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仕事柄、筆者(玉川陽介)は多くの成功した個人投資家に会う。なかには天才投資家と呼ぶべき、尋常ではない投資手法で成功している者もいる。彼らの投資手法、投資金額は驚きとともに迎えられてメディアの見出しを飾るが、それを成し遂げた天才たちの「人柄」が語られることは多くない。
本稿では、類い希なる天才個人投資家たちの性格、私生活に焦点をあてて紹介していきたい。成功者の感性を理解することで、読者の資産運用のヒントとなれば幸いだ。
本稿の結論は、「尋常ではない投資成果を上げる敏腕投資家は、考え方や私生活も尋常ではない」という一行にまとめられる。むしろ、尋常ではない私生活だからこそ、投資でも普通の人とは異なる選択肢を取り続け、大きく資産を増やすことができたのかもしれない。
天才投資家たちは、普通の人たちとどこが違うのか。いくつかの角度から、彼らの内面に迫りたい。
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天才投資家はアスリートのようである
「短期間で数億円の資産を築いた天才投資家」に共通している点を1つだけ挙げるならば、「何事も取り組み始めたらとことんやる。時に食べることも忘れ、昼夜の区別もなく、はまり続ける」。これに尽きるだろう。ストイックに物事を探求し、成績を上げていくその姿は、さながらアスリートのようである。
実は、その探究心の矛先は投資だけではない。フライトマイルやクレジットカードのポイントなども興味の対象となることがある。しかし、彼らは億単位の資産を持つ投資家だ。一般個人向けのポイント制度を研究しても、彼らの時給には見合わず、経済合理性がないように思える。そもそも、彼らはマイルを貯めても海外に行くわけではない。
では、なぜ彼らはポイントシステムを研究するのか。筆者には、利益の探求よりも「複雑な仕組みを理解して有利なものを選定するプロセス」を楽しんでいるようにも見える。ポイントの仕組み自体が大好きなのだろう。これらは銘柄のリサーチと共通する点もあるのか、ポイントシステムについて高度な分析を提供する投資家もいる。
このような研究の中での喜びは、システムの法則や仕組みを逆手にとって、ポイントを大きく増やせる裏技(のようなシステムハック)を見つけた時だろう。研究者が設計者に勝った瞬間ともいえる。このようなシステムの「スキ」を探求すること自体を楽しんでいるように思える。
体を壊すほどの探究心
時に、天才投資家の探究心は体を悪くするほどの深みに達することもある。筆者の知人である天才投資家2名のエピソードを紹介しよう。どちらも、どこまで入れ込んだらそうなるのか、常人には理解できない話だ。
ある日本株投資家は、めずらしい魚に興味を持ち、それを研究しつつ、食用魚としても楽しんでいた。しかし、ある日、彼は突然、体調を崩した。たくさんの病院に行っても原因が分からなかったが、ある病院で、魚の食べ過ぎによる水銀中毒と診断された。水銀中毒になるまで、魚を食すことに没頭したわけだ。
別のFX投資家は、体調不良で何度も病院に運ばれた。その理由は、白血球の過剰生成だという。このFX投資家は、昼夜とも緊張状態でポジションをとっているので、常に敵と戦っている精神状態が続いていたのだろう。体がそれに順応して、白血球を過剰に生成してしまったということだ。
プロを凌駕するセミプロ個人
このように、天才投資家たちは一点に集中できる能力を持っている。もちろん本業である投資では、そのすべての情熱を傾けて向き合っている。会社四季報を読み込みすぎたことによって、ページは擦り切れて表紙の印刷が白くはげ落ちている人もいる。
個人投資家と証券会社との情報格差が少なくなった今日、よほどのアナリストでなければ、彼らの情熱に勝る分析レポートを提供することは不可能だろう。「セミプロ」と呼ばれる個人投資家だが、その実力は確実にプロを凌駕する。
天才投資家の心の中
極端ともいえる探究心を持ち、それを武器にして高いリターンを得る天才個人投資家。彼らはどのように育ってきたのか。
とあるFX投資家は、3歳の時から大人とオセロで遊び、勝つまでやめなかったという。なお、その人はFX投資家になるまで、パチスロで生計を立てていた。実は、パチスロの期待値の考え方は投資と通ずる点が多く、実際、天才FXトレーダーにはパチスロ出身者が多い。投資家たる筆者も、幼い頃からゲームや賭け事には慣れ親しんでいた記憶があり、そこで投資の感性が磨かれたのかもしれない。
天才投資家の人柄として多いのは、「他人に興味がない」ことだろう。投資の話しかしないため、仲が良いように見えるが、年齢、経歴など何も知らないし興味もない。それどころか名前すら知らない。そのような投資家の会合はよくある。それにもかかわらず、「どの銘柄に投資しているか」「どんな投資手法か」など興味の対象については熟知しており、白熱した議論を展開する。
服装にも興味がないため、「いつも同じチェック柄のセーターを着ている」などは投資家「あるある」だ。日本株で「億り人」になった投資家の会合と、秋葉原のパソコンサークルの会合は雰囲気が似ている。
そんな彼らは、大人になっても、他人と円滑なコミュニケーションを取ることは得意ではないようだ。本来は婚活市場で人気銘柄であるはずの「若くて裕福な個人投資家」。しかし、そのような男性とお見合いをした女性が言うには「『僕と結婚すれば、この残高の半分はきみにあげるよ』とFX口座の残高を見せられた」「初対面のデートで先物の話を延々とされた」など苦情が尽きなかった。
筆者は、天才投資家たちの興味への探求と対人関係を見て、「四角い穴に 丸い杭を打ちこむように 物事をまるで違う目で見る人たち」というアップル社の広告コピーを思い出す。彼らの目に映る世界や人々は、おそらく、多くの人が見ているものとはまったく違うものなのだろう。
障害と天才の二面性
相手の感情を無視して機械のようにしゃべり続けてしまうコミュニケーション、虚言癖、何度会っても人の名前を覚えないなど、天才投資家のユニークなパーソナリティは枚挙にいとまがない。
哲学の巨人・フリードリヒ・ニーチェが不安定な精神を持ち、日本画の天才・伊藤若冲の絵が発達障害などと関連付けられることと似ているのかもしれない。天才投資家たちの「人とは違う感性」こそが、人とは違う銘柄、人とは違う賭け方を自然と選ばせているのではないか。また、お金に執着せず、躊躇なく全額勝負ができる強靱な精神の根拠となっているのではないか。
おそらく、天才投資家たちは、努力と忍耐の積み重ねでもなく、前例のない大勝負をしようとしているのでもなく、自分の探究心、信じる道を進んだ結果として、自然に資産を築いたはずだ。そして、その後も探求の延長として、資産拡大を続けているのではないだろうか。彼らは、「世間に流されず」成功したのではなく、単に世間に興味がなかっただけかもしれない。
本稿では、筆者が思う「天才投資家たちの特徴」を紹介してきた。読者の中にも、彼らと近い属性の人が埋もれていないだろうか。もし読者の中にアイドル、ゲーム、コンピューターなどの分野で「熱狂的なオタク」と呼ばれる人がいたら、ぜひ投資にも挑戦してほしい。少しだけ人と違った感性は、尋常ではないリターンを生むポテンシャルを秘めている。
もし、小さなお子さんを持つ読者がいれば、博打や勝負事は悪だと決めつけずに、勝率を上げる方法を親子で話し合うのも良いだろう。
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