期間など条件が付いている銘柄もありますので、注意が必要です。最新の情報は必ず当該企業のホームページ等をご確認ください。
図表1 30万円未満で買え、配当も期待できる「12月株主優待」16銘柄
コード / 銘柄 / 株価(A)(12/3) / 12月末予想1株配当(B) / (B)/(A) / 100株投資した時の株主優待内容の概要
<4221> / 大倉工業 / 2,070 / 70.0 / 3.4% / (1)クオカード1,000円相当、および(2)オークラホテル丸亀食事券2,000円相当。
<4404> / ミヨシ油脂 / 1,282 / 40.0 / 3.1% / クオカード1,000円相当。
<8029> / ルックホールディングス / 1,298 / 30.0 / 2.3% / 株主優待割引券(自社オンラインストアで利用可)2,000円相当。
<5184> / ニチリン / 1,744 / 40.0 / 2.3% / クオカード1,000円相当。
<3302> / 帝国繊維 / 2,061 / 45.0 / 2.2% / (1)クオカード1,000円相当、および(2)自社製品(リネン製品)3,000円相当。
<2501> / サッポロホールディングス / 2,233 / 42.0 / 1.9% / (1)ビール缶350ml4本、または(2)食品・飲料詰合せ1,000円相当。
<9768> / いであ / 1,854 / 30.0 / 1.6% / クオカード1,000円相当。
<4927> > / ポーラ・オルビスホールディングス / 2,048 / 31.0 / 1.5% / ポイント(株主優待カタログ掲載商品と交換可)15ポイント(1,500円相当)付与。
<6498> / キッツ / 722 / 9.0 / 1.2% / グループ会社優待券(北澤美術館招待券他)
<3964> / オークネット / 1,712 / 19.0 / 1.1% / クオカード1,000円相当。
<3028> / アルペン(6月) / 2,263 / 25.0 / 1.1% / 優待券2,000円相当(国内自社店舗、フィットネスクラブ他で使用可能)。
<7613> / シークス / 1,369 / 15.0 / 1.1% / ギフトカード1,000円相当。
<3950> / ザ・パック / 2,823 / 25.0 / 0.9% / クオカード1,000円相当。
<9612> / ラックランド / 2,962 / 15.0 / 0.5% / 東北地方名産品詰合せ4,400円相当(送料約1,400円含む)。
<3091> / ブロンコビリー / 2,318 / 10.0 / 0.4% / 食事優待券2,000円相当。
<3196> / ホットランド / 1,325 / 5.0 / 0.4% / 株主優待券1,500円相当。
*当社Webサイト株主優待検索ページを参考にSBI証券が作成。株主優待の内容は、最低投資単位(100株)で当該銘柄に投資したときの株主優待内容の概要を示すもので、必ずしもそのすべてを示すものではありません。また、保有株式数や保有期間により、株主優待の内容が異なる場合もあります。また、上表の株主優待の内容は当レポート作成時のもので、今後変更される可能性もあります。なお、権利付最終日はすべての銘柄において12/28(火)になっています。株主優待の制度や内容については、各社Webサイトにてご確認をお願い申し上げます。
*決算期はアルペンのみが6月であるため、銘柄名右にカッコ書きしています。同社の12月末予想1株配当は中間配当となります。他の銘柄は12月決算銘柄であり、12月末予想1株配当は期末配当になります。なお、12月決算銘柄の場合、中間配当がない銘柄の(B)/(A)は予想配当利回りの数字と一致しますが、中間配当があった会社の場合は一致しないので、ご注意ください。
抽出銘柄の投資ポイント
この項では、図表1で抽出した銘柄について、投資ポイントなどをご紹介します。
サッポロビール(2501)~利益面では不動産が中心。予想配当利回り1.9%(12/3)に加え株主優待
期間:2021/6/10~2021/12/3(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■大手ビールメーカーとして知られるも稼ぎ頭は不動産
「黒ラベル」等で知られる大手ビールメーカーの一角です。売上構成比(2021/12期・第3四半期累計)は、ビール等の「酒類事業」が65.4%、「食品飲料事業」が29.2%、「不動産事業」が5.3%となっています。
2021/12期・第3四半期累計の売上高は3,090億円(前年同期比2.0%減)、営業利益は239億円(前年同期は20億円の赤字)でした。
新型コロナウイルスの感染拡大は、業務用ビールの市場に打撃を与えており、売上面では主力の「酒類事業」は減収。営業損益は赤字(ただし前年同期比では赤字縮小)が残りました。 しかし、当社の利益面での主力事業である不動産では、物件ポートフォリオの戦略的組み換え等もあり、営業増益を確保。全社的にも黒字転換となりました。
■予想配当利回り1.9%(12/3)に加えて株主優待
足元で株価は急落。新型コロナウイルスの新しい変異株である「オミクロン株」の発見で不透明感が高まったことが一因であると考えられます。ただ、PBRは1.04倍まで低下しており、値頃感も強まりつつあります。
中間配当はなく、12月期末に予定の42円が年間配当予定額でもあります。予想配当利回り(12/3)は1.9%の計算です。さらに、12/28(火)時点で100株保有の株主には、(1)ビール詰合せ(350ml缶4本)、または(2)食品・飲料詰合せ1,000円相当の贈呈が予定されています。200株以上保有では(1)が8本または(2)2,000円相当、1,000株以上保有では、(1)が12本または(2)3,000円相当の予定になっています。
200株以上保有の株主には「サッポロライオンチェーン」等の自社子会社レストランで利用可能な割引券(20%割引)5枚が贈呈されます。また、3年以上継続保有の株主には、(1)または(2)の贈呈額が5割増しになる予定です。
ポーラ・オルビスホールディングス(4927)~複数ブランドを展開する化粧品大手。
期間:2021/6/10~2021/12/3(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
■大手化粧品。複数ブランドを展開。
化粧品大手の一角。高級スキンケアを中心とする「ポーラ」、低中価格帯の「オルビス」を含め複数ブランドを展開しています。海外市場や、ECを使った販売を強化。海外売上高比率(2021/12期第3四半期累計)は17.8%、国内EC化比率は27.7%となっています。
2021/12期第3四半期(累計)は売上高1,311億円(前年同期比4.3%増)、営業利益122億円(同32.7%増)と一見回復傾向。ただ、7~9月期に限れば、売上高は前年同期比0.2%増、営業利益は同5.8%減と減速感が顕著。株価の反応も厳しくなっています。
一方で、市場コンセンサスでは来年以降も増収増益が続く見通しであり、当面は、新型コロナウイルスの感染拡大や中国経済への不透明感が後退することが、株価反転の契機になりそうです。
■株主優待はカタログ掲載商品に交換できるポイント
中間期末に1株20円の配当を実施。12月の期末には同31円の配当を予定しており、年間予定配当は1株51円。図表1の期末予想配当の利回り(12/3)は1.5%ですが、年間予想配当利回りは2.6%に達します。
12/28(火)に100株以上保有する株主に15ポイント(1,500円相当)のポイントが付与される予定です。ポイントは株主優待カタログ掲載商品に交換可能です。400株以上で60ポイント、1,200株以上保有では80ポイント、2,000株以上保有では100ポイント贈呈される予定です。3年以上継続保有の株主に対しては20ポイント追加される予定です。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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