国際会計基準の特徴

さまざまな基準のなかでも、国際会計基準の特徴としてよく挙げられるのが、公正価値である。公正価値とは時価の一種であり、IFRS第13号によると、「測定日時点で、市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取るであろう価格又は負債を移転するために支払うであろう価格」である。

引用:審議事項5-2(企業会計基準委員会)

ここで問題となるのは、「市場参加者間の秩序のある取引」が示す意味だ。「市場参加者間の秩序のある取引」からは、公正価値が市場に立脚していることが分かる。企業の意図や能力といった固有の視点は関係なく、当該測定対象となっている資産や負債について、市場が存在すればその価格が公正価値となる。

「秩序のある取引」とあるように、異常な品不足や投げ売り状態など、通常ではない状態の市場において形成された価格は、秩序のある取引により形成されたことにはならない。ただ、個別性の高い資産や負債においては、必ずしも市場が存在するとは限らない。市場が存在しない、もしくは複数の市場が存在する場合、資産の特性を企業が考慮しつつ合理的な方法で公正価値を算定する。

国際会計基準のメリット・デメリット

ほとんどの企業は日本の会計基準を適用しているが、一部の企業はそのほかの会計基準を適用しており、そのなかでも国際会計基準を採用しているケースが多い。国際会計基準を導入するメリット・デメリットを確認してみよう。

国際会計基準のメリット

国際会計基準を導入するメリットは、海外の投資家や子会社、M&Aなどに関連する。いずれも、国家間における会計基準の差異がなくなることによる効果だ。まず、国際会計基準による決算書は、海外の投資家が読み慣れた書類である。日本の会計基準で作成された書類よりも、海外投資家からの投資が期待できる

連結財務諸表を作成する過程や管理会計において、会計基準の差異による事務コストの低減、経営指標に関するコミュニケーションの円滑化が見込まれる。M&A時には、のれんに関する会計処理の違いにより、利益が大きく計上できる利点がある。日本の会計基準では償却が必要であるが、国際会計基準では償却が不要である。

国際会計基準のデメリット

まずは、会計制度が難解である。そのため、会計の専門家を雇用する必要があり、追加でコストがかかる場合が多い。さらに、会計基準に英語で触れる必要性が生じ、規定自体も頻繁に改訂されるので、事務処理コストが大きく増大する。また、原則主義である国際会計基準への移行は、説明責任を果たすために大量の注記が要求される。

これまで日本基準を利用していたときにはなかった作業も行わなければならない。日本の市場に上場している場合、日本基準にて会計処理を行っている会社との比較が困難になる。また、中小企業の会計に適用するときも調整が必要になるだろう。現状、中小企業は日本の会計基準を一部簡便化した基準を採用している。中小企業の事務負担に考慮しながら、国際会計基準の適用可能性を検討していく必要がある。

以上、国際会計基準の概要に始まり、日本における会計基準との違いなどを解説した。国際会計基準の適用を検討している企業は、メリットやデメリットを把握しておくとよいだろう。