国際会計基準の歴史
国際会計基準は、1970年代にその歴史が始まった。各国が独自に異なる会計基準を整備していたこともあり、資本取引をはじめとする投資がグローバル化するなかで、国際間の企業比較が難しいとされていた。そこで1973年に国際会計基準委員会が設立され、国際会計基準の策定に着手。その後、国際会計基準委員会は国際会計基準審議会に改組され、IFRSの開発と改定が進んでいった。
2005年12月期以降、EU域内の上場企業には、IFRSにもとづく連結財務諸表の作成が義務づけられた。その後、米国会計基準を所掌する米国財務会計基準審議会(FASB)や、日本の会計基準を所掌する企業会計基準委員会(ASBJ)における会計基準の差異は収斂していった。2010年6月にはわが国で初めて、IFRSにもとづく連結財務諸表を含んだ有価証券報告書が提出された。
国際会計基準と日本における会計基準の違い3つ
国際会計基準と日本における会計基準の違いを3つ解説していく。
違い1.原則主義と細則主義について
国際会計基準は原則主義、日本の会計基準は細則主義といわれている。
【原則主義】
原則主義とは、基本的な枠組みだけを規定し、細かい部分は各々の会社にて基準の趣旨を勘案して処理する考え方だ。原則主義の長所は、本質を理解できれば各企業に応じた会計処理を採用できる点だ。短所は、同じ取引でも企業によって処理が異なる可能性があり、比較の点で問題が生じること。また会計処理の担当者が会計基準を理解し、その処理を採用した理由を説明できなければならない。
【細則主義】
細則主義とは、できるだけ細かいケースまで処理の方法を決め、会計処理における恣意性を可能な限り排除する考え方だ。細則主義の長所は、細部まで定めていることからブレが生じず、企業間での比較可能性が担保されることだ。短所は、あまりにも細かいところまで決められているので、形式的に要件を満たすよう思い通りに処理してしまうことである。
粉飾決算の温床となり、監査人の立場からも形式的には要件を満たしているため、指摘を行いにくい。
違い2.貸借対照表と損益計算書について
国際会計基準は貸借対象表、日本の会計基準は損益計算書を重視しているといえる。貸借対照表重視の会計的思考を資産負債アプローチといい、損益計算書重視の会計的思考を収益費用アプローチという。資産負債アプローチでは、会社の財政状態や企業価値についての情報価値が高いと考え、損益計算書は貸借対照表の変動にともなって作成される。
収益費用アプローチでは、毎年の損益計算書による経営成績の評価が重要であり、貸借対照表には過去や将来の収益費用となるべき収入支出が計上されているとも考えられていた。
違い3.計上する金額とタイミングについて
国際会計基準は貸借対照表を重視するため、資産や負債をどの金額で計上するかが問題となる。逆に日本の会計基準では、収益や費用をどの金額でいつ計上するかが問題となる。わが国では伝統的に発生主義と実現主義という基準で会計処理を行ってきた。発生主義とは、現金の収入や支出とは無関係に、経済的事象の発生あるいは変動にもとづきその時点で収益または費用を計上する考え方だ。
実現主義とは、収益の獲得が確実となった時点で収益について計上する考え方である。